看護師セミナー7 皮膚Ⅱ

こんにちは。看護師の坂本です。
今回は皮膚Ⅱを学んでまいりました。
今回は皮膚疾患の症状や疾患について、また薬浴と呼ばれるシャンプーの方法についてをまとめました。
皮膚疾患は内容にもありますが治療が長期になることも多いです。
知識や展望を知って治療にあたるか否かで少し考え方ややる気も変わってくるのではないかなと思います。
長くなってしまっておりますが、少しでも皆様のお力になれればと思います。

 

・・・以下内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

膚診察に必要な観察ポイント

皮膚診察時に注意しなければいけないのは、皮膚の疾患だと飼い主さんが思っていても、内臓や血液疾患、腫瘍などからも皮膚に症状が出る事があるという事である。 このため、皮膚のみの症状を訴えてきても先入観で診ずに全身状態も診る。

症状名、特徴
紅斑
毛細血管の拡張などによって出来る皮膚の発赤。各種感染症で発症
 白斑
原因は不明だが色素細胞の減少で起きる皮膚の白色化。治療は困難
 紫斑
赤血球の細胞外漏出=内出血。非炎症性では血小板減少症、凝固因子の異常、炎症性では血管炎などで発症する。
 色素斑(黒くなる)
先天的なものとして舌や歯肉が黒色化したり、後天的に病的な理由で色素が沈着することがある。炎症後の色素沈
着ではターンオーバー2回ほどで消失する事もある。
 水疱、膿疱
表皮や表皮下に水が溜まったものを水疱と言い、白血球(膿)が溜まったものを膿疱と言う。皮膚への刺激が原因で
なる事が多いが、各種感染等で出来る事もある。
びらん、鱗屑、痂皮
びらんは表皮部分の損傷で出血は少ないが、真皮以下にまでの損傷は潰瘍と言い出血量は多い。天疱瘡、アトピー
性皮膚炎などが原因になる。
ターンオーバーが早くなり、角質が大量に剥がれ落ちる状態を鱗屑と言いフケとも呼ばれる。アトピー性皮膚炎や
脂漏性皮膚炎などでおこる。
  苔癬化
炎症が長期にわたり繰り返して出来る、皮膚が厚くなりゴワゴワと象の皮膚のようになった状態。長期のアトピー
性皮膚炎や脂漏性皮膚炎でおこる。
 表皮小環
膿皮症の際に見られる症状。リング状に剥がれた痂皮が見られる。

皮膚科検査
皮膚掻爬検査
疥癬や毛包虫(ニキビダニ)、真菌の検出が出来る。病変部を鋭匙やメスで削り取ったものを顕微鏡で検査する。寄
生部位が深いので、検査時は出血するまで深く削り取る必要性がある。検査時には病変部、鱗屑脱毛、紅斑部を掻
爬し出血させるため、飼い主さんには事前に出血する事を伝える。
被毛検査
皮膚糸状菌、ニキビダニの検出をするとともに、毛周期を確認し脱毛の原因を探る。病変部の毛を抜毛、または抜
けている毛を顕微鏡で検査する。
 直接塗沫検査
細菌や糸状菌、寄生虫、腫瘍細胞検出をする。病変部に直接スライドガラスを押しつけ、ディフクイック等で染色
してから顕微鏡で検査する。
 培養検査
細菌培養検査と真菌培養検査の2種類がある。
細菌培養検査は、破れていない膿疱から無菌的に膿を取りだし(穿刺吸引)培養する。外注の検査になる。手の細菌
が入らないよう、グローブを装着して行うのが良い。
真菌培養検査は培地に病変部被毛などを埋め、培養する。結果が出るまで2週間はかかる。25度前後の場所で保
管し培養する。悪い菌がいた場合、培養して増えた菌が原因で肺炎をおこすこともあるので、培地の取り扱い、培
養後の菌の管理には注意する。
 皮膚生検
皮膚病の確定のために皮膚の一部を生検パンチやメスで切り取り採材し、ホルマリンで固定し検査センターへ送付
し検査する。局所麻酔や場合によっては鎮静などが必要になる。治りづらい皮膚病変、不明な皮膚病変の確定のた
めに行う事が多い。潜在性の感染症、腫瘤、自己免疫疾患なども検出出来る。
 アレルギー検査
血液検査でアレルギーの有無を調べる。原因の全てが検出されるわけではない。
 血液検査
内臓や免疫、内分泌異常からの皮膚疾患ではないかを判別する。

