• ホーム
  • 病院のご案内
  • 診療時間・アクセス
  • 臨時休診日・診察時間変更などのお知らせ
  • 病院だより
  • コラム診察室
  • 病院の症例
  • 看護師通信
  • スタッフ紹介
  • リンク

前十時靭帯断裂

遊んでいる最中に、突然キャンと鳴き片足を痛がり、時間が経っても足をあげたままの状態が持続する場合には前十時靭帯の断裂を疑う必要があります。前十時靭帯の役割は、膝関節の安定性を作ることで、この靭帯によって膝関節は正常に動かすことができます。この靭帯を断裂させてしまうと、膝関節が不安定となり二次的な関節炎や、膝の軟骨の損傷を招いてしまいます。

前十時靭帯断裂の原因
①肥満による靭帯への過負荷
急激に走ったり、滑ったり、走っている最中の方向転換などで断裂してしまいます。
②老齢化、ホルモン疾患による靭帯の脆弱化
特別な原因がなくても日常的な動きの中で靭帯の断裂が生じてしまいます。また、避妊去勢による変化の一つとして、靭帯の脆弱化も指摘されています。
③骨格の奇形
骨の形状異常によって靭帯に無理な力が慢性的にかかる結果、わずかなきっかけで靭帯が断裂してしまうことがあります。

前十時靭帯断裂の症状
急性期
患肢を負重させることができず、足先を地面にちょっとだけ触れさせているか、まったく挙上したままでいます。2~3日すると痛みが取れてくることが多く、触っても痛がらないけど、足は地面につかないという状態がおおく観察されます。
慢性期
患肢の負重はやや可能となるが、持続的な歩様障害が観察されます。特に運動後に悪化する傾向があります。また、二次的な関節炎や、関節軟骨損傷の併発も時間が経つほどに多くなるといわれています。

前十時靭帯断裂の診断
臨床症状、触診、レントゲン検査を組み合わせて行います。靭帯損傷直後で関節の腫張が強い場合には、腫脹を抑える治療をした後に、再評価が必要となります。

前十時靭帯断裂の治療
内科療法
体重の軽い小型犬の場合では、内科療法によって歩様障害が消失することが多いです。しかしながら、歩様が正常に見える場合であっても、しばしば2次的な関節炎の発生が指摘されています。それぞれの状況に応じた選択が必要となります。
外科療法
動物の年齢や犬種、体格、手術にかかる費用などを加味し、いくつかの選択枝があります。当院では、生体内で繊維化による靭帯様構造物を形成することで膝関節を安定化させる、関節外整復術を行っています。また、若く活動的な大型犬の場合は、特殊なインプラントを骨に移植するTTAやTPLOが推奨されることから、大学病院での手術をご紹介させていただいてます。手術方法の決定には、それぞれの手術方式のメリットとデメリットを考慮する必要があることから、事前に綿密なご相談が必要となります。

関節外整復術の原理
断裂してしまった前十字靭帯と同じ角度の力が支えられるように、特殊なバンドを骨にかけます。特殊なバンドの周囲には繊維化という現象はおこり、やがて靭帯のような組織になります。これによって膝関節の安定性が得られます。
       無題
       青線:前十時靭帯の位置(点線部分は骨の裏側)
       赤線:靭帯様構造物を形成する特殊なバンド
       黒丸:バンドを通すために形成した穴
       緑丸:種子骨という丸い骨にバンドをかけます
          
         
手術の実際(写真は白黒に処理してあります)
膝関節内にアプローチし、断裂した靭帯や痛んだ軟骨などを取り除きます。
DSCF97086
筋肉の下にある種子骨にバンドをかけます。
DSCF97102
形成した穴を通して、バンドをとめます。
DSCF97132
術後は圧迫包帯を巻いて動きを制限します。
DSCF97221

術後のケア
術後はレーザー治療やマッサージを行いながら、下記の目標で経過観察をしていきます。
術後3週間
圧迫包帯を巻いたまま、軽い短時間の散歩のみとします。
術後3週間~3ヶ月
リードをつけた歩行のみの運動とし、歩様の正常化を目指します。
術後3ヶ月~5ヶ月
通常の生活を送り、左右の体重負荷が同等となることを目指します。

術後の注意点
片足の前十時靭帯を切ってしまった場合、約40%の症例で、平均17ヶ月以内に対側の前十時靭帯も切ってしまうという統計が報告されています。術後は、体重の管理、滑る床の是正、運動の仕方、基礎疾患お治療などに注意をしてあげる必要があります。