看護師通信

看護師セミナー18 泌尿器

こんにちは。看護師の坂本です。
今回は泌尿器疾患についてまとめております。
泌尿器疾患は、膀胱、尿を想像される方も多いと思いますが、腎臓や尿管なども泌尿器疾患に含まれます。
高齢になってくると、膀胱炎や腎臓の疾患も増えてきます。
まだ疾患のないうちに初期症状を見逃さないためにも皆さんの役に立てればと思います。

以下内容
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泌尿器は腎臓で血液をろ過し、身体に必要なものを再吸収し、残った老廃物や不要物を尿として排泄したり、体内水分量や電解質、造血量などの調節機能、Ca,Pの代謝調節、ビタミンⅮの活性化機能など多くの機能がある。
泌尿器系疾患においてはいずれも進行すれば最終的に尿毒症となり、いろいろな臓器の機能が障害され様々な全員症状が発現する。
このため多くの場合は、一刻も早く全身的な治療を開始する必要がある場合がほとんど。
泌尿器疾患が疑われる場合には、排尿回数や量、尿の性状異常を確認するとともに、食欲や体重、貧血、チアノーゼなどにも注意し問診や看護を行う。
また循環器疾患などを併発している場合があるのでよく観察し注意する。
必要に応じて輸液を行うが、輸液中は常に動物を観察し厳重な管理を行う。輸液速度、排尿量、呼吸状態、浮腫などには特に注意が必要。
食事管理も必要な治療で、適切な処方食を与え、疾患にもよるが嗜好性の高いものを選ぶなどの工夫を行う。自由に新鮮な水が飲めるような配慮も必要。
原因によっては、完全な回復が期待できない場合や治療が長期間に及ぶ事があるので、疾患や治療に対する認識、理解力に合わせ、現在の状態や今後の見通しを説明し、治療継続や再発防止に協力してもらえるように支援する。しっかりと理解してもらってから治療できるように説明を怠らない。
泌尿器の構造

腎臓
腎臓は血液をろ過し老廃物を生体外へ排泄するとともに、pH、浸透圧などの調節を行う。
脊柱を挟んで左右一対あり、腹腔腰部に位置している。腎臓の位置や形は動物種によって多少異なるが、犬猫の腎臓は、右腎が左腎よりもやや頭側に位置し、そら豆型をしている。
腎臓には著しく大きな予備能力があるため、臨床症状が現れ血液の変化がみられるころにはすでに80%近くが障害を受けていると考えられる。
腎門から、尿管と尿管動脈、腎動脈と腎静脈、リンパ管、神経が通っていて、膀胱や血管など様々な臓器につながっている。
腎動脈は、腎臓の大きさに比較して非常に太く、体内で最も太い血管の一つである腹大動脈から分岐している。
腎臓の血管の流れは
腹大動脈→腎動脈→葉間動脈→弓状動脈→小葉間動脈→輸入細動脈→糸球体形成→輸出細動脈→毛細血管→小葉間静脈→弓状静脈→葉間静脈→腎静脈→後大静脈
となっている。血管では血液を送るのはもちろん、ここの毛細血管の内皮細胞ではエリスロポエチンという造血ホルモンが産生されている。
腎臓の内側は、腎門に続く空洞の腎洞と、尿の生成を行う腎実質の2つに分かれる。
腎洞 :尿管がロート状に広がる腎盤(腎盂)という嚢状の構造物がある。腎盤は、腎実質で生成された尿を受け取り尿管へと導く。
腎実質:内層の髄質と、外層の皮質から形成される。両層にまたがってネフロンと血管およびネフロンが生成した尿を腎稜まで導く導管がある。基本的にはネフロンの集合体。
髄質の腎盤側を腎稜といい、腎盤に合わせて凸状をしている。腎実質で生成された尿の出口が開口している。

ネフロン
腎実質の中にある腎臓の構造的機能単位で、1個の腎小体と、1本の尿細管で形成されている。ネフロンの1個1個がそれぞれ尿生成を行っている。
1つの腎臓内に犬で40万個、猫で20~30万個あるといわれている。
腎小体は糸球体とそれを包むボーマン嚢からなる。血管が出入りしており、糸球体で尿を生成ろ過し尿細管へ送る。
尿細管では尿の濃縮具合の情報が感知できるようになっており、その情報から血流量を変化させ糸球体ろ過量を調整する。(糸球体傍細胞)

尿管
腎盤から始まり、腎門から腎臓の外側へ出て膀胱へと入る管状の器官。腎実質の生成した尿を腎盤で受け取り膀胱へと導く。

膀胱
腎臓で生成した尿を一時的に貯留しておくための伸縮性に富んだ袋状の器官。
尿の貯留がない時には収縮し膀胱の壁は厚く、骨盤腔内にある。尿が貯留し膀胱が拡張するにしたがい、壁も薄くなり腹腔内に突出するようになる。
尿は血液がろ過されたものなので、通常は膀胱内は無菌状態となる。

尿道
膀胱に貯留した尿を体外へ導く。

尿生成の仕組み

ろ過
糸球体の血管壁には孔や隙間があり、また輸入細動脈が輸出細動脈よりも太いため、糸球体内の血管の中の圧力が高くなっている。これにより血管の壁を通り物質が外にろ過されるようになっている。血球細胞などは隙間より大きいため血管の外に出ることはできないが、水やグルコース、アミノ酸、電解質などは隙間より小さい分子のため糸球体からボーマン嚢へろ過される。この液体を原尿という。

再吸収
原尿はそのまま尿として排泄されず、身体に必要な物質を再度血管内に取り込む再吸収という過程を経て尿となる。腎臓でつくられる原尿の99%が再吸収される。
1日の尿量は犬で20~45ml/㎏、猫で20~40ml/㎏
① アミノ酸、グルコース
近位尿細管でほぼ100%再吸収される。取り込みにはナトリウムイオンが必須。共輸送されるため、ナトリウムがないと再吸収されず尿として排泄されてしまう。
② 電解質
近位尿細管で70%ほど再吸収されるがそれに続く部位でも吸収が進み、最終的には99%が再吸収される。
③ 水
近位尿細管で70%ほどが再吸収され、その後集合管に至るまでに99%が再吸収される。集合管では脳から分泌されるバソプレシンというホルモンの働きで、再吸収する水の量を調節している。

