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  病院の症例

目次

ア行
遺伝子検査
胃捻転・胃拡張症候群
異物の誤飲
異物による腸閉塞
会陰ヘルニア
カ行
眼瞼内反症
クッシング症候群
口腔内腫瘍
高濃度ビタミンC点滴療法
骨折1
サ行
歯冠修復(歯の治療)
子宮蓄膿症
歯石除去
膝蓋骨内方脱臼(パテラ)
食道狭窄
腎結石
心嚢水貯留(心タンポナーゼ)
膵炎
潜在精巣(陰睾)
前十時靭帯断裂
前庭疾患
タ行
大腿骨頭壊死症(レッグ・ペルテス病)
大腸の炎症性ポリープ
タマネギ中毒
胆嚢粘液嚢腫
椎間板ヘルニア
トイプードルの橈尺骨骨折
動脈菅開存症(PDA)
ナ行
ハ行
肺腫瘍
脾臓の血管肉腫
肥満細胞腫
猫のぶどう膜炎
分子標的療法(パラディア錠)
膀胱結石
膀胱の腫瘍
マ行
猫の網膜剥離
門脈体循環シャント
ヤ行
ラ行
狼瘡様爪床炎
レーザー治療

肺腫瘍(原発性の肺腺癌)

動物の原発性の肺腫瘍の発生は、人と比較して少ないといわれています。しかしながら、犬では他の動物種よりもやや多い傾向があり、ある研究では、犬の約10%で発症し、発症平均年齢は10.9歳とされています。原発性の肺腫瘍は、特徴的な臨床症状に乏しく、初期診断が難しいという特徴があります。また、およそ30%の症例で診断時には症状を呈していなかったとの報告もあることからも初期診断の難かしさが伺えます。こうした疾患の初期診断を目指すには、少しでも疑える症状が問診で聴取できた場合、積極的に検査を奨める以外に方法がないと考えられます。

下記に挙げられる症状が気になった場合には、積極的にレントゲン検査による評価が大切となります。

()内は発生頻度を示しています。
○最近よく咳をする(55%)
○呼吸が荒い時がある(24%)
○よく寝るようになった(18%)
○食べているのに痩せる(12%)
○熱っぽく感じる時がある(6.4%)
○足が痛そうな時がある(3.8%)
○状況のいずれかの症状を有し、かつ10歳以上である(発生年齢は2ー18歳)

診断方法
胸部レントゲン検査にて肺腫瘍が疑われた場合、その発生部位によって、細胞診やCT検査にて確定診断とします。

検査の実際
レントゲン検査
中心部にある楕円状の塊が心臓で、その斜め上に肺腫瘍を疑う丸い塊を認めています。

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CT検査
細胞診より腫瘍が疑われため、本症例では腫瘍の正確な位置や、周辺の脈管系の巻き込み、心臓との位置関係など、手術に必要な情報を得るためにCT検査が追加されています。
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写真は酪農学園大学附属動物医療センターより提供
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検査所見より、腫瘍は肺の左後葉近位に限局し、大血管に接するものの、巻き込みや強い癒着は想定されず切除可能と判断されたため、外科的摘出の可能性な肺腫瘍と診断されました。

治療の実際
一般状態が安定していて、病変が限局している場合には、外科手術が第一選択となります。しかしながら、手術はせずに緩和療法のみを行ったある研究では、その生存期間の中央値が10ヶ月(5日〜42ヶ月)との報告もあることから、年齢、腫瘍の大きさや転移の有無などにより、治療の選択には慎重を要します。今後の期待が高い放射線療法(リニアック)や抗癌剤に関しては、2020年、現在のところ十分な情報がないのが現状です。

手術の実際
画像診断より得られる腫瘍の発生位置により、胸骨正中切開法または肋間切開法が選択されます。本症例では肋間切開法による胸腔内アプローチが選択されています。開創にはフィノチェット型開胸器と呼ばれる開創器を用い、肋骨への負荷を最小限に確実な開創を行います。
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(写真の色調は編集しています)
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指で把持している塊が肺腫瘍です。関連する脈管をそれぞれ切断していきます。

