看護師通信

看護師セミナー22 生殖・繁殖

こんにちは。看護師の坂本です。既に現役は退きましたが、これまで勉強してきた
内容の更新が後少しで完了するため、このままもうしばらくお付き合いください。

今回は生殖・繁殖学まとめております。
生殖器の疾患は、避妊去勢手術をしている子が多いので、あまり多く出会わない疾患ですが、多くないからこそ生殖器についての知識、疾患の症状を詳しく理解して、いつでも看護できるようにしておかなければと思い、今回勉強しまとめました。

以下内容
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生殖・繁殖
生殖器系は、卵子や精子といった生殖子やホルモンを産生する生殖腺、副生殖腺、生殖管など生殖に関連した体表の構造や、外性器からなる。

雄の生殖器

精巣
犬で生後30日、猫で生後20日で腹腔内から鼠径輪を通り陰嚢に収まる。精子形成には体温よりも4~6度低い温度を要し、陰嚢の温度調整のために壁の厚さや位置を変えるなど伸縮性がある。精巣は総鞘膜と言う硬く強い膜に包まれている。精巣の中には精子がつくられる精細管という管が張りめぐり、精祖細胞や精母細胞など精子のもとになる細胞と、セルトリ細胞という細胞に栄養を与える細胞などが混在している。精細管同士を埋める結合組織にライディッヒ細胞があり、アンドロジェンを分泌している。

精巣上体
精巣の長軸にそってある細長い臓器で、精子が流れる。頭部、体部、尾部に分けられ、精子は精巣上体を通過する間に成熟し、尾部で貯蔵される。

精管
精子を尿道へ届ける管で、鼠径輪から腹腔内に入り、前立腺を通って尿道へ行く。

副生殖腺
副生殖腺は動物種によって異なり、犬は精管膨大部と前立腺、猫は前立腺と尿道球腺をもっている。特に犬の前立腺は良く発達しており、腫大すると排便困難をおこす。前立腺は膀胱の尾側にあり、尿道球腺は骨盤内にある尿道の尾側にある

陰茎
尿道を備える外性器であり、交尾器。陰茎根、陰茎体、陰茎亀頭からなる。陰茎亀頭は包皮に包まれている部分で、犬の陰茎亀頭は根元の膨らんだ部分である亀頭球と先端の伸びた部分である亀頭長部にわかれる。亀頭球は尿道海綿体という血管の一部があり血液を貯留し膨らむ事が出来る。犬の陰茎の中央には尿道に被さるように陰茎骨が存在する。猫の陰茎は短く、頭側を向く犬の陰茎とは異なり、尾側を向いている。猫の陰茎骨は非常に小さく、レントゲン画像でも存在確認が困難な事がある。

雌の生殖器

卵巣
卵巣は腹腔内に左右一対あり、腹膜や脂肪などの結合組織に包まれている。エストロゲンというホルモンを分泌する。卵巣は頭側に伸びる卵巣提索によって腹壁に固定されている。卵子の発育の場となる卵胞や、卵胞が変化した黄体と呼ばれる組織がある。卵胞はその発達の度合いによって徐々に大きくなり、液体を貯留するようになる。黄体ではプロジェステロンとエストロゲンというホルモンを分泌する。

卵管
卵巣を構成する膜のなかを走る細い管で、卵子を子宮に運ぶ。卵巣に直接つながっていなく、卵巣の表面から排卵される卵子を受け止めるように、卵管の先端が漏斗状に広がっている。ここを卵管漏斗部と言い、膨大部、峡部と続き子宮に連結している。

子宮
子宮は受精卵が着床し、胎盤を形成して分娩するまで胎子の発育の場。卵管側から、左右に一対存在する子宮角、両方が合流した子宮体、子宮体の尾側で子宮壁の筋が厚く発達している子宮頸からなる。子宮頸部の内腔は他の部位よりも細くなっており、子宮頸管という。


円筒状の器官で、陰茎を受け止める交尾器であり、産道でもある。骨盤腔に存在しており、直腸と尿道の間に位置する。膣前庭は膣と外陰部の間にある空間で、生殖器と泌尿器が合流する部位で、副生殖腺の前庭線が存在する。

外陰部
陰唇と陰核からなる。陰唇は体外に面している部分で、発情中の犬は腫れるが、猫では大きな変化はない。左右の陰唇が腹部正中で結合した部位の奥にあるくぼみを陰核窩とよび、この中に陰核がある。

乳腺
乳腺は特殊化した汗腺で、乳汁を分泌する。腹側にあり、複数の乳房を形成する。犬猫は、胸部、腹部、鼠径部に左右一対存在するが、動物種によって乳房の数が異なる。一般的には犬で5対、猫で4対である。エストロゲンの作用で増殖し、プロジェステロンの作用で発達する。乳汁分泌はプロラクチンとオキシトシンの作用による。

繁殖

性成熟
目安は小型犬で生後8~10ヶ月、大型犬で10~12ヶ月、猫で6~10ヶ月と言われて、シャム猫は他と比べると早いと言われるなど、品種や成長期の栄養状態、飼育環境の影響も受けるので、個体差がある。

発情期
雄は性成熟を迎えるといつでも繁殖可能な状態になるが、雌は発情期があり発情期以外では雄の許容も妊娠もしない。犬は繁殖期に一回だけ発情を示す単発情動物で、6~10ヶ月感覚で発情を繰り返すが、個体差がある。7歳を過ぎると発情周期が不規則になる傾向がある。
発情周期は4つに分けられる。
・発情前期
平均8日続き、外陰部の腫大、充血、発情出血が見られる。落ち着きがなくなったり、排尿回数が増え、雄を引き寄せるが交尾は許容しない。スメア検査では角化細胞より有核上皮が多く、赤血球もみられる。
・発情期
平均10日続き、開始から48~60時間後に排卵がおこる。雄を許容するようになる。外陰部が柔らかくなり、排卵後から収縮し始め、出血減少する。スメア検査では角化細胞が多くみられる。角化細胞が7~8割になった時点で交配指導を行う。
・発情休止期
妊娠の有無にかかわらす約2ヶ月間続く。黄体からプロゲステロンが分泌される。この期間に偽妊娠になり乳汁の分泌や巣作り行動をする事がある。
・無発情期
6~9ヵ月。この時期の長さにより周期が決まる。スメア検査では○で円形有核上皮が主。

猫は特定の時期に数回の発情を繰り返す多発情動物であり、決まった時期に繁殖する季節繁殖動物でもある。日照時間により時期が異なるが、日本の外猫は1~8月中旬が繁殖季節。しかし、完全室内飼いだと日照時間が長くなり、年中発情をおこす事がある。交尾すると排卵が誘発される交尾排卵動物で、排卵は交尾後24時間前後におこる。発情周期は不規則だが、3~4週の間隔で2~3回繰り返す。その後1~2ヶ月あいてから次の発情がおこる。発情が始まると、独特の声で鳴き、人にすり寄ったり、排尿回数が増える、背を低くし足踏みする、外陰部から少量の液体が出る等の発情徴候が見られる。