細胞外液量の調節
細胞外液が減少すると、糸球体傍細胞からレニンが分泌され、アンギオテンシンを作る。その結果、レニン‐アンギオテンシン系が副腎皮質に働き、アルドステロンの分泌を促進させる。アルドステロンは尿細管、集合体でナトリウムと水の再吸収を促進して細胞外液量を増やし、低下した血圧を戻す。

尿の排泄
ネフロンで生成された尿は、尿管に集められてから膀胱に運ばれ、排尿されるのを待つ。排尿される時は膀胱から出て尿道を通り外に出ていくが、尿道は尿道括約筋の働きで管が閉じた状態になっている。膀胱に尿が溜まり、脳の排尿中枢が尿意を感じ排泄する時になると弛緩する。それに続き、膀胱排尿筋が膀胱を収縮させることで尿が外へ押し出される。
排尿を始める最初の指令は脳の橋から出されるが、その後の筋肉の動きは反射により腰髄や仙髄で行われる。
尿量の正常値は1~2ml/kg/hr。

代表的な疾患

急性腎不全
病因には3つある。
腎前性
腎臓の血流量が減少することにより、腎臓が正常に機能しなくなる。
ショックや心不全、DIC、異形輸血、過度の血管収縮、長時間麻酔などが原因になる。
腎性
腎臓原発性疾患により、糸球体ろ過率が急激に減少または腎臓そのものの病気。
抗菌薬、NSAIDs、造影剤、重金属、昆虫類などの毒素や糸球体腎炎、腎盂腎炎、水腎症などが原因になる。
腎後性
尿の排泄が尿管、膀胱、尿道のいずれかの異常で障害される。結石や腫瘍による尿路閉塞、膀胱破裂などが原因になる。
急性腎不全は直ちに治療を開始しないと、生命の危険を伴うため、早期診断、早期治療が重要になる。
症状は尿量が0.25ml/kg/hr以下の乏尿または無尿で、元気食欲消失、嘔吐下痢など。
回復するまでに数週間から数カ月かかるが症例によっては完全に回復せずに慢性腎不全に移行する場合もある。
治療は、輸液、利尿剤の投与、嘔吐下痢に対する対症療法。
脱水の補正や腎血流量の増加による利尿の促進として輸液を行うが、乏尿あるいは無尿の動物では輸液過剰による過水和が生じる危険性があるため、動物の状態、尿量を注意深くモニターする必要がある。輸液により十分な尿産生が認められない場合は利尿剤を投与するが、その後きちんと尿量が増えるか確認する。
治療目標は、致死的な電解質などの異常を改善し、尿産生を回復させ、高窒素血症を改善すること。このため治療に反応せずに乏尿や無尿が継続する場合、血液透析等の実施も検討される。

慢性腎不全
数カ月から数年にわたって腎実質障害が進行し、最終的に末期腎不全、尿毒症へと進行していく不可逆的な疾患。両腎の総ネフロン数の約75%以上が機能しなくなった状態で、初期には臨床症状を示さず、進行にしたがって様々な症状が顕在化する。大きく4つのステージに分類される。
通常は老齢の猫で多く見られるが、犬またはどの年齢でも発症する事がある。
症状はステージの進行に伴い、多飲多尿、体重減少、脱水、エリスロポエチンの産生低下による腎性貧血での可視粘膜蒼白などがみられる。ステージ4末期に尿毒症に陥ると口内炎、消化管潰瘍、意識障害、けいれん、悪液質、異常呼吸などが認められる。
ステージ進行に伴い全身状態が悪化し、腎性続発性上皮小体機能亢進症などの疾患が併発することがある。この疾患により、非常に骨折しやすくなったり跛行や疼痛の症状が見られる。特に上顎骨、下顎骨は影響を受けやすく、咀嚼異常や開口困難になることもある。
治療は、完治しない疾患であることから進行を遅らせ、適切な対症療法を実施することで尿毒症の症状を軽減させる。潰瘍治療薬、制吐薬、炭素吸着薬、血管拡張薬、利尿薬、経口リン結合剤、ビタミンD製剤、エリスロポエチン、輸液など症状に合わせ選択する。
食事療法も重要な治療。多飲多尿があることから、つねに新鮮な水が飲めるようにし、水を摂らない動物にはウエットフードやふやかしたり、水に何か足すなど工夫をする。
飲水量と尿量は必ず確認する。
腎臓に負担がかかる時間を少なくするために、自由採食を止めて時間を決めた定期的な採食にする方が良い。
療法食が利用できるなら食事はそれに切り替えるのが最も良い。
適切な治療をすることで、動物のQOLを改善し生存期間を延長させる事が可能となる。
しかし、治療は一生続ける必要があるうえに徐々に進行していく疾患であるため、様々な負担が生じる事を説明し方針を相談する必要がある。

細菌性膀胱炎
細菌感染を起因した膀胱の炎症で、多くは上行性感染。
原因菌の80%が消化管内の常在菌であるグラム陰性菌(大腸菌)で雄より雌で多くみられる傾向にある。
膀胱には細菌感染に対する自然防御機構があるが、これが破壊されることにより感染が成立する。尿道結石や腫瘍などによる物理的な障害、脊椎疾患、ヘルニアなどによる神経の損傷による障害、尿道カテーテルの挿入、留置、膀胱結石、薬物の膀胱排尿、尿量の減少、糖尿の排泄、尿毒症、免疫抑制剤の使用、副腎皮質機能亢進症など様々な要因で起こす。
症状は頻尿、有痛性排尿困難、血尿、トイレ以外での排尿など。
治療は感染を起こしやすくしている基礎疾患等を除去し、原因となる細菌を除去する。
抗菌薬は培養感受性試験に基づいて選択し典型的には3~6週間投与を継続する。結果が出ていない場合はペニシリン、ニューキノロン系抗菌薬を選択する。

猫下部尿路疾患(FULTD)
細菌性膀胱炎と同様症状+部分的または完全な尿道閉塞といった症状が2つ以上認められる疾患。原因としては尿石、尿路感染等がある。
冬に多く、尿量の減少、排尿回数の低下、ストレスなどが誘因になるなど原因が特定できないものを、特発性下部尿路疾患と呼ぶ。
症状は上記。尿路閉塞が雄猫でよく見られる。
尿閉が36~48時間になると抑うつ、尿毒症といった急性腎不全の症状がみられ、最終的には死に至る。
治療は尿閉の有無で異なる。
ない場合、抗菌薬の投与、ストルバイト尿石には療法食を用い尿石の溶解、ストレスの改善など。多頭飼育の場合、トイレ数の増加、清潔に保つ、常に新鮮な水が飲めるようにする、注目し続けストレスかけないなどの配慮も必要。
ある場合、カテーテルを使用し閉塞を解除する。症例によっては解除後もしばらくカテーテルを留置する必要がある。高BUN、Kの場合は輸液投与が必須。
食事療法は継続する必要があり、家族への十分な説明が必要。