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腫瘍を切除後、胸腔内にドレーンを設置し、手術侵襲に伴って生じる液体を排液しながら術後管理を行います。通常は数日内に排液は収まりドレーンの抜去が可能となります。

術後のレントゲン写真を示します。腫瘍の完全切除を確認し手術を終了します。
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合併症と入院
術後数日の間は、胸腔内の出血や気胸に対する注意が必要となります。術後数日は酸素室内にて呼吸状態を管理しドレーンにて排液の種類や量の計測を続けます。廃液量が1―2ml/kg/日以下まで減じたらドレーンの抜去が可能となります。入院期間の目安は3ー7日程度となります。

予後因子
報告にある予後に関するデータのいくつかを掲載します。予後に関する数字はあくまで一つの目安となります。

リンパ節転移がない場合の予後:11ー15ヶ月
リンパ節転移がある場合の予後:1−2ヶ月
肺腫瘍の種類:予後との相関なし
診断時に症状がない場合:18ヶ月
診断時に症状がある場合:8ヶ月

 

日常診療においては、肺腫瘍は殆どの場合で症状がなく、偶発的に診断されることが多い腫瘍です。診断時の年齢も比較的高齢で手術の是非についても悩まされる疾患の一つです。しかしながら、症状が出てしまった場合の苦しさや、平均予後の半減などを考えた場合、年齢を問わず、元気があり、転移所見がなく、限局した肺腫瘍と診断された場合には、外科手術の選択はやはり第一選択であると言えるかもしれません。

門脈シャント(門脈−体循環シャント)

門脈シャントとは肝臓に流入する門脈という血管の先天的または後天的構造異常(シャント)により生じる疾患で、シャントが起こる部位によって門脈−大静脈シャント、門脈−奇静脈シャント、後天性の多発性シャントなどが知られています。血管の構造異常によって、本来肝臓に運ばれて代謝を受けるべき血液が、肝臓に運ばれずに全身を循環してしまうことによって、様々な臨床症状を呈する疾患です。

門脈シャントの症状とは
本疾患では神経症状、消化器症状、泌尿器症状と多岐に渡る症状が観察されます。典型的には、成長遅延や小柄な体型、不活発で奇妙な行動(じっと宙を見る、頭を壁に押し付ける、攻撃性、意味のない吠え、徘徊)を認め、食後の一時的な失明等を起こすこともあります。しかしながら、明らかな症状を呈するようになるまでは、軽い症状しか出ない場合も多く、なんとなく小さい頃からお腹が弱い、食べ物の選り好みが強い性格、健康診断でいつも肝臓の値が少し高いという症例の中に本疾患が隠れている事もあるため、軽度でも慢性的に続く症状には注意が必要と考えられます。

門脈シャントの診断方法
本疾患が疑われた場合、まずは肝機能検査というものを行います。この検査では、絶食時と食後の血液を採取して、血液成分の変化を調べることによって肝臓の働きに異常があるかを調べます。異常を認めた場合には以下の確定診断に進みます。

エコー検査
シャントの場所を調べるために行います。確定診断には麻酔下でのCT検査が必要な事も多いですが、無麻酔で実施可能なエコー検査でも比較的高い確率でシャントの検出が可能です。しかしながらエコー検査では発見が難しい位置でシャントが生じている症例では検出が不能です。

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上図は、それぞれ二本の血管の断面を示しています。青い血管(門脈)と黄色い血管(後大静脈)が連絡している部位がシャントを示してます。