外来・入院で発情中の動物がいる場合は、他の動物を近づけないよう配慮する。性ホルモンの関与する疾患を防ぐため繁殖を望まない場合は、去勢避妊手術の必要性を伝える。

生殖器診察
問診
品種、年齢、不妊去勢手術の有無、交配出産歴、最終発情時期、現症状歴(急性慢性、進行度の確認を含む)、排便排尿の状態確認
視診・触診
陰嚢陰茎の状態、潜在精巣の有無、外陰部の状態、腹部の状態、乳腺の状態、全身症状
直腸検査・尿検査
超音波検査・血液検査・レントゲン検査・内視鏡検査
精液検査・膣スメア検査
病理検査・微生物検査
のいずれかまたは組み合わせて、正常なのか否かを判断する。

代表的な疾患

潜在精巣
両側または片側の精巣が陰嚢内に下降せずに、腹腔内や鼠径部にとどまってしまう状態。
停留精巣、陰睾とも呼ばれる。片側性に生じる割合が高く、猫よりもトイ犬種での発生率が高い。遺伝性の疾患であることが明らかになっている。精子形成は体温より4~6℃低い温度条件が必要なため、腹腔内や鼠径部にある精巣では性ホルモン分泌は行われるが、精子形成は行われない。潜在精巣は下降精巣に比べて未発達のままだが、高齢になると下降精巣に比較し精巣腫瘍を10倍以上発症しやすい。仔犬、仔猫が来院したら8週齢までに陰嚢内に精巣が下りてきているか確認し、潜在精巣の場合早期の摘出手術が必要であることを家族に告げ、今後の対応について話し合う必要がある。
精巣腫瘍を疑う場合、精管がマージンとなるため精管の長さを十分に取る。
精巣腫瘍には、精上皮腫(セミノーマ)、間質細胞腫(ライディッヒ細胞腫)、セルトリ細胞腫がある。セルトリ細胞腫では、陰茎委縮、脱毛、悪性貧血などをおこす場合がある。再生不良性貧血を発症する場合があり、重篤化で死に至る疾患のため注意が必要。

前立腺肥大
前立腺が主題した状態。良性前立腺過形成、前立腺膿瘍、前立腺の扁平上皮化生、細菌性前立腺炎、細菌性前立腺腫瘍、前立腺周囲膿疱、前立腺腫瘍があるが、犬では良性前立腺過形成が最も多く、加齢性。前立腺が肥大すると、排尿障害、排便困難、後肢跛行、疼痛などの症状が出ることがある。良性の肥大であれば去勢を行いホルモン分泌が無くなると、12週までに縮小し、症状も良化する。前立腺腫瘍は悪性腫瘍で予後は悪い。

子宮蓄膿症
子宮内膜の膿疱性増殖を伴った子宮に、二次的に細菌感染がおきて子宮内に膿液が貯留する疾患で、犬では中高齢以上でみられることが一般的。全身感染症。加齢の未経産の雌で発症リスクが上昇する。猫は交尾排卵動物のため、黄体期になる機会が少ないため発症も少ないが、発症は若齢期に起こるものが多い。発情出血開始1~2ヶ月後の黄体移行期での発症する。
外陰部から分泌物が排泄されるか否かにより、開放性か閉鎖性に分類される。多飲多尿、食欲不振、抑うつ、嗜眠、嘔吐、腹部膨満が主な症状で、敗血症が生じ細菌毒素により多臓器不全(DIC等)に発展した場合は死に至る。一般的に閉鎖性の方が疾患の発見が遅れがちで重篤化してしまう。治療は基本的には卵巣子宮全摘出術で外科摘出を行う。術前には、抗菌薬治療、腎機能の改善、体液補正・電解質補正のための静脈内輸液を行う。外科治療が困難な場合や、内科治療を希望された場合、開放性であれば、プロスタグランジン製剤やアグレプリストン製剤を投与し、子宮内容物の排液を試みるが、閉鎖性では子宮破裂の可能性があるため、勧められない。内科的に治癒されても、次回発情の黄体期に高確率で再発症するので、注意し、伝えておく必要がある。
エコー検査で子宮水腫、子宮蓄膿症の区別をする。
閉鎖性の場合は、子宮が破れやすくなっており、破裂する危険性が高いため、抱き上げたり、保定する際には腹部の圧迫に十分注意する。陰部からの排泄があまりに多い場合は、おむつ等をして管理する。その際には頻繁に交換を行う。全身と陰部を常に清潔に保持する事が治癒を促進し、二次感染の予防にもなる。
外科摘出後は、抗菌剤の耐性の有無を調べるため培養の検査や腫瘍化していないか病理検査を行う。卵巣腫瘍もあるので、摘出後は卵巣を傷つけていないか確認する。

偽妊娠
妊娠していないにも関わらず、著しい乳腺の腫大や乳汁分泌、営巣行動などがみられる状態で、約2ヶ月維持される。腹部膨満、食欲不振、神経質や攻撃性の増大、おもちゃをかわいがるなどの症状がみられることもあるが、その個体により程度は様々。乳汁の吸引刺激などでプロラクチン分泌が持続してしまうため、偽妊娠の間は乳腺部や腹部周りの接触は最低限にする。
偽妊娠は生理的な現象であるため、特別な治療は行わない事が多いが、症状の強い動物にはホルモン分泌を抑える薬物を使用したり、卵巣子宮摘出術を勧める。
必ずしも偽妊娠をするわけではなく、むしろ偽妊娠をしない個体も多い。

乳腺腫瘍
乳腺に出来る腫瘤。良性腫瘤と悪性腫瘤(乳腺癌)があり、犬では50%、猫では8~90%が悪性。発症年齢平均は10歳以上で、若齢で卵巣子宮摘出を行った動物での発生が少ない。初回発情が起こる前に卵巣を摘出することで、発生頻度を低下させる事が出来るため、繁殖を望まない場合は勧める方が良い。治療は転移がみられない場合は、外科的な腫瘍の摘出を行う。悪性腫瘍の場合は、乳腺の全摘出をした方がその後の再発をある程度防止できると考えられている。ただし、炎症性乳がんの場合摘出しても、しなくても予後不良の場合があるので注意が必要。
保定を行う際は、乳腺部に痛みを生じている場合があるため、圧迫しないように注意する。
乳腺腫瘍の片側全切除では動物の疼痛看護だけではなく、創傷部が大きく切除後の傷が大きく残る。なぜ手術を行うか、傷が大きくなるかを十分に説明し、飼い主が理解したうえで手術に挑めるように、ショックを受け止められるように事前の準備が必要。
肺転移している場合もあるので、術前の検査ではレントゲン画像の評価も行う。細胞診では、良性所見でも、病理検査で悪性のこともあるので、針生検で良悪は判断できない。
抗がん剤はあまり効果が認められないことが多い。

