歳とともに高齢になると、体表にはイボを初めとした色々な種類のできものが出現します。そうした中で、できものの代表的な一つに皮脂腺腫という腫瘍があります。基本的には良性(悪性転換は稀)のため、放置していても殆どの場合で問題がないのですが、大きくなってくると以下のような問題を起こすようになります。
- 血液が滲むようになり、部屋のあちこちに血の跡が付着
- 脂汚れのような分泌物による、周辺皮膚の痒みや脱毛、臭い
- 臭いや痒みで一日中舐めてしまうことによる皮膚の舐め壊し
- 様々な程度の皮膚炎の合併
いずれも健康を大きく害する問題ではないものの、本犬の不快感は比較的強く、衛生的な管理を継続的に行う事も難しい場合もあります。高齢のコのよくある問題としては、日常の診療の中でも相談を受けることがお多い疾患の一つとなります。
一般的な対応方法
①清拭、消毒
数が少ない場合や、大きさが小さい場合には有効だが、数や大きさによっては限界がある。前足など舐めやすい部位では、清拭、消毒を続けてもいても舐めてしまうのを止めることができない。
②切除
一回で解決できるというのが最大の利点。しかしながら、基本的には麻酔や鎮静が必要で、高齢のコの場合には負担に。大きさによっては、局所麻酔で行うことも可能だが、処置の所用時間によっては精神的なストレスを与えてしまう。
③服やテープで舐めれないように保護をする
性格によっては有効だが、絶対に舐めたい子に対しては、ストレスが強い。また、管理において、清拭、消毒と同様の限界がある。
当院の取り組み
半導体レーザーによるできものの蒸散治療
半導体治療の治療原理は熱による蒸散なのですが、半導体レーザーが圧倒的に高い熱量を瞬間的に放出できるという特性がポイントになります。例えば、『けっこう熱い』ヤカンを長く触ってしまったら火傷をしてしまうと思いますが、『すごく熱い』ヤカンでも、瞬間的にパッと触れるだけなら熱さをそこまで感じないと思います。
瞬間的に高い熱量をできものだけに当てることで、『熱い=痛い』思いを最小限に処置することが可能です。瞬間的にしか触れないけど、熱量が高いので、充分にできものの蒸散作用を発揮するエネルギーを発揮できるのが半導体レーザー治療の特徴となります。
レーザー症例の一例

頸部皮膚の皮脂腺腫の一例です。出血傾向及び、できもの周辺皮膚の軽度の炎症によって頸を掻くようになってしまった事で来院されました。通常、できものは緩やかに増大傾向を示します。それに比例して併発症も増えるため、できるだけ小さいうちに小さく処置(少ない負担)する事をご希望されたためレーザー治療を適応としました。
レーザー処置の実際
極端な怖がり屋さんや、鼻や口の近くでない限りは局所麻酔のみで処置を行うことが可能です。飼い主の方々にも応援係を担当してもらいながら処置をしていきます。正常な組織にメスが入らないことや熱を使う処置であるため、菌の感染の心配がないことにより、厳密な無菌操作(=麻酔下)や抗生剤の投与が不要な点でも体に優しい治療ということができます。
処置後の経過

個体差やできものの大きさにもよりますが、通常2〜4週間程でカサブタが取れて治療が完結します。
まとめ
半導体レーザーを利用できるようになるまでは、当院においても全身麻酔下による切除や、局所麻酔単独での切除、テープで保護しながら消毒など、色々な方法で工夫をしながら対応してきました。しかしながら、いずれの方法にも利点と欠点があり、年齢を理由に治療ができないケースも少なからずありました。そうした中、半導体レーザー処置であれば、欠点が少なく、飼い主さんの目の前で、その場でパッと解決できる治療方法のため、体表の良性のできものに対しては、理想的な処置ということができると思います。
体表のできものでお困りの方がおられましたらお気軽にご相談ください。様々な選択肢の中からご愛犬、ご愛猫にあった最適な選択ができるようお力になれたら幸いです。
獣医師:伊藤