尿石症
尿石が存在する場所により、腎結石や、尿管結石、膀胱結石、尿路結石と呼ばれる
原因は尿pHや塩類濃度、食事ミネラルバランス、感染など
成分は、ストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)、シュウ酸カルシウム、尿酸塩、シスチン等がある。
犬では尿路感染に起因する事が多く、やはり雌の割合が高い。
症状は細菌性膀胱炎と同様だが、より排尿痛が強い。
治療は結石が小さい場合は種類によっては内科療法や処方食での治療が可能。
大きい場合は外科的摘出手術

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いかがでしたでしょうか。

泌尿器疾患には完治する疾患ももちろんありますが、完治せずに継続治療が必要な疾患も多いです。
また早期発見が難しい場合が多いので、初期症状を見逃さないように、なるべく早期に治療が始められるようにしてあげることが重要になってきます。
働きと初期症状を理解してきちんとした検査や治療が行えるようにこれからも多く学習していきたいと思います。

看護師 坂本恵

 

看護師セミナー17 動物看護学

こんにちは。看護師の坂本です。今回は動物看護学という、動物看護師の意識や振る舞いについてです。
これから動物看護師を目指す、または現職さんへという内容になっております。

以下内容
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動物看護学、臨床動物看護学

動物看護の目的:その動物の生活ステージすべてに関与し、一生を支えること。
=病気の時のみではなく、元気な時も含め全ての段階に関与しサポートする。
個々の動物の環境や状況を理解し、個別性をふまえた看護を行う
この目的を理解した上で、動物の看護とは多様な環境に生存する動物種を、その動物に合った健やかな一生を全うできるように、健康の保持と増進、病気の予防と動物医療の補助に勤め、援助することである。

健康とは、身体、精神、および社会的に安定した状態であることを意味し、単に病気、虚弱でないということではない。
動物看護の基本とは安全な獣医療を提供する。安心を得られる。自立を助ける事である。

 各ステージに対する看護

健康な時:現状の維持及び病気予防。
栄養管理やワクチンの必要性の啓蒙、しつけ、避妊,去勢手術に関してなど。正しい、新しい情報を飼い主さんが全て知っているとは限らない。
病気の時:獣医療の補助と二次的発症疾患の予想及び予防。
さらなる苦しみが与えられないよう配慮する。
回復期 :日常生活の自立を目指す。
リハビリの実践や、元の生活になるべく戻るためのサポート。
終末期 :苦しまずに平和な死を迎える援助。
体を生前の綺麗な状態、その動物らしさを損なわないようにしながら送り出す。また飼い主の悩み、悲しみなどの心に寄り添える看護師でいる。

獣医師と動物看護師の職域の違い
獣医師は病気を診る、診察や診断など獣医師しかできない仕事がある
動物看護師は動物を看る。全体を丁寧に看る仕事。人の医療から学び、病気を診るのではなく病人を看る。献身的なだけではなく、観察力を持つことが重要。健康で快適な環境が動物の健康維持に必要と言う事を理解し、動物看護師が指導する必要がある。

動物看護師に求められる視点、能力
生活全般から、どのステージにいるのかを見極め、状態観察し、今後の予想や問題点を把握し、解決するための処置を実践する、動物看護のプロ視点。
飼い主と適切に関わり、絆をつくり、安全で安心して診療を受けられるようにする。
獣医師の言う事だけを聞くのが動物看護師の能力ではなく、動物、飼い主さんのために必要知識をつけ意見交換しながらより良い獣医療、生活を提供するサポートする能力が必要。

動物看護過程の実施
動物看護過程とは現状や目的、今後など必要なことは何かを観察し、見極め対応する手段や方法論のこと。看護記録として活用し、関わる全てのスタッフが共有出来て、同じことを出来るようにするためのもの。
アセスメント
情報の収集を行い、動物の現状把握。裏にひそんでいるものも推測し収集する。
問診内容の統一など、同じ情報を収集できると良い。
看護診断
正確な情報や診断をもとに、看護上の問題を抽出し、明らかにする。
現時点で存在する問題やこれから起こりうる問題を挙げる。
看護計画
問題点の解決方法や目標を設定し、達成するまでの対応や行動を考え出すこと。
目標は飼い主さんと相談して、無理のない目標を設定する。元気だった時と全く同じは厳しい場合もあることは相談して伝え、今可能な目標を設定。
目標達成後に、他目標を再設定することもできる。
実践
計画に沿って実際に動物への看護を提供。
今すぐ対処が必要なもの、緊急ではないが必要なものなど、優先順位をつけて実践する。この時二次的に起こりうる症状などの予防も一緒に。
看護記録
実践内容と結果が誰にでもわかるように記録。みんなで同じ情報を共有。
他者に理解しやすいように。記録の改ざんとならないよう、訂正は注意し、修正テープ等は使用しない。守秘義務があるので慎重に管理する。具体的な正確さ、簡潔さ、明瞭を意識して出来るだけ早くに記録する。
看護評価
看護目標が達成できたのか、どこに原因があったのかを評価し、必要であれば再アセスメントを行う。(目標の再設定)

クライアントエデュケーション
動物とより良く共生するために獣医療従事者から飼い主に必要な知識を提供し、個々の問題をともに解決していく事。
動物看護師としての専門性、コミュニケーション力、ホスピタリティマインドと言われるおもてなしの心が求められる。飼い主の期待に応え、期待以上のものを提供する。
動物病院で行われる主なものとしては
飼育、健康管理指導
 予防医療の指導
 関連法規の遵守と啓発       がある。
飼い主とその家族の生活リズムや環境に適し、実行できる計画を立てどのようなアドバイスが出来るかを考える事が動物の支援に繋がる。

2つのコミュニケーションスキル
バーバルコミュニケーション
言語のコミュニケーション。敬語や尊敬語、謙譲語はもちろん、クッション言葉や依 頼、肯定形の言語もきちんと使えるようにする。
ノンバーバルコミュニケーション
姿勢、身だしなみ、表情のコミュニケーション。目と耳からの情報で印象の93%は決まる。清潔感は信頼感につながる。ユニフォームは立場をあらわすもので、そこに個性を出す必要はない。
笑顔は不安を安心に変えてくれる要素。