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いかがでしたでしょうか。

生殖・繁殖学に関しては、なかなか勉強する機会がなかったので、今回生殖器についてしっかり学びなおすことが出来ました。
今後もみんなで生殖器疾患についてもっと理解を深めていきたいと思います。

看護師 坂本恵

看護師セミナー21 脳・神経系

こんにちは。看護師の坂本です。
今回は脳や神経系ついてまとめております。
脳神経系と聞くと、難しい疾患のイメージが強いと思いますが、実はてんかんやヘルニアなど疾患も脳神経系疾患に含まれます。
脳や神経のことを少しでも詳しく理解できれば、症状にあった看護や初期症状を見逃さず治療に入ることができるので、今回勉強しまとめました。

以下内容
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脳、脊髄は局在性があり、症状から障害部位の推測が出来る場所であるので、問診の段階で、発作など緊急性の高い状態なのかなど、注意深く問診を行う事が重要になる。頭蓋内の異常は全身症状になったり、数週間内に命にかかわる事も多いので、状況の把握、説明をきちんと行えるように学んでおく必要がある。また麻痺や意識障害を起こしたり、重篤な合併症を引き起こす可能性もあるためしっかり知識を持って看護する事が求められます。確定診断や外科治療には特殊な機器や手技が必要になるため、どこまで可能なのかを知っておく必要があります。神経が過敏になっている事も多いので、触る時、保定の際には十分注意して触れるようにし、その患者がどの程度のストレスを抱えているのか組んで上げるようにします。
神経系は中枢神経系と末梢神経系に分けられる。中枢神経には脳と脊髄に分けられ、末梢神経は脳から繋がる脳神経や、脊髄から繋がる脊髄神経、交感神経や副交感神経が含まれる自律神経、体性神経などに分けられる。

中枢神経系:脳
脳は大脳、小脳、脳幹に分けられる。中でも脳幹は、間脳、中脳、橋、延髄に分けられる。脳と脊髄は3層の髄膜に覆われている。外側から硬膜、クモ膜、軟膜で、クモ膜と軟膜の間には脳脊髄液が流れる。脳脊髄液は脳や脊髄内を循環し、脳実質との物質交換や代謝物運搬をする。また、衝撃に備えクッションの役割をしている。動物により大きさが異なる。
大脳
脳の中で最も大きく、学習、知覚、認知、運動、感覚など高次機能に係る。大脳皮質がこれらを司っており、皮質の内側に髄質、その下に大脳基底核があり随意運動や急速眼球運動の調節に重要。人は大脳の機能局在(機能が特定の場所に配置されている場所)が100%わかっているが、動物は100%ではない。大脳にある、大脳辺縁系の海馬と呼ばれる場所が、脳組織の中で最も痙攣発作を生じやすい部位と言われている。
小脳
大脳の尾側に位置し、嗅覚以外の全ての感覚に関わっている。身体のバランスや姿勢の制御などにも係る。筋肉の動きの微調整などを行っているため、小脳を損傷すると身体が適切な動きができなくなり、運動失調になる。脳幹 間脳、中脳、橋、延髄、また視床下部も含む。視床下部は自律神経活動を調節し、その下部につながる下垂体とともに内分泌にも係る。脳幹は、呼吸、心臓、嚥下など生命に直接かかわる基本機能を維持する働きをしているため、損傷すると呼吸器系、循環器系が機能不全をおこし死に至る。末梢神経である脳神経の多くはここから生じている。

中枢神経系:脊髄
延髄から第7腰椎にある馬尾まで続く神経の束で、脊椎の中央を通る脊柱管の中にある。馬尾は脊髄ではなく、末梢神経の集合のこと。上から頸髄、胸髄、腰髄、仙髄、尾髄に分けられる。3層構造の内容は脳と同じ。脊髄の働きは、皮膚や深部組織、筋肉、内臓など各器官にある受容器から入った情報を脳に伝え、それに対し脳から出された指令を効果器に指令を出す。脊髄には椎骨間から出る31対の脊髄神経があり、脊髄神経の腹側に運動神経、背側に感覚神経となっている。脊椎の下方約4分の3の位置で終わり、そこからは馬尾となって髄腔に浮かび、馬尾は下肢の運動、感覚を伝える。

末梢神経:脳神経
脳から繋がっている、12対の神経。それぞれ固定された様々な役割がある。

末梢神経:脊髄神経
脊髄の各分節から左右1対ずつ、椎間孔を通って全身に分布する。頭に近い脊髄からは主に前肢に、尾に近い脊髄からは主に後肢に作用している。このため、脊髄のどの部分が損傷を受けると、どこに麻痺を生ずるのかを知ることが出来る。損傷を受けるとそこから下の脊髄には脳から指令が届かなくなるため、対応する部位に麻痺が生じる。損傷部位が頸部に近くなるほど、麻痺がおきる箇所が多くなる。

末梢神経:体性神経系
運動神経と感覚神経にわかれる。感覚器で得た情報と脳から伝えられた情報の伝達を行う。反射もこの神経の一部である。

末梢神経:自律神経系
不随意で行われている身体の機能に関わる。作用の違いにより、交感神経と副交感神経にわかれる。この2つは互いに拮抗する働きをしており、それぞれの神経が同一の器官に繋がっていて、その働きを調整している。