CT検査
認められたシャントに対しては、手術適応の場合、縫合糸を用いた部分結紮術やアメロイドコンストリクターリングと呼ばれる閉鎖具を用いて閉鎖することで治療します。CT検査ではシャントの正確な位置や血管径、エコー検査単独では検出できない部位での検出を目的に実施します。下図で示したピンク色のシャント血管が、青い血管(後大静脈)にどのような角度で、かつどのような太さで流入しているが三次元的に表現されます。主にCT画像を利用して、どのような術式を採用するかを決定します。
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(CT画像:酪農学園大学画像診断科提供)

 

治療
近年になって様々な術式が紹介されるようになってきており、それぞれに一長一短があります。当院では部分結紮術及びアメロイドコンストリクター挿入術 の二術式を採用しています。いずれの方法も、シャント血管をゆっくり閉鎖させることで急激な体内変化を抑える事が主目的の術式です。
部分結紮術
体内に残す人工物が他の方法と比較して圧倒的に少なく、また、様々な種類があるシャント血管に対して適応範囲が広いという利点があります。一方で、多くの場合、部分的な結紮を二回に分けて行い完全結紮を得る手法のため、二回の手術が必要となります。
アメロイドコンストリクター挿入術
内張に水分で膨張するリンタンパク質を付着させた金属製のリングをシャント血管に装着します。装着後、体液によって緩徐にリングが膨張し、シャント血管をゆっくりと閉鎖させます。原則一度の手術で完結する術式です。一方で、異物反応によるシャント血管の早期閉鎖やリングのズレ、費用、シャント血管径によっては最適なリングが選択できないという場合もあります。

手術の実際(部分結紮術)
エコー検査やCT検査によって認めらたシャント部位をまずは確認します。予めCT検査によって三次元的評価を行えている場合はシャント血管への到達がスムーズとなります。視認したシャント血管に対して、細いチューブに入った結紮糸で一度仮遮断を行います。
仮遮断によって生じる遮断前後の血圧変動を調べ、手術の可否や結紮程度の検討を行います。

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血圧の変動は、血管に直接計器を設置する観血的測定法による測定が必要となります。これによって仮遮断の血圧変動をリアルタイムにかつ正確に評価することができます。
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下図は、仮遮断後の造影検査を示した写真です。画面の右側から注入された造影剤が門脈を通って全て肝臓に入り込んでいることを示しています。仮遮断によってシャント血管が適正に遮断できていることが確認された後に、血圧変動の程度に合わせた部分結紮術を行い手術を終えます。その後、約1ヶ月で2回目の結紮を行い、通常は二回目の結紮で手術を終えます。
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最後に
ブリーディングレベルや獣医師の診断レベルでの、知識や技術の向上によるものなのか、近年になって典型的な門脈シャント症例は減少しているように思われます。一方で『隠れシャント』と呼ばれる、一見健康体で症状が中長期的に出ない症例も多く存在することが報告されています。門脈シャントの臨床症状は無症状から消化器症状、発作まで様々で、症状だけで本疾患を疑うことは難しい場合が殆どです。絶対的な方法ではないものの、一年に一度は定期的な血液検査等を受けて、他の疾患同様に、初期の変化をできるだけ早期に見つけることが大切といえます。

 

 

 

猫の網膜剥離(高血圧性)

高齢の愛猫が急に目が見えないような仕草を取った場合、高血圧性眼症を疑う事ができます。高血圧性眼症は網膜剥離や眼内出血を主な症状とし、高齢で急性に視覚低下を示すという特徴があります。

高血圧性網膜症の診断
○収縮期血圧が180mmhg以上である
○高血圧性網膜症を認める(網膜血管の蛇行や点状出血や出血、網膜浮腫や剥離)
○高血圧性脈絡膜症を認める(脈絡膜の虚血、漿液性網膜剥離)