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いかがでしたでしょうか。

さまざまなことに注意し、思いながら働く事を求められます。
注意しあい、支えあいスタッフ間の連携を取りながら目の前の子たちのためにきちんと働いてきたいです。

看護師 坂本恵

看護師セミナー16 循環器

こんにちは。看護師の坂本です。
今回は循環器です。
循環器は心臓をはじめとして、身体を保ち、生きるために重要な部分です。
構造や機能など難しいところも多いですが、まとめました。

以下内容
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循環器

循環器とは心臓、血管、血液循環、リンパ管、循環の調節のこと。
それぞれ生きていくうえで必ず必要なもの。人の循環器系の本でも学べる。
循環器疾患を疑う診察検査時には、できる限り心臓や呼吸に負担のかからないように注意し、特に神経質だったり興奮している動物は突然チアノーゼや発咳を起こすことがあるのでよく様子を見ながら診察検査を進める。重症の心疾患をもつ動物は、体位変換だけでも大きな負担になり、ストレスによって死亡することもある。
ショックを引き起こしていたり、引き起こす可能性があるので注意が必要。
循環器疾患の動物は、呼吸器系や泌尿器系疾患などを併発していることがあるので、他疾患がないか十分な観察も重要。循環血液量の関係で、心疾患のある子は腎臓に疾患を抱える可能性が高くなるので定期的な観察も必要。
正しい心音や心電図波形を理解し、看護師も異常を早期に発見できるようにしておく。
心電図波形のブロックと呼ばれるものの中には出た際に緊急的な対処がすぐ必要なものもあるので、しっかりと波形を読めるようにする。
自宅での環境管理や運動、食事管理など注意する点をまとめきちんとした管理の指導をできるように知識をつける。病院外でも、突然緊急的な症状が出る場合があることをきちんと伝えておく。

構造と機能 

心臓
心臓の内部は右心房、右心室、左心房、左心室の4つの部屋に分かれており、血液の逆流を防ぐ三尖弁、肺動脈弁、僧帽弁、大動脈弁という4つの弁をもつ。
全身の各組織で酸素を消費し、産生された二酸化炭素を多く含んだ血液を右心房で受け取り右心室のポンプ機能によって肺血管へ送る。肺で酸素化された血液は肺静脈を通って左心房で受け取られ左心室のポンプ機能によって全身へ送られる。このことからも他の臓器が動くために必須の重要な臓器であることがわかる。
個々の心筋は自動能を持ち、それらが心臓全体として統率された収縮運動を行うための仕組みを刺激伝道系という。右心房の洞結節から、一定のリズムで活動電位が送られ、房室結節、ヒス束、右脚・左脚、プルキンエ線維を経て心室筋に伝わり、心室が収縮している。この規則正しいリズムを洞調律といい、心電図の基本的な波形を示しているもの。
正常な心拍数は、犬で60~180回、猫で120~240回/分
心臓の壁は、内側から心内膜、心筋層、心外膜の3層から形成される。心内膜は血管の内膜から連続した膜で心臓の内面を覆い、弁はこの心内膜がヒダ状になり心臓内腔に飛び出したもの。心外膜は心底部で外側に折り返して心膜がある。心外膜と心膜の間に心嚢水があり、心臓がスムーズに動くことができるようにする役割がある。
心臓自体に血液を供給する動脈を冠動脈という。大動脈から右冠動脈と左冠動脈の2本の冠動脈がでている。

血管
血管壁のまわりに平滑筋と弾性線維が取り巻いている血管を弾性血管と言い、心臓に近い太い動脈はこの血管によってつくられている。
弾性線維はなく平滑筋のみが取り巻いている血管を抵抗血管と言う。平滑筋の収縮の度合いにより血管の内径が変化し、これにより血圧も変化する。細動脈血管で見られる。
内皮細胞が一層の非常に薄い血管壁を持つものを交換血管と言い、血管と組織の物質の交換を容易に行う事が出来る。毛細血管にある。
平滑筋が動脈ほど発達していなく、血管の太さが血液量で容易に変化するものを容量血管と言い、静脈をつくる血管。四肢の静脈には血液が逆流しないように静脈弁がある。

血液循環
血液の主な流れは
全身→右心房→右心室→肺動脈→肺→肺静脈→左心房→左心室→大動脈→全身 となる。この順で各組織に血液や酸素交換、栄養などを運ぶ。
この他にもさまざまな循環が行われている。
肺循環は右心室→肺動脈(静脈血)→肺(ガス交換)→肺静脈(動脈血)→左心房
体循環は左心室→大動脈→動脈→細動脈→毛細血管(ガス交換)→細静脈→静脈→大静脈→右心房
冠状循環は心臓自体への血液の供給。2本の冠状動脈を通して行われる。
脳循環は内頸動脈と椎骨動脈を介して脳へ血液を送る。安定してグルコースと酸素を供給するために血液量を一定に保つ自己調節機構がよく働く。
門脈系循環は心臓から直接肝動脈により運ばれる血液と消化器官を通ってから門脈によって運ばれる血液がある。肝動脈血と門脈血は肝臓内で合流し後大動脈を通り、心臓に戻る。
腎循環は体循環の約1/4が腎臓に運ばれ、ろ過と再吸収により老廃物が排出され、きれいな血液が心臓に戻る。
骨格筋循環は運動時には交感神経の働きで血管が拡張され多くの血液が運ばれる。それに対して、安静時の血液量はわずか。
皮膚循環は体温が高い時に皮下静脈の血液量を増やすことで体熱を放散させ、体温が下がると血液量を減らし体熱の放散を防ぐ。

 リンパ系
毛細血管から組織間隙ににじみ出ていく液体成分のうち、静脈から吸収されなかったものがリンパ管を通して運ばれ、このリンパ管を流れる液体をリンパ液と呼ぶ。
リンパ系の役割としては、毛細血管からにじみ出た液体を血管に戻す。細菌や異物の侵入を防ぐ。生体の防御システムとして大きな役割を果たすリンパ球を産生する。消化された脂質や脂溶性ビタミンを運ぶ。等がある。