診断に必要な事

正確な問診
年齢、品種、いつから、急性、慢性、経過、悪化の有無、きっかけ、原因など。緊急度の判断や予想できる可能性の検査準備などを行う事が出来る。多くの疾患はここから予想する事が出来、獣医師はもちろんの事、動物看護師も予測する事は可能である。
一般身体検査
保定が非常に重要。痛みがある場合もあるので、安全に行う
神経学的検査
必要器具は鉗子、打診器、ライト。
意識状態
正常なのか、どちらかの反応が鈍い等があるのか、昏睡状態に陥っていないかなど。また意識、反応があっても眼振がある場合もあるので顔面神経の動き、偏りとともに判断する。沈鬱状態にある場合は家でもなのか、いつからなのかを確認する。
知性、行動
排泄の失敗、攻撃性など性格の変化、徘徊、咀嚼運動の変化、食欲の異常亢進、学習能力の低下、痴呆などがあげられる。これらは家族からの問診が重要になる。大脳など前脳、頭蓋内病変が疑われる。
姿勢、歩行
どちらかに傾斜したりふらつく、旋回などがないか確認する。歩行時には一定のリズムで真っすぐに歩けるかの確認。また頭の位置、尾の位置、名前を呼ばれた時に反応を示すかも重要になる。一見普通に見えても、体勢を変えると戻る事が出来なかったり反応が変わる場合もある。不全麻痺や完全麻痺の可能性もあり、他にも強い疼痛がある場合があるので注意して観察する。
不随意運動
律動的で規則的な身体の動揺(振戦)や遊泳運動、顔面の痙攣などの神経症状の有無。家で起こる場合は動画などを撮影してきてもらう。
触診
左右の対称性、緊張委縮状態、疼痛の有無の確認。
姿勢反応の評価
固有知覚反応(プロプリオセプション、CP):ナックリング、ペーパースライド。足の甲を反対にし床に置きすぐに正しい形に戻るか否か
踏み直り反応:触覚性、視覚性がある。触覚性は目を隠し足の甲に台が当たった時に自分で立とうとするか否か。視覚性は目を隠さない状態で同じ状況で立てるか否か。
跳び直り反応:後肢を浮かせた状態で前肢だけ台に乗せ、押して自分でしっかり前へ進むに合わせ交互に前肢を出せるか否か。また前肢後肢を逆にし同じ事を行う
立ち直り反応:床に寝かし自分で起き上がれるか否か(台の上だと落ちる可能性もあるので床で行う)逆立ちの状態にして前肢をちゃんと台に向けて出すか否か
四肢全てで姿勢反射の異常が認められれば脳疾患を強く示唆する。二つ以上異常であれば何らかの異常を疑う。前後肢同側の異常は同側の頸髄や脳幹の病変か、反対側の大脳病変の疑いがある。姿勢反応異常だけで部位の特定が出来るものではないが、異常をみつけ、領域の決定に重要な意味を持つ。神経系の異常か他の異常かを見るのに重要。
脊髄反射
膝蓋腱反射、ひっこめ反射、皮筋反射など様々な反射検査がある。打診器を使用し反射が行われるか診る。神経は上から抑制している。上位の中枢は下位の反射を常に抑制している。抑制している部分が壊れるとその下位は抑制が取れ反射の亢進をおこし、反射弓自体が壊れると反射が出来なくなり、麻痺または不全麻痺がおこる。
脳神経検査
総合的に判断するが、頭の中の病変を疑う時に行う。大脳の病変が疑われる場合は、意識、知能、知覚、聴覚、視覚に関わる神経の異常が出ている場合がある。脳幹の病変が疑われる場合は、意識障害、不全麻痺など脳神経の異常。小脳の病変が疑われる場合は、運動失調、歩行、前庭症状、瞳孔異常、頻尿などが異常な場合が多い。眼瞼反射や眼振、対光反射、開口、下の動き、嚥下など総合的に見て判断を行う。
深部痛覚
予後判定に非常に重要になる。他の刺激になってしまうので、最後に行う。爪の基部などの骨膜を鉗子などで強く持った時に、振りかえったり怒る、咬むなどの反応を示すか否か。ひっこめるだけでは反応したとは言えない。痛みを引き起こすので、随意運動が出来ている動物には行わない。不可逆的なことが多いので注意する。
その他
必要に応じて、脳脊髄液検査、CT検査、MRI検査などを行うがいずれも全身麻酔が必要となるためよく相談してから行う。

代表的疾患

椎間板ヘルニア
犬の椎間板疾患の66~86%。脊椎椎間板の髄核が突出することによって脊髄が圧迫され強い症状を出す。ダックスなど軟骨異栄養犬種に多発する。ハンセンⅠ型という3~6歳と若齢で急性発症するものと、ハンセンⅡ型という高齢犬で慢性発症するものにわかれる。また椎間板ヘルニアにはグレード分類がある。
Ⅰ:疼痛、知覚過敏
Ⅱ:歩様、姿勢の異常。自力歩行が可能な不全麻痺
Ⅲ:自力歩行が不可能な不全麻痺
Ⅳ:完全麻痺、排尿制御失調、深部痛覚有
Ⅴ:完全麻痺、排尿制御失調、深部痛覚無
このグレード分類により治療法や予後を判断する。安静、体重減量、疼痛管理、内科的治療と外科療法が選択になる。

進行性脊髄軟化症
虚血性の壊死を起こし、麻痺発生後1週間程度の経過で死に至る。呼吸障害の可能性もある。

てんかん
てんかんには様々な種類がある。てんかん、発作は問診が重要。タイミングや状況、いつか、また既往症など。戻るまでどのくらいかかり、どう終わったのか、撮れれば動画を撮ってもらう事が大切。

突発性てんかん
突発的に痙攣のような発作を起こし、それが反復して認められる状態。シェパード、ビーグルなどでは遺伝性が確認されている。多くは比較的若い時期6ヶ月~3歳に初発発作がおきる。意識が消失し1~2分間続く発作が特徴だが、不随意なふるえ、筋硬直を初期症状の特徴とすることもあるので要注意。
焦点性てんかん
呼びかけに反応しない、どこかを見つめている、刺激に反応しない、自動症などの症状があり、単純部分か、複雑部分かによって意識障害の有無が異なる。
特発性てんかん
発作を起こしうる原因が特定できないてんかん。ある程度若い段階、5歳までに初発。画像検査でも正常。純粋には遺伝子が関与する。
構造的てんかん
大脳の器質的原因が存在する。脳圧が上昇する。

脳炎
細菌感染性脳炎はまれでウイルス感染が多い。犬では自己免疫が示唆される。壊死性髄膜脳炎や肉芽腫性髄膜脳脊髄炎などがあるが、その他原因の特定できない脳炎も多く認められる。

変性性脊髄症
コ―ギーで発症が多い。疼痛のない慢性進行性脊髄変性で、後肢麻痺から前肢麻痺、呼吸筋麻痺にいたり亡くなる。遺伝子変異が報告されており、人のALSの家族性と類似している。10歳前後で発症が多く、1~3年で死に至る事が多い。

水頭症
犬で多い中枢奇形で先天性水頭症は脳疾患全体の5%と言われている。チワワ、小型犬に多発。脳室に脳脊髄液がたまり、脳室が大きくなることで脳圧が上昇しそれに伴い障害が認められる。頭位拡大、泉門の開存・拡大、眼球が左右腹外斜視、視力障害、発作、旋回などの行動異常、不全麻痺など様々な症状がある。脳圧を下げる薬物療法、または外科手術で治療を行う

馬尾症候群
大型犬での発症が多く、椎間板ヘルニアや椎体不安定症が馬尾部で発症する。シェパード、ラブラドールなど特に5歳以上での発症が多い。伏臥位からの立ち上がりが遅くなり、走るや階段を登る事を嫌がるようになる。後肢の跛行やふらつきが悪化したり、重症化すると排尿、排泄機能異常が生じる。厳密な運動制限や鎮痛薬、抗炎症薬により症状の改善が見られる事もあるが、再燃する事も多い。外科手術も選択肢の一つ。

リハビリテーション
運動障害をおこす事のある脳神経系疾患においてリハビリは非常に重要なものとなる。基本的には術後1日目からリハビリを始め、同じ看護師が行う。必ず獣医師の指示を仰ぎながら状態を見ながら進める。術後1~3日目までを目安に、1日2回アイシングを行い起立位保持やサイクリング運動、足裏刺激等を合わせて行う。いずれも患部に負担をかけないで行う事が必須でやりすぎには注意する。リハビリテーションは毎日の積み重ねが大切であるので、獣医師、動物看護師だけが必死になっても上手くいきません。動物、飼い主が一緒になって出来るよう、無理のないプログラムを計画し、途中経過を把握し評価してモチベーションを維持できるよう行う必要がある。