高血圧性網膜症の原因
○本態性高血圧症
○続発性高血圧症(慢性腎不全、甲状腺機能亢進症、心疾患、副腎疾患、糖尿病)
○眼内腫瘍
○ブドウ膜炎

高血圧性網膜症の治療
高血圧性網膜症の基礎疾患となる疾患を先に探します。基礎疾患が認められた場合、高血圧に対する治療と基礎疾患に対する治療を平行して行います。基礎疾患が存在しない場合、本態性高血圧症として治療を開始します。網膜剥離が合併している場合、剥離からの時間経過とともに視覚回復の可能性が低下すると考えられています。一般的には剥離後数日内に剥離の整復が望ましいとされていますが、数週間剥離が続いてしまった後でも視覚回復ができる可能性もあるため、本疾患が疑われた場合は、まずは視覚回復を目指して適切な治療を試みることが大切となります。

治療の第一選択
○アムロジピン:0.625㎎/head 一日一回(開始量)
2日毎に血圧の測定ならびに網膜の状態、視覚の評価を行います。低血圧症(治療の副作用)に注意をしながら必要に応じて補液等行いながら最大に1.25㎎/head一日2回まで漸増していきます。

○血圧が十分に低下しない場合や長期的な予後改善の目的でACE阻害剤を併用する場合もあります。

動物も人も加齢に伴い視覚が低下していくことは自然の理として仕方のない場合も多くあります。しかし、猫といいう動物の場合、腎不全や甲状腺機能亢進症など比較的多く遭遇する疾患によって、二次的に視覚低下を起こしている場合も多く、初期段階で診断ができれば視覚の維持が可能な事もあります。加齢と判断する場合に一度動物病院を受診してみることをお勧めいたします。

猫のぶどう膜炎

愛猫の目の色が濁っていたり、赤いと感じた場合はぶどう膜炎という病気を疑うことができます。何らかの原因により、眼球内のぶどう膜と呼ばれる構造に炎症が生じ、眼内の出血やフィブリンの沈着、網膜の浮腫や剥離などが生じてしまう疾患をぶどう膜炎と呼びます。ぶどう膜炎は長期化することによって続発性緑内障や白内障などの失明に至る合併症を出してしまう事があります。

 猫のぶどう膜炎の原因
外傷性ぶどう膜炎と内因性ぶどう膜炎に大別されます。

外傷性ぶどう膜炎
猫同士のケンカなどによる外傷や、角膜潰瘍、水晶体脱臼などに
内因性ぶどう膜炎
およそ70%で特発性とされています。次いで感染症(FIP、FIV、FELV、トキソプラズマ、バルトネラ)、や腫瘍等の基礎疾患が原因として報告されています。また免疫介在性疾患の存在も知られています。

 ぶどう膜炎の診断
角膜後面沈着物、光彩の腫脹、眼房フレア、フィブリン、網膜反射低下性病変、網膜浮腫や剥離によって診断します。除外診断(血液検査。レントゲン検査、エコー検査、尿検査、血圧検査、眼圧測定、感染症検査(IDEXX))によって、基礎疾患の診断を試みます。

 ぶどう膜炎の治療
基礎疾患が特定できた場合には、その治療をおこないます。約70%で特発性のため、ぶどう膜炎の治療は一般的に対象療法が中心となります。

○抗炎症治療:ステロイドや非ステロイド系消炎剤の点眼薬
○房水の流れの改善:副交感神経遮断薬の点眼薬
○感染:抗生剤の試験的経口投与
○角膜障害:ヒアルロン酸点眼剤
○眼圧上昇:炭酸脱水素酵素阻害薬の点眼薬

ぶどう膜炎は、特発性(原因の特定ができない)に発症することが多く、進行してしまうと失明に至ってしまう重い眼科疾患の一つです。臨床症状が軽度の場合、初期変化に気づけないこともあります。また、年齢の共に発生する白内障や各硬化症といった水晶体の変化に伴い目の色の変化を加齢性変化と捉えてしまう場合もあるかと思います。眼の疾患における眼球の変化には非可逆的なものが多く含まれることより、気になる変化があった場合には早めの受診をお勧めしております。