 循環の調節
血圧を決定する因子は、心拍出量と血管抵抗。
アドレナリンやノルアドレナリンは神経伝達物質として作用し、または血中に分泌され、体液性調節において血液調節に関わる。
神経性調節とは自律神経系による調節のこと。交感神経が優位になると血圧を上昇させ、心拍数も上げる。副交感神経が優位になると血圧を低下させ、心拍数も下がる。
体液性調節とは循環血液量の減少が起こると、レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系が活性化され血管収縮や血液量の増加が起こり、血圧が上昇すること。また尿量を減少させ、体液量を増やし血圧上昇にはたらくホルモンも関与する。

循環器疾患の看護ポイント
問診により症状のでるタイミングがあるのか、その時の様子や症状について詳しく聞き取り緊急的な処置治療が必要な状況なのか判断する。
特定の品種や性別で好発疾患の参考になったり、また虚弱な若齢動物は先天性疾患の可能性も考慮する。
現在の症状や検査データから、疾患の重症度を把握、また現在の生活環境や習慣を聞き憎悪につながる習慣がないかを調べる。
治療中の場合はその後の症状の変化、投薬状況、水分の摂取状況、食事を把握し、心臓の予備能力を維持する生活ができているのかを確認する。
疾患によりまたは治療により生活行動に影響を及ぼしていたり、看護する際の不安がないかどうか飼い主さんの心のケアも同時に行う。
循環器系疾患の子には、一般的に低ナトリウム食を基本とした食事を与えるが、症状の程度や他の病気の併発、好みなどを考慮し選択する。また極度の肥満の子には肥満解消のプログラムを開始する必要があるかの検討をする。
入院中等に輸液を行う事もあるので、輸液中は常に観察し、輸液速度、排尿量、呼吸、心拍数、浮腫などをおこさないかを含め厳重な注意が必要。心疾患には急速な輸液は原則禁忌である事を覚えておく。
体位は基本、水平仰臥位よりは座位や立位の方が心臓の負担を軽減できる。様々な場面でその子にとってどのような体位が一番安楽なのか考え取れるようにしてあげる。自分で楽な体位が取れない時には、タオル等で補佐してあげることもある。
酸素の吸入が緊急的に行えるようにスタッフ全員がスムーズに動けるようにする。
心臓に負担がかからないようにと必要以上の援助や制限をすると、運動不足の筋力低下や心臓の予備能力低下をさせ過ぎてしまう事があるので適度に行う。
寒暖の差をなるべくないように特に急激な寒暖差を行わないよう注意する。
多くの心臓病の治療は心臓能の低下を薬によって助けることから、家族に投薬の大切さの説明と指導、確認が必要になる。このため、動物看護師自身が薬の作用や必要性を理解しておくことが大切になる。また、原因によっては完治が期待できない、完治しない場合や治療が年単位に長期間及ぶことがある。十分な説明を行い、治療、看護方針について相談しながら今後について全員で考えていく。

先天性循環器系疾患

 動脈管開存
出生に伴い閉鎖するはずの肺動脈と大動脈を連絡する動脈管がそのまま遺残し障害を引き起こす。左心の血液量が増大し、左心室が拡張して左心不全や全身の循環不全を引き起こす。プードル,シェパード,ボーダーコリー,アイリッシュセター,キャバリア,シェルティー,ポメラニアンなどの犬種で遺伝的要因が認められている。猫は比較的少ない。
治療は外科的処置。症状に応じて内科療法。

 大動脈弁狭窄
大動脈弁の形態的異常や周囲組織の異常のために、大動脈弁部の血流が阻害され様々な障害を引き起こす。特に左心室に負担がかかることが多く、左心室肥大や全身循環障害、心機能の低下がみられる。ゴールデン,ニューファンドランドなどに好発するといわれている。
治療は軽度~中程度の狭窄の場合は、治療しなくても長期生存する可能性がある。
中~重度の狭窄では、3歳齢までに死亡する可能性が高い。
症状に応じた内科療法を行う。

 肺動脈弁狭窄
肺動脈弁の形態的異常や周囲組織の異常のために、肺動脈弁部の血流が阻害され様々障害を引き起こす。特に右心室に負担がかかることが多く、右心室肥大など右心不全がみられる。最終的には大循環にうっ血を生じ、腹水や浮腫などがみられるようになる。ほかの先天性循環器系疾患を伴うことが多い。シュナウザー,チワワ,サモエド,コッカーなどに好発するといわれている。
治療は症状が軽度の場合や、高齢で手術が困難と判断される場合は、不整脈の現れ方をみながら、内科療法。心臓への負担が重い場合や狭窄が重度の場合は外科的処置。

心室中隔欠損
胎児期の発達異常により、右心室と左心室を隔てる心室中隔に欠損が生じ、孔としてそのまま遺残することで様々な障害を引き起こす。特に左心系の血流量が増大し、左心室が拡張して、左心不全や全身の循環不全を引き起こす。犬よりも猫の報告が多い。
治療は、欠損が小さい場合は無治療の事もある。症状に応じた内科療法。外科処置を試みる事もある。

 ファロー四徴
肺動脈狭窄、心室中隔欠損、右心室肥大、大動脈騎乗を伴った場合をファロー四徴と言う。血液の流れが複雑で、動脈血と静脈血が混合するためチアノーゼや呼吸困難を呈するなどの障害を引き起こす

後天性循環器系疾患

僧帽弁閉鎖不全症
左心室の入口にある僧帽弁が何らかの理由で正しく閉じなくなるため、左心室から左心房へ血液が逆流し、心不全が引き起こされる。
犬の心疾患の80%で高齢の小型犬に多く発症。特にキャバリア,マルチーズは発症率が高く、それぞれ3~4歳、7~8歳から発症するケースが多い。
症状としては咳。最初は夜中から明け方や、興奮時に乾いた咳をするようになり、症状が進行すると咳が止まらなくなったり、呼吸困難を起こす場合もある。また、発作を起こし倒れたりすることがある。
治療は内科療法が基本。血管拡張剤、強心剤、利尿剤、抗不整脈剤などを投与し心臓の負担を減らし、症状の改善に努める。
外科処置を考慮する場合もある。
運動量調整や興奮させないようにする、塩分制限など心臓の負担を減らすための生活指導も治療のうち。