抗てんかん薬について
年単位の継続治療が必要になり、基本的には生涯投与になることが多い。投薬による副作用がおこる場合があるので、定期的な検査が必要。様々な種類の抗てんかん薬があり、組み合わせて使用する事もあるが、効果には個体差があるので、必ずしも投薬開始により全ての発作がなくなるわけではない。

 

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いかがでしたでしょうか。

脳神経系は、疾患の初期症状や経過、予後も多岐にわたるので、疾患についてすべてがまとめられたわけではありませんが
少しでも参考になればと思います。
検査内容、検査の意味などを理解しきちんとした看護を全員で行えるようにしていきたいです。

看護師 坂本恵

看護師セミナー20 痛み・痒み・脱毛

こんにちは。看護師の坂本です。
今回は痛みや痒み、脱毛など症状についてまとめております。
これらの症状は、日常的におこりうる症状ですが、原因や詳細な経路、仕組みなどを理解できていないことも多いと思います。
それらを理解した上で、看護、治療ができればと思い、学びまとめました。

 

以下内容
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臨床動物看護学 痛み

組織が傷つき刺激される時の不快感、感覚的に実際に感じたり精神的な部分に起因する痛みもある。痛みは限界を教えてくれる、命を守る最重要シグナル。動物が痛みをかかえていることに必ず気付けるわけではない。しかし傷つく、痛みを感じる事のないように最善をつくすことは出来る。

痛みの伝達方法
刺激があった部分の細胞が壊れ、発痛物質が出る。
発痛物質が知覚神経の末端に達すると刺激が電気信号に変わる。
神経細胞が反応し、脳に伝わり痛み刺激として感じる。
この時、交感神経が優位になっている。

痛みに対する誤解、基礎知識
・非ステロイド系抗炎症薬は動物用薬であれば安全に使用されている。消化器症状や腎臓代謝のため、投薬中のモニタリングは怠らない。人用薬のイヴプロフェンやアセトアミノフェンの含まれる抗炎症薬は犬猫にとって禁忌または毒性が強いので、誤って投薬してしまったり、盗食誤燕しないように注意する。
・痛みを緩和すると動くから、痛いままにするという考えがあった時代もある。活動の制限が必要な場合にはケージレストなど他の手段があるので、痛みというストレスは取り除いてあげることが重要。患者、家族のQOLを上げるためにも必要。
・麻酔薬は痛みの認識を抑制するが、無意識状態でも侵害受容は生じているため、鎮痛作用はない。全身麻酔状態で発生した痛みは、麻酔回復とともに経験されるので、麻酔中の鎮痛管理も大切である。

痛みの程度分類(外科
・軽度~中程度:下腹部の外科手術、抜歯、橈尺・脛腓骨折、耳血腫など
・中程度~重度:下顎骨切断、椎間板手術、上腹部の外科手術、上腕部骨折など
・非常に強い痛:断脚、腎臓摘出、全耳道摘出、開胸術、頚椎椎間板手術、骨盤骨折、乳房切除など
痛みの程度に合わせた鎮痛薬の選択が必要。

痛みの種類
急性痛
急性炎症や外科手術により発症する痛み。鋭い痛みで持続は短時間。
心拍数の増加、血圧上昇、呼吸促迫、激痛で血圧低下する事もある。
慢性痛
骨関節炎や癌性痛などで発症する痛み。4週間以上持続するも。
進行に伴い痛みの症状が変化する。動物も痛みに慣れる部分もあり、痛みの評価が困難な事がある。長期の変化を丹念に観察する必要性がある。

疼痛の悪影響、問題点
食欲低下、睡眠不足、抑うつ状態、代謝異常、免疫抑制などが起こることがある。
また慢性化していることで、痛みに対する感受性が高くなったり、小さな刺激も痛みとして感じるようになる。刺激が無くなった後も痛みが持続してしまうことがあり、
結果として回復能力を妨げる要因になりうる。
ただ、人の疼痛表現と異なっていたり、痛みを表現しない場合もある。
疼痛の認識と程度の判定が困難なことが多い。
自宅での判定や飼い主の訴えも重要になる。

鎮痛薬の種類
局所麻酔
プロカイン、リドカイン、ブピバカインなど
非ステロイド性鎮痛薬
メロキシカム、カルプロフェン、ロベナコキシブ、オンシオールなど
麻薬
モルヒネ、ケタミン、フェンタニル、ペンタゾシンなど

痛みの強い疾患
断脚
前後肢に発生した悪性腫瘍に対して実施、または修復不可能な複雑骨折の際に実施。
悪性腫瘍には、骨肉腫、血管肉腫、メラノーマなどが含まれる。
複雑骨折とは、骨が皮膚を突き破り外界に出ている状態の骨折。複雑骨折だけならば修復可能だが、野良猫交通事故症例などで、長期間治療が行われず骨自体や骨折下肢が壊死しかけている状態だと修復不可能と判断せざるを得ない。
断脚は大きな神経も切断するため強い疼痛を感じるので強力な鎮痛処置を行う必要がある。断脚時、神経の位置を把握してから行う。

骨肉腫
大型犬に発症が多く、セントバーナードは遺伝性発生もある。
高齢になるにつれて発生率があがる。
四肢の長骨骨幹端の骨髄腔から発生し、外に広がっていく。橈骨遠位端、上腕骨近位端での発生が多い。
初期は間欠的跛行、その後患部の腫脹、疼痛、患肢骨折をおこす。
術後の転移率が高く、肺転移が最多。治療成績は悪い。
転移が認められる場合、化学療法よりも疼痛管理を優先する。

血管肉腫
骨原発の血管肉腫はまれだが骨転移として認められ、若い大型犬で多く予後は悪い。

臨床動物看護学 痒み・脱毛

痒みとは皮膚、眼瞼粘膜、鼻粘膜におきる、引っ掻き反射を引き起こす感覚、その部位を掻く、擦るなどの行動につながる不快な皮膚の感覚のこと
痒みが発生するメカニズムは、マクロファージがアレルゲンの侵入を察知し、細胞からIgEが産生分泌されることにより、肥満細胞が刺激されヒスタミンが分泌されたことを知覚神経が反応して痒み刺激が脳に伝わることで、痒みを認識する。

痒みが出る症状は、単純に痒がるだけのもの、脱毛性、丘疹のようなもの、赤くなる、臭いが強くなる、脂漏など様々な原因があって痒くなる場合がある。
ほかにも、虫の唾液成分や細菌、カビなど体の外からのアレルゲンの侵入を防ぐために、皮膚の乾燥防止も大きな対策のひとつ。
毛に隠れて痒みの原因が見えないことがあり、許可を得て毛刈りを行うことが望ましい場合もある。特に膿皮症の場合などは毛刈りを行ったほうが治療の反応が良いことが多い。