皮膚の代表的疾患
膿皮症
皮膚バリア機能の低下などにより皮膚の常在菌が増殖することによって発症。 夏場が多い。アトピー性皮膚炎の
子がなりやすい。抗生物質の投与、患部消毒やシャンプーによる洗浄で治療。周囲を毛刈りするとより良い。
マラセチア皮膚炎
常在菌のマラセチアの増殖が原因。シーズーやコッカ―など脂漏体質の子がなりやすい。主に前胸部、腹部、腋肘
に強い発赤と脂漏。抗真菌剤の投与、抗真菌剤配合や角質溶解のシャンプーによるシャンプーとコントロールが必
要。
ノミアレルギー皮膚炎
北海道にはほとんどないと言われているが、野良ネコなどでまれに発症。飼い主にも痒みがでる事がある。ノミの
駆除、生態系の断絶が必要。シャンプーやスポットで治療
アトピー性皮膚炎
アレルギー疾患のひとつで、遺伝的にアレルゲンに反応しやすい体質を持っている。皮膚のバリア機能の低下、異
常をおこす。主なアレルゲンはハウスダストマイト、埃やフケ、花粉などのどの環境中にもあるものである。発症
は3歳以下で痒み脱毛が見られる。春から夏にかけて症状が悪化し、北海道では冬にかけて症状が少し落ち着く事
がある。柴犬、シーズー、ウエスティ、ゴールデン、ラブに多い。合併症として膿皮症や外事炎なども引き起こ
す。ステロイドや免疫抑制剤の投与、シャンプーや保湿などで皮膚組織の正常化を目指す。完治することはない
が、症状の緩和、維持を図ることは出来る。
食物アレルギー性皮膚炎
たんぱく質や炭水化物が主体の食物成分のアレルゲンに過剰反応が起こることで発症する皮膚炎。アトピー性皮膚炎と症状が似ている。顔面や頭部、肛門周囲に痒みがあり、通年性に症状が出る。また下痢や排便回数の増加などの消化器症状を伴う場合もある。除去食試験で原因物質を特定し排除すれば症状は改善されるが、その除去食試験は 2ヶ月間指定されたフードと水のみしか口にする事が出来なく、途中でおやつなど他の物を食べた時点で試験が無効となってしまう。またアレルゲンは1つに限らなく複数個ある場合もあるので、食べられるものが制限される。
 皮膚糸状菌症
人にも感染する人獣共通感染症である。動物では痒みが少なく頭部や四肢の脱毛をするが、人では痒みがある。犬よりも猫の感染が多い。タオル等からも接触感染するので人ももちろん同居動物や、院内感染に気をつける。抗真菌剤の内服や抗真菌剤配合のシャンプーを使用する。シャンプーは全身でなくても、病変部位を局所的にシャンプーするのでも効果的。
 疥癬
一時的に人にも感染することがあり、皮膚疾患の中では最も痒みが強い。ヒゼンダニの感染で発症。感染している他動物と接触することで感染する。犬で腹部、前胸部、耳介辺縁。猫で顔面頭部に発症する。イベルメクチンなどの駆虫薬の投与で治る。同居動物がいる場合は同時に行う。
毛包虫症
アカラスともいう。常在寄生しているニキビダニが、免疫の低下により毛包で増殖し炎症をおこすことにより発症する。脱毛のみの場合や皮膚が自壊する場合もある。また産後に母子感染もおこす。子犬の発症では免疫機能が完成される1歳齢までに自然治癒することが多い。他疾患や環境変化、老齢によって免疫が低下した動物の感染が多い。イベルメクチンなどの駆虫薬を投与。感染がある場合は抗生物質も同時投与する。人の毛包にも寄生していると言われている。
 内分泌異常
甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症(クッシング)によって脱毛などがおこる。
皮膚科に必要な看護
皮膚の治療は簡単に治るものから長期治療が必要なもの、生涯付き合っていかなければいけないものまで様々で、長期治療が必要な場合はホームケアも非常に重要になってくる。一進一退で長期化している場合は、飼い主のモチベーションも低下してくるので看護師が励まし一緒になって治療を行ってあげる事が必要である。また、動物達は痒みを我慢することが出来ないので、痒みが減るまでの間に自分の爪で傷をつけたりなどの自傷行為を予防するよう指導アドバイスする。服を着せる、カラーをする、爪を短く丸く保つなどその子に合った方法を提案してあげる。また温まると痒みが出る子もいるので冷却療法を提案したり、環境のどこかで痒みが強くなる瞬間がないかなどの、環境配慮も気にしてあげる。根本解決にはつながらないが、掻くどころじゃないほど遊んだり出かけたりして他の刺激を与え夜疲れて寝てもらうような方法もある事を頭に入れておく。何より必要な事は、皮膚疾患にも様々なパターン、飼い主さんの環境、状況があるのでその子にあった看護を考える必要がある。病変がわかりやすいため、愛犬猫の変化に戸惑い苦悩している飼い主さんも多い事を理解し、些細な変化に気付く心が必要。
シャンプー療法
皮膚科診療においてシャンプー療法は薬物療法よりも重要である事が多い。内服量を減らす事が出来たり、皮膚の洗浄や正常化をすすめる事が出来る。しかしシャンプー療法は基本的に自宅管理になるため、飼い主さんに負担を強いる事も多い。このためどのくらい頑張れるかはしっかり話し合って始める。
シャンプーの指導は看護師が行う事が多い。また院内で薬浴をする際も基本的には看護師が行っている、獣医師と一緒に何がその子にとって良いのかを考えて行う事。 シャンプーにも保湿系、抗菌系など様々な種類があるので、その子には何を使用しているのか何を勧めるべきなのかが選べるよう覚えておく必要がある。シャンプーをする意味、薬用の意味をしっかり理解し、普通のシャンプーとは少し異なる薬浴シャンプー方法を指導する。