 拡張型心筋症
何らかの原因により、心臓壁を形成する筋肉が薄くなるために血液の拍出力が低下し、うっ血性心不全をはじめ様々な循環不全の症状を引き起こす。
犬では超大型犬やドーベルマン,ピンシャー,コッカ―などで遺伝による拡張型心筋症が確認されている。猫ではタウリン欠乏によって発生する。
症状としてははっきりしない場合もあるが、不整脈、頻脈、嘔吐、咳、食欲不振、運動不耐性、虚脱、失神などがみられることがある。呼吸困難がある場合、胸水や心膜液が貯留していることがある。血栓が形成され血管閉塞する事もあるので注意が必要
治療は症状に応じた内科療法。予後は不良で短命のことが多い。

 肥大型心筋症
左心室壁を形成している筋肉が急激に肥厚するため、左心腔が狭窄して必要な血液量を全身に拍出することが出来なくなる。猫ではメインクーン,ペルシャ,アメショで遺伝によるものが確認されている。
症状としては呼吸困難、運動不耐性。左心房が拡張するとともに、血液が停滞する結果、肺水腫を引き起こす事もある。時に突然死をも引き起こす。血栓が形成され塞栓症をおこすこともあり、その場合後肢の痛み、麻痺、冷却が認められる。
治療は症状に応じた内科療法。予後は不良で短命のことが多い。

 犬糸状虫症
蚊を中間宿主とする犬糸状虫が心臓に寄生することで、運動不耐性、咳などが認められ、重度になると腹水や失神、喀血などを起こす。また死亡した犬糸状虫が肺や血管に塞栓することがある。予防薬での予防が可能で重要。猫やフェレットにも感染する。
治療は外科処置、駆虫薬の投与、その他状況に応じて内科療法。
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いかがでしたでしょうか。

難しいところも多かったと思います。
先天性もありますが、後天性の循環器疾患は基本的には継続治療が必要なものになります。
しっかり理解して治療を行う事が疾患と付き合う上で必要になると思います。
様々な疾患がありますが、もっと循環器について学んでいかなければいけないと思いました。

看護師 坂本恵

看護師セミナー15 耳科

こんにちは。看護師の坂本です。
今回は耳についてです。耳は疾患としては多い場所ですが、構造をすべて理解している方は多くないと思います。
構造について、疾患について、また洗浄や点耳の注意点についてまとめてあります。

以下内容
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耳科
耳は音を聞く感覚と、体の傾きや回転を感じ取る感覚を担う感覚器。
耳は日ごろから手入れできるようにしておかないと、1度炎症を起こすと、炎症を起こしていない耳の細菌バランスには2度と戻れないと言われている。そのため症状が出てしまうと長期化、慢性化しやすい。
どんな子でも高齢になっていくと老齢の難聴になっていく。聴覚、視覚から低下していき、味覚、嗅覚は最後まで残ると言われている。日頃の耳の管理と構造の理解で少しでも聴覚を失わないよう、疾患にならないようしていくことが大切。聴覚が無くなったからと言って、全く声をかけないという事はしてはいけない。何か言っている時の空気の振動や雰囲気を犬や猫は感じ取れるので、聴こえていなくても声をかけてあげる事が必要。抱き上げる時は視界に入ってから身体や心の準備をさせて、ゆっくり触れ抱き上げてあげる事。触れる際も手のにおいを嗅がせるなどしてから、ゆっくり撫でると良い。
耳の疾患の中には聴覚障害になるものの他に、平衡機能障害になることもある。その際はまっすぐ歩けないなどの歩行障害も出現するため、自宅でも安全な環境を整えることなど適切なアドバイスができるようにしておく。
耳は形により性格がわかれている事がある。これは、人が様々な耳の形の犬種を生み出しているからで、耳が垂れていたり、尾が巻いている犬種は特に人に従順で甘えん坊な子が多いと言われている。

 耳の構造としくみ
耳は外側から、外耳、中耳、内耳の3部分から構成されている。
外耳から内耳へは全て繋がっているので、外耳炎から中耳炎、内耳炎へ進行していく事があるので耳がおかしいと気づいたら、早めの治療が必要。

外耳
外耳は体表から飛び出している耳介と中耳まで続く外耳道からなる。
音を集めやすいよう軟骨によって形成されており耳介筋によって耳を動かして音源をつきとめている。犬猫の外耳道は、はじめ垂直に下に向かう垂直耳道と、途中で方向を変え水平に内側に向かう水平耳道がある。
外耳道の細胞構造は皮膚と同じ

 中耳
中耳は鼓膜、耳小骨、鼓室からなる。
鼓膜は皮膚と同じ構造なので敗れてしまっても修復され、また出血もする。
耳小骨は3つの骨からなり、それぞれ鼓膜側からツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨と名前がついている。その奥に鼓室と呼ばれる広い空間がある。中耳には鼓室内と外界の圧力を等しくする役割があり、内外圧を均等にしている。

内耳
最も奥にあり、複雑な形をした骨迷路と呼ばれる骨の空洞とその中に同様の形をした膜迷路がある。内耳は前庭部と蝸牛部に分けられ、前庭部は前庭と半規管という骨迷路と、球形嚢、卵形嚢、半規管という膜迷路からなる。蝸牛部は蝸牛という骨迷路の中に蝸牛管という膜迷路があり、蝸牛管の上下にはリンパ液で満たされた前庭階と鼓室階がある。蝸牛管と鼓室階をわける基底膜の上にコルチ器という感覚器官がある。
前庭は体の傾きを感知し、この情報が脳に伝わり頭の位置を決定する。半規管では回転すると中にあるリンパ液が流動し、それによりクプラという感覚毛の上にあるゼラチン成分が動かされるため、向きや回転を感知する。蝸牛部には聴覚の受容器であるコルチ器が存在し、音の振動を感知している。

耳科の検査内容

耳介の検査
耳介の検査は皮膚検査と特に違いはないので、症状に合った皮膚検査を行う。
耳介の脱毛の原因には感染症などの可能性もあるが、甲状腺や副腎皮質機能の異常である内分泌疾患の可能性もあるので血液検査やホルモン検査を行う必要がある場合もある。

 耳鏡検査
耳鏡を使用して外耳道の観察を行う。耳鏡に装着するスペキュラコーンを選択する時は挿入可能なサイズのうち、できるだけ大きな口径を使用することが一般的。
耳鏡による観察では、耳道が開存しているか、外耳道の色調、増殖性変化の有無、外耳道壁の潰瘍病変、腫瘍の有無を確認し、動物によっては鼓膜の観察も可能。