痒みの強い疾患として、ノミアレルギー、疥癬、犬毛包虫症、膿皮症、マラセチア、食物性アレルギー、アトピー性皮膚炎 がある。
動物が痒いことによる不眠やストレスは、動物自身だけではなく、飼い主家族にも精神的な負担になることを忘れてはいけない

脱毛とは毛髪量の減少のことで、ターンオーバーを繰り返す被毛が何らかの理由で成長、発育しない状態。また毛密度が50%以下の状態。
原因は栄養不足、毛周期異常、先天性、後天性、ホルモン性などがある。
部位も全身性のものから顔のみ、四肢のみなど局所性のものなど様々な脱毛パターンがある。脱毛にも正常なものがあり、犬の腹部や品種における先天性乏毛がある。
脱毛が生命維持に影響する事はないが、見た目の問題が大きくあり、治るまでまたは継続的な飼い主のケアが重要になる。

シャンプーによる皮膚治療
シャンプーにも様々な種類があり、皮膚や疾患の状況により選択する。
シャンプーの役割は、皮膚表面の汚れの除去、余分なフケや脂分の除去、皮膚表面に付着しているアレルゲンの除去、表面の微生物の増殖抑制、水分を与え保湿する、冷やすことにより痒みの抑制 などがある。
シャンプーには犬用シャンプーや猫用シャンプー、犬猫用シャンプーなどがあるので購入、販売、説明する際には注意する。
シャンプーの種類は抗菌性シャンプー、抗真菌シャンプー、角質・溶解性シャンプー、保湿シャンプーなど皮膚の状態を判断して選ぶ。
シャンプーの手順は皮膚Ⅱ参照

代表疾患については皮膚Ⅱ参照

 

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いかがでしたでしょうか。

過去にまとめた疾患や内容については、過去参照ということで省いてあります。
症状一つ一つを理解し、看護できるように、またお家での看護のアドバイスもできるようにしていきたいと思います。

看護師 坂本恵

看護師セミナー19 内分泌

こんにちは。看護師の坂本です。
今回は内分泌についてまとめました。内分泌疾患はホルモン疾患と呼ばれることもあります。
内分泌疾患は発症すると基本的には生涯治療が必要な疾患が多いです。
治療前に、または治療中の方も、どんな疾患なのか、どんな症状があるのか知ってみてください。

以下内容
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内分泌とは、体内で化学物質を産生・分泌する細胞から、直接血液中に化学物質が放出される現象で、内分泌系とは体内で分泌されるホルモンを産生・分泌している器官。下垂体、松果体、甲状腺、上皮小体、副腎がある。また卵巣、精巣、膵臓、胎盤は他にも重要な機能を持っているが、内分泌によってホルモンも産生・分泌している。
内分泌系の器官はいずれも小さく、細胞が直接または袋状に配列した内分泌腺と呼ばれる組織から形成されている。通常これらの細胞の間には豊富に毛細血管が分布され細胞と血管が直接接している。細胞から血液中に分泌されたホルモンは全身に運ばれ、そのホルモンが情報を伝達すべき標的臓器に到達し、そこで初めてホルモンが作用する。代謝変化や他のホルモンを分泌させるなどの働きをする。到達するホルモンがごく微量でも作用し、長期にわたっての作用が可能となっている。標的臓器以外に到達した場合では、極めて高い濃度であっても作用しない。様々に変化する体内外の環境に対応するためには、内分泌腺も微妙に変化させ標的の機能を調節し適応する必要がある。そのため内分泌系と神経系は互いに連絡・強調し合うことにより環境の変化に対応しているが、内分泌系にはフィードバック機構という単独で自身を調節する仕組みもある。
内分泌系疾患ではそれぞれの病気により検査、治療、看護方法が異なるので動物を十分に観察し必要にあわせた看護を行う。原因によっては、治療が長期間または生涯続くこともある。十分に治療、看護方針について話し合い相談する必要がある。

甲状腺の機能・構造
甲状腺は咽喉頭部に近い気管の外側に付着している。左右一対で中型犬でも縦5cm、厚さ0.5cm程度の小さい器官。濾胞細胞という細胞が袋状に配列した構造を持っており、その濾胞細胞が甲状腺ホルモンを産生・分泌している。分泌された甲状腺ホルモンはコロイドとして貯留され、必要に応じて血液中に放出される。濾胞間を埋める組織中にある傍濾胞細胞からは血中カルシウム濃度を低下させるカルシトニンというホルモンが産生・分泌されている。

甲状腺ホルモン
チロシンというアミノ酸とヨードから合成されている。食事中から摂取されるヨードはそのほとんどが甲状腺ホルモンの材料にされる。類似した作用をもつ、サイロキシン(T4)とトリヨードサイロ二ン(T3)という2つのホルモンがある。
甲状腺ホルモンの作用は、生体の代謝機能に対して様々な作用を持ち、体温の調節、体の成長、糖質・たんぱく質・脂質の代謝促進、心臓の代謝促進、皮膚の代謝促進などの恒常性に寄与している、全身の代謝を上げるホルモンである。

 

副腎の機能・構造
左右の腎臓のすぐ前方に位置する小さな器官。発生学的にも機能的にも全く異なる外側の皮質と、内側の髄質の2つの部分から形成されている。

副腎皮質
外側から球状帯、束状帯、網状帯という3つの層から形成され、それぞれ異なったホルモンを分泌している。これらのホルモンをステロイドホルモンといい、コレステロールから合成される。
球状帯では電解質コルチコイド(鉱質コルチコイド)というホルモンが産生・分泌されるがこれは1つのホルモンの名称ではなく、電解質代謝に対する作用が強いホルモンの総称。その代表はアルドステロンで血圧の調整なども行う。電解質コルチコイドは様々な作用を持つが、すべて血圧の調節に深く関与する。
束状帯では糖質コルチコイド)というホルモンが産生・分泌され、これも同様に糖代謝に対する作用の強いホルモンの総称。代表がコルチゾール。生体内の糖代謝の調節を行う。下垂体前葉で産生・分泌されるACTHにより分泌が促される。
網状帯ではわずかであるがアンドロゲンやエストロゲンなどの性ステロイドホルモンを産生・分泌する。

副腎髄質
神経組織から発生しており、交感神経節後ニューロンの細胞体に相当する。アミノ酸のチロシンから、アドレナリン(エピネフリン)、ノルアドレナリンを産生・分泌する。ストレスによって交感神経が興奮した場合に大量に分泌され、生体がストレスに順応できるようにしている。また血中ブドウ糖濃度の低下いよっても促進される。