①被毛、皮膚を水または温水でしっかり濡らす。
温度が高すぎると皮膚に刺激を与えてしまうので、少し冷たいかなと思うくらいの低めの温度にする。小型犬で5分以上時間をかけてしっかり濡らす。被毛の長い子や柴犬などの密毛の子、大型犬は10分以上など時間をかけてしっかりと濡らす。
②シャンプーを手に取りなじませ、症状の重いところを中心にやさしく揉みこむ。泡立ててから身体にのせるのが一番良いが、身体で泡立てても良い。強くこすりすぎると皮膚を手で傷つけてしまうので注意。自分の手にハンドクリームを塗るような感覚で優しく揉みこみ皮膚にシャンプーの薬液をしみこませる。
③10分間浸透させる。これが一番のポイント。効果を正しく発揮させるためには薬剤を10分間皮膚に付けた状態で保つ事が大切。そのため症状が悪いところからシャンプーを始めると良い
④泡が無くなるまでしっかり流す。残っているとそれが原因で皮膚炎を起こす事がある。5~10分かけて、絶対にない状態まで洗い流す。
⑤やさしく乾かす。皮膚が特に悪い子はタオルの刺激も悪化の要因になるので上から押さえつけて水分を吸収する。ドライヤーは状況による。よっぽど嫌がるようであれば、自宅シャンプーが困難になってしまうのでしっかりとタオルドライをし自然に乾燥させる。ドライヤーを嫌がらずにさせてくれる場合は、温風で長時間皮膚に当てないよう注意する。温風と冷風を使用しなるべく皮膚に刺激にならないようにする。
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いかがでしたでしょうか。
皮膚の疾患は様々で悩むことも多いと思います。
シャンプーの仕方などでも、少しでも悩むこと、不安なことがありましたらお気軽にお声掛けください。

看護師 坂本恵