レントゲン、CT検査
耳道狭窄のため、耳鏡で鼓膜までの全ての耳道が確認できない場合の評価や耳道内の腫瘤の評価、中耳の評価などを主な目的として行われる。また、難治性の外耳炎では、腫瘍が存在したり、中耳に炎症が及んでいる事も多いため、画像診断が重要になることもある。

 耳垢の塗沫細胞診
原因菌の特定や、感染症を疑う時に行う。水平耳道の耳垢を採取するのが望ましい。
疑う原因菌の種類により、塗沫のみで顕微鏡検査を行うものと染色してからに行うものに異なる。

細菌培養、感受性検査
原因菌を調べるために細菌培養検査を行う場合がある。また同定された細菌に対して、どのような抗生剤が有効かを調べるため、感受性検査を行い、内服薬の検討を行う。

代表的な疾患

 外耳炎
水平、垂直耳道の上皮に炎症が起こった状態。
皮膚が赤くただれる、腫れる、耳垢が目立つ、悪臭、頭部を振る、後肢で耳を掻く、痛がるなどの症状がでる。
垂れ耳、長毛種、耳道内の毛が多い犬になりやすく、猫ではまれ。
原因はさまざまで、細菌や真菌の感染、寄生虫感染、アレルギー反応、腫瘍、異物の侵入などがある。アトピー性皮膚炎、アレルギーなどの基礎疾患を持っていることも多い。
治療は耳道の洗浄と点耳薬。特に炎症が強い場合は内服薬も併用する。
麺棒による耳道の洗浄は、行いすぎるとかえって耳道を傷つけ、炎症を悪化させる要因になるので注意が必要。

外部寄生虫
外耳炎を起こす外部寄生虫で、最も多くみられるのはミミヒゼンダニ。
感染が認められる場合、強いかゆみを訴えることが多い。
耳垢の顕微鏡検査で確定診断を行う。
犬、猫の外耳道に寄生するが、宿主を離れても数週間は生存可能なので完治後の再感染に注意する。また同居動物へ伝染する可能性もあるので注意。

 中耳炎、内耳炎
中耳や内耳にまで炎症が及んだ状態。外耳炎がなかなか改善しない場合、起こしている可能性がある。中耳炎の症状は外耳炎とほぼ同じだが、中耳付近を走行する神経に炎症が及ぶと、ホルネル症候群や顔面神経麻痺をおこすことがある。 内耳炎になると、斜傾、眼振、運動失調などの前庭障害が認められ、うまく歩く事が出来なくなったり、吐く事がある。
治療は内服薬。

 耳血腫
耳介軟骨の中に、血液が貯留し腫れる状態。
詳細な原因は不明だが、頻繁に耳を掻いたり、頭を振る、耳をぶつけるなどで耳介軟骨が骨折してしまい耳血腫になると言われている。 初期病変は耳介内側基部から始まり、先端に向かって拡大する。急速に出現し、頭をしきりに振るなどの不快感を訴える。適切に治療をすすめないと不自然な癒着をおこし、耳介が変形する。
治療をおこなっても再発が多い。外耳炎などの基礎疾患がある場合は同時に治療を行わないと再発の可能性が高くなる。 液体を抜き続けても治らない、変形させたくない場合は外科治療を行う。

 腫瘤
耳に発生する腫瘍として、良性の耳道内のポリープ、悪性の扁平上皮癌、耳垢腺癌があげられる。悪性の場合、取りきるためには耳介や耳道の切除も必要になる場合がある。切除の際には画像診断で範囲を決定する。扁平上皮癌は進行が早いので早期の判断が必要。

 自宅管理方法

 耳掃除
治療としても、治療後のケアとしても重要。
耳道皮膚に異常が認められない場合は、洗浄液を含ませた綿花で優しく汚れをふき取るのみで良い。綿棒を使用する場合は耳道内を鼓膜方向に擦らず、耳介方向に汚れを持ってるくるように使用する。綿棒は間違った使い方をすると鼓膜に汚れを詰めてしまったり、耳道を傷つけてしまう事があるので正しい使用方法を伝える。
耳道内に汚れがある場合は、洗浄液を直接耳の中に入れて垂直耳道を優しくマッサージして、顎を上に上げ液体ごと排出、または頭を振らせてもらい排出する。これを数回繰り返す。奥に塞栓している場合は、洗浄液を入れてから数分間そのまま待ち、軟らかくしてから除去していく。
正常な場合は可能な限り乾燥状態を保つようにし、自宅での耳掃除のしすぎや、誤った耳掃除の方法が疾患をおこさせたり、悪化させる場合がある事を伝え、正しい方法を指導する事が大切。また耳掃除を嫌がる子も多いので、疾患になってしまった時のことを考え、トレーニングを行っておくことも重要。

 点耳
治療のために点耳薬を処方されることは多い。方法をしっかり伝えないと治療がうまく行えないので注意が必要。
外耳道が垂直になるように耳介を上に向け保持し、点耳瓶の先端が直接指や皮膚につかないようにしながら、耳道内に必要量を滴下する。外耳道あたりの皮膚を上からマッサージし、あふれた薬液や耳垢をふき取る。この際耳介に出てきたものだけを拭き、外耳の中まで拭かないように注意する。
点耳後は耳を執拗に痒がっていないかを観察する。
耳の疾患の場合、痛みを伴っている場合が多いので周辺部位に手が触れるだけで嫌がり攻撃的になる事がある、その際は口輪等を利用するか、まずは他治療からはじめる。

耳の治療は疾患動物の性格や行動特性、家族のライフスタイルに合わせ、点耳薬などの自宅管理をしっかり行えるのか、通院治療の方が良いのかなどを考える必要がある。外耳炎などでは再発を繰り返す場合もあるので、適切な維持が出来るように説明をしていく必要がある。

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いかがでしたでしょうか。

耳科は多い疾患ですが学び直す機会の少ないところなので今回しっかり学び直すことができて良かったです。
点耳や洗浄方法など、お家でしている方法が不安な事もあると思います。
いつでもスタッフにお問い合わせください。

看護師 坂本恵

看護師セミナー14 消化器Ⅱ

こんにちは。看護師の坂本です。

今回は前回の続き消化器Ⅱになります。
消化器Ⅱでは症状や疾患についてをまとめました。代表的な疾患が多かったので聞いたことのある疾患も多いと思います。
治療や症状、原因などが簡単にまとめてありますので、何かの参考になればと思います。