膵臓の機能・構造
肝膵資料参照

代表的な疾患

甲状腺機能低下症
甲状腺から甲状腺ホルモンが正常に分泌できなくなる。犬で最も多くみられる内分泌系疾患で、猫ではまれ。原因のほとんどが、リンパ球性甲状腺炎や特発性甲状腺委縮、まれに腫瘍と言われている。まれに先天的なものもあるが、そのほとんどが4歳齢以上になってから発症する。特にゴールデン、ラブラドールなど大型犬での発生が高い。
症状は脱毛、膿皮症、脂漏性皮膚炎、筋委縮、肥満、低体温、活動量の低下など。脱毛はターンオーバーの低下が原因なので、痒みの伴わない左右対称の脱毛でだんだん黒色に色素沈着する。
治療は甲状腺ホルモン製剤の投与。食事療法。投薬は一生涯継続する必要があるため、薬剤量や投与回数は犬の状態や投与者の不安を考慮し選択する。
他の内分泌系疾患を併発している場合、投与に注意が必要。動物が肥満している場合には低脂肪食を与える。甲状腺機能低下症は、適切な管理をすればほとんどの症例で症状が改善されるが、生涯投与と、定期的な甲状腺ホルモン量の測定が必要になることをしっかり説明する。

甲状腺機能亢進症
甲状腺から甲状腺ホルモンが過剰に分泌される。7歳以上の高齢猫での発生が多く、犬ではまれ。甲状腺が腫瘍化することで発生する。98%が腺腫、2%が甲状腺癌。
症状は筋肉量の低下による体重減少、被毛粗剛、多飲多尿、活動性の亢進または虚脱、多食、腫大した甲状腺の触知など。嘔吐、下痢や食欲不振など消化器疾患と区別がつきづらい症状を示すこともあるので注意が必要。
治療は甲状腺ホルモン合成阻害薬(チアマゾール)の投与。外科手術。過剰投与された場合、甲状腺機能低下症の症状を示す。さらに血圧が低下し、腎臓の血流量も低下するため、隠れていた腎不全が顕在化することがあるので注意。外科摘出後、左右両方の摘出を行った場合、不足する甲状腺ホルモンを補うため、一生涯甲状腺ホルモンの投与が必要になる。適切な治療を行えば比較的症状が改善されることが多いので、途中で投薬を中止しないように、飼い主家族に対して十分に説明する。薬の投与が難しい場合には、ヨードの含有量が少ない療法食もあるので提案する。
過剰投与になっていないか、副作用が出ていないかの確認は毎回しっかり行い、定期的な甲状腺ホルモン量の測定が一生涯必要になることも合わせて説明する。

 

副腎皮質機能低下症
アジソンと呼ばれ、副腎皮質からの糖質・電解質コルチコイドの分泌が減少した状態。若齢から中年の雌犬で多く発症する。猫ではまれ。原因としては副腎皮質自体の破壊や萎縮が起こる原発性のもの、脳下垂体が原因でおこるもの、医原性のものがある。症状は電解質異常による低ナトリウム、高カリウム血症からの心機能低下、徐脈、心停止。その他にも嗜眠、ふらつき、体重減少、元気食欲不振、消化器症状など。両側の副腎が同時に障害を受けた時、突然の脱力、意識障害、ショックなど急性副腎不全をおこし、早急な治療が必要になる場合もある。治療は、急性型の場合は輸液とステロイドホルモンの投与。慢性型の場合は電解質コルチコイドの生涯投与。定期的な電解質の検査。またストレスが急性副腎不全の危険性を高めてしまうので環境を整えなるべくストレスのかからないよう生活を継続する事が大切。投薬の重要性をしっかりと伝え、投与ミスや吸収不良により再発する事もある説明も必須。

 

副腎皮質機能亢進症
クッシングと呼ばれ、糖質コルチコイドの分泌が過剰になった状態。7歳以上の高齢犬にみられることが多く、全ての犬種で発症するがプードル、ダックスフンドに多い。原因は様々だが、下垂体の腫大によるACTHの過剰分泌が80~90%。副腎の腫瘍化が10~20%に大別される。またステロイド性抗炎症薬の長期投与による医原性のものもある。
症状は左右対称性の脱毛、被毛粗剛、筋委縮、多飲多尿、腹部の下垂膨満、多食、石灰沈着、元気消失、パンティングなど。クッシング症候群の90%以上に多飲多尿がみられ、飲水量が体重1kgあたり50mlが1日の通常量で、1kgあたり100ml以上飲むようであれば、多飲と判断して良い。また症状の似ている、甲状腺機能低下症や糖尿病を併発する事もあるので注意が必要。
治療は、別の疾患により引き起こされている場合はその基礎疾患の治療が第一。内科療法として、トリロスタンの生涯投与。定期的なコルチゾール値の検査。副作用として低下し過ぎてしまいアジソンの症状が出ていないか注意が必要。副腎腫瘍の場合、外科的処置を行う事もあるが難しい場合が多い。水を切らさないように常に新鮮な水が飲めるようにする。脱毛等の皮膚の症状は、3~4ヶ月間しないと改善してこないことがある事をしっかり説明する。
アジソンと同様にストレスがコルチゾールの分泌に関与し、ストレスがかかると増えてしまうのでなるべく普段通りの生活を送れるように、ストレスがかからないように注意が必要。

 

糖尿病
肝膵資料参照

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いかがでしたでしょうか。

内分泌疾患は少々難しく、しっかり理解するのは大変かもしれませんが、理解していると病気の発見を早くすることができます。
様々な症状が組み合わさるので、難しい症状も多いですが、きちんと理解し
診察室だけではなく、いろいろな場所、タイミングで病気の発見を早めてあげれるようになりたいと思います。

看護師 坂本恵

看護師セミナー18 泌尿器

こんにちは。看護師の坂本です。
今回は泌尿器疾患についてまとめております。
泌尿器疾患は、膀胱、尿を想像される方も多いと思いますが、腎臓や尿管なども泌尿器疾患に含まれます。
高齢になってくると、膀胱炎や腎臓の疾患も増えてきます。
まだ疾患のないうちに初期症状を見逃さないためにも皆さんの役に立てればと思います。

以下内容
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泌尿器は腎臓で血液をろ過し、身体に必要なものを再吸収し、残った老廃物や不要物を尿として排泄したり、体内水分量や電解質、造血量などの調節機能、Ca,Pの代謝調節、ビタミンⅮの活性化機能など多くの機能がある。
泌尿器系疾患においてはいずれも進行すれば最終的に尿毒症となり、いろいろな臓器の機能が障害され様々な全員症状が発現する。
このため多くの場合は、一刻も早く全身的な治療を開始する必要がある場合がほとんど。
泌尿器疾患が疑われる場合には、排尿回数や量、尿の性状異常を確認するとともに、食欲や体重、貧血、チアノーゼなどにも注意し問診や看護を行う。
また循環器疾患などを併発している場合があるのでよく観察し注意する。
必要に応じて輸液を行うが、輸液中は常に動物を観察し厳重な管理を行う。輸液速度、排尿量、呼吸状態、浮腫などには特に注意が必要。
食事管理も必要な治療で、適切な処方食を与え、疾患にもよるが嗜好性の高いものを選ぶなどの工夫を行う。自由に新鮮な水が飲めるような配慮も必要。
原因によっては、完全な回復が期待できない場合や治療が長期間に及ぶ事があるので、疾患や治療に対する認識、理解力に合わせ、現在の状態や今後の見通しを説明し、治療継続や再発防止に協力してもらえるように支援する。しっかりと理解してもらってから治療できるように説明を怠らない。
泌尿器の構造