以下内容
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消化器Ⅱ

 嘔吐と吐出の違い
嘔吐:胃の内容物が様々な刺激による嘔吐反射によって口外に吐き出されること。吐く場所を探したり、特徴的な姿勢をとることが多いので前兆がわかることが多い。
吐出:食道の内容物を吐き出す動作。明瞭な前兆がなく、突然に食べたものを吐き出すことが多い。胃に到達していない食物が吐き出されるので胃液の臭いがなく、未消化で棒状に出てくる。吐き出した際に気管がうまく反応できず、誤嚥性肺炎を起こす可能性があるので注意が必要。

消化器疾患診療の対応
消化器疾患の場合、ストレスにより診察室内またはキャリー内で嘔吐、下痢をおこす場合もある。場所を汚してしまった申し訳なさを取り除けるように配慮が必要。また排出物は検体として重要な場合もあるので、確認してから廃棄する。
嘔吐、下痢は感染症の一例の場合もあるので、衛生面に十分注意する。
ストレスのかからない安全な保定を徹底する。
また、消化器疾患の場合十分に栄養が取れずに体力を消耗している場合があるので、
栄養管理も重要。症状改善後も食事内容の管理が必要な場合もあるので、きちんと説明できる知識をつけておく。論理上では適切な食事内容であっても、好みの問題で継続給与が難しい場合がある。家庭で給与を行う場合、飼い主さんと相談しながら他の選択肢を提案できるようにしておかなければ、困難で途中でやめてしまったり、良くない物をあげてしまう事もあるのできちんと話合っておく。

治療方法
治療方法は原因や疾患により様々だが、代表的な方法としては
薬物療法:胃粘膜保護剤、胃酸分泌抑制剤、制吐剤、抗菌薬、消化酵素製剤、免疫抑制剤などその症状や原因に合うものを選択し治療する。
 輸液療法:脱水の程度により皮下点滴か静脈点滴かを選択する。血液性化学検査や電解質検査の結果のもとに適切な輸液剤を選択し、間違えないように準備管理を行う。輸液中も電解質異常が出ないか注意。
 食事療法:消化管に負担のかからない食事の種類、与え方を考える。量や内容、与え方は疾患と症状の経過や様子により異なる。獣医師と飼い主さんとの情報交換をしっかりと行い、関わるスタッフ全員で共有する。
 非経口的栄養補給:中心静脈栄養法、経鼻チューブ、食道チューブ、胃チューブなどがあり、摂食不全や腸吸収が難しい時に行う。管理が大変なので、飼い主さんとしっかり話し合ってから行う。
 外科療法:物理的原因で消化管が閉塞している場合必要になる。

代表的な疾患

食道狭窄
食道が局所的に狭窄し、食物が通過困難になる。長期化することで炎症、吐出、流涎、体重減少などがおこっていく。
バリウム検査、内視鏡検査で診断。
治療は外科手術、対症療法として流動食による食事管理。頭部を上に向け起立状態を保持することで吐出からの誤嚥性肺炎の防止。

 巨大食道症
食道が拡張し、食物が移送されずに停滞してしまうため、食後に吐出する。
胸部レントゲン検査、バリウム検査で診断。原発として他疾患のあることもあるため、内分泌系も含め血液検査の実施。
治療は原発疾患がある場合はその治療。対症療法として食事管理。流動食の形態で1日分を数回に分けて投与。頭部を上に向け起立状態を20~30分保持し食事する。

 胃炎
急性と慢性があり、胃粘膜に炎症が起きている状態。感染、薬物、異物などが原因で起こすことが多い。嘔吐が一番多い症状で、出血が伴い吐血する場合もある。
血液検査で炎症像の確認。胃潰瘍の確定診断は内視鏡による、また生検し病理検査で特定する。
治療は重度の場合には絶食が必要で、この際には輸液が必要になる。嘔吐が無くなった後は胃腸負担の少ない食事を与え、胃粘膜保護剤、胃酸分泌抑制剤、制吐剤、抗菌剤など内服を検討する。

胃拡張捻転症候群
大型犬でおこりやすい、胃の拡張と捻転による疾患で緊急性を要する。
胃の捻転によりガスが出辛くなり、胃の拡張が進んでいく。拡張した胃が横隔膜や後大静脈を圧迫し、呼吸困難やショックをおこす。嘔吐したいが出来ない様子、腹囲膨満、呼吸速迫、意識低下、ショック状態などの症状がでる。
レントゲン検査、問診、身体検査で診断。
治療は拡張している胃の減圧を緊急で行い、捻転した胃の整復を外科的に行う。

 パルボウイルス感染症
パルボウイルスの感染により、発熱、嘔吐、出血性の下痢、脱水、食欲元気消失などを引き起こす。血球系や腸上皮の細胞に感染し増殖するため、二次感染による敗血症の危険がある。
血液検査で著しい白血球の減少が見られ、ウイルス抗原検査で診断する。
治療はウイルス疾患なので特効薬はなく、集中的な輸液と体力保持、二次感染に注意する。パルボウイルスは環境中で長期間活性があるので、消毒の徹底と他動物との接触を避けること。

腸炎
細菌やウイルス感染、食物、薬物のアレルギー、寄生虫など様々な原因で腸粘膜に炎症がおこること。下痢が主症状で小腸性と大腸性を見分ける必要がある。
量や出血の有無、便回数の変化、食欲の有無などを確認し見分ける。
検便や血液検査で重症度や原因を探り対処する。
治療は、原因が様々なので原因が分かった時点でその除去を行う。原因の特定が難しく対症療法で治ることも多い。嘔吐、下痢で脱水がある場合はその改善を行う。食事管理も重要。

 腸閉塞
イレウスともいう。異物による物理的なものが多いが、腸が通過障害をおこしている状態。異物による閉塞は急性の激しい嘔吐、元気食欲低下。緊急疾患であり外科的処置が必要。ただし、腫瘍による閉塞は慢性経過をとる事が多い。
腹部触診、レントゲン、バリウム検査、エコー検査で診断。
治療は、異物の場合は開腹し異物の摘出。対症療法。

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いかがでしたでしょうか。

前回の構造よりは、わかりやすかったと思います。
前回の構造、栄養学と合わせると、今よりもっとしっかりとした看護をしてあげることが出来るようになると思いました。
ついに講座も半分を超えました。読み辛いところも多いと思いますが、お読みいただきありがとうございます。

看護師 坂本恵