腎臓
腎臓は血液をろ過し老廃物を生体外へ排泄するとともに、pH、浸透圧などの調節を行う。
脊柱を挟んで左右一対あり、腹腔腰部に位置している。腎臓の位置や形は動物種によって多少異なるが、犬猫の腎臓は、右腎が左腎よりもやや頭側に位置し、そら豆型をしている。
腎臓には著しく大きな予備能力があるため、臨床症状が現れ血液の変化がみられるころにはすでに80%近くが障害を受けていると考えられる。
腎門から、尿管と尿管動脈、腎動脈と腎静脈、リンパ管、神経が通っていて、膀胱や血管など様々な臓器につながっている。
腎動脈は、腎臓の大きさに比較して非常に太く、体内で最も太い血管の一つである腹大動脈から分岐している。
腎臓の血管の流れは
腹大動脈→腎動脈→葉間動脈→弓状動脈→小葉間動脈→輸入細動脈→糸球体形成→輸出細動脈→毛細血管→小葉間静脈→弓状静脈→葉間静脈→腎静脈→後大静脈
となっている。血管では血液を送るのはもちろん、ここの毛細血管の内皮細胞ではエリスロポエチンという造血ホルモンが産生されている。
腎臓の内側は、腎門に続く空洞の腎洞と、尿の生成を行う腎実質の2つに分かれる。
腎洞 :尿管がロート状に広がる腎盤(腎盂)という嚢状の構造物がある。腎盤は、腎実質で生成された尿を受け取り尿管へと導く。
腎実質:内層の髄質と、外層の皮質から形成される。両層にまたがってネフロンと血管およびネフロンが生成した尿を腎稜まで導く導管がある。基本的にはネフロンの集合体。
髄質の腎盤側を腎稜といい、腎盤に合わせて凸状をしている。腎実質で生成された尿の出口が開口している。

ネフロン
腎実質の中にある腎臓の構造的機能単位で、1個の腎小体と、1本の尿細管で形成されている。ネフロンの1個1個がそれぞれ尿生成を行っている。
1つの腎臓内に犬で40万個、猫で20~30万個あるといわれている。
腎小体は糸球体とそれを包むボーマン嚢からなる。血管が出入りしており、糸球体で尿を生成ろ過し尿細管へ送る。
尿細管では尿の濃縮具合の情報が感知できるようになっており、その情報から血流量を変化させ糸球体ろ過量を調整する。(糸球体傍細胞)

尿管
腎盤から始まり、腎門から腎臓の外側へ出て膀胱へと入る管状の器官。腎実質の生成した尿を腎盤で受け取り膀胱へと導く。

膀胱
腎臓で生成した尿を一時的に貯留しておくための伸縮性に富んだ袋状の器官。
尿の貯留がない時には収縮し膀胱の壁は厚く、骨盤腔内にある。尿が貯留し膀胱が拡張するにしたがい、壁も薄くなり腹腔内に突出するようになる。
尿は血液がろ過されたものなので、通常は膀胱内は無菌状態となる。

尿道
膀胱に貯留した尿を体外へ導く。

尿生成の仕組み

ろ過
糸球体の血管壁には孔や隙間があり、また輸入細動脈が輸出細動脈よりも太いため、糸球体内の血管の中の圧力が高くなっている。これにより血管の壁を通り物質が外にろ過されるようになっている。血球細胞などは隙間より大きいため血管の外に出ることはできないが、水やグルコース、アミノ酸、電解質などは隙間より小さい分子のため糸球体からボーマン嚢へろ過される。この液体を原尿という。

再吸収
原尿はそのまま尿として排泄されず、身体に必要な物質を再度血管内に取り込む再吸収という過程を経て尿となる。腎臓でつくられる原尿の99%が再吸収される。
1日の尿量は犬で20~45ml/㎏、猫で20~40ml/㎏
① アミノ酸、グルコース
近位尿細管でほぼ100%再吸収される。取り込みにはナトリウムイオンが必須。共輸送されるため、ナトリウムがないと再吸収されず尿として排泄されてしまう。
② 電解質
近位尿細管で70%ほど再吸収されるがそれに続く部位でも吸収が進み、最終的には99%が再吸収される。
③ 水
近位尿細管で70%ほどが再吸収され、その後集合管に至るまでに99%が再吸収される。集合管では脳から分泌されるバソプレシンというホルモンの働きで、再吸収する水の量を調節している。

細胞外液量の調節
細胞外液が減少すると、糸球体傍細胞からレニンが分泌され、アンギオテンシンを作る。その結果、レニン‐アンギオテンシン系が副腎皮質に働き、アルドステロンの分泌を促進させる。アルドステロンは尿細管、集合体でナトリウムと水の再吸収を促進して細胞外液量を増やし、低下した血圧を戻す。

尿の排泄
ネフロンで生成された尿は、尿管に集められてから膀胱に運ばれ、排尿されるのを待つ。排尿される時は膀胱から出て尿道を通り外に出ていくが、尿道は尿道括約筋の働きで管が閉じた状態になっている。膀胱に尿が溜まり、脳の排尿中枢が尿意を感じ排泄する時になると弛緩する。それに続き、膀胱排尿筋が膀胱を収縮させることで尿が外へ押し出される。
排尿を始める最初の指令は脳の橋から出されるが、その後の筋肉の動きは反射により腰髄や仙髄で行われる。
尿量の正常値は1~2ml/kg/hr。

代表的な疾患

急性腎不全
病因には3つある。
腎前性
腎臓の血流量が減少することにより、腎臓が正常に機能しなくなる。
ショックや心不全、DIC、異形輸血、過度の血管収縮、長時間麻酔などが原因になる。
腎性
腎臓原発性疾患により、糸球体ろ過率が急激に減少または腎臓そのものの病気。
抗菌薬、NSAIDs、造影剤、重金属、昆虫類などの毒素や糸球体腎炎、腎盂腎炎、水腎症などが原因になる。
腎後性
尿の排泄が尿管、膀胱、尿道のいずれかの異常で障害される。結石や腫瘍による尿路閉塞、膀胱破裂などが原因になる。
急性腎不全は直ちに治療を開始しないと、生命の危険を伴うため、早期診断、早期治療が重要になる。
症状は尿量が0.25ml/kg/hr以下の乏尿または無尿で、元気食欲消失、嘔吐下痢など。
回復するまでに数週間から数カ月かかるが症例によっては完全に回復せずに慢性腎不全に移行する場合もある。
治療は、輸液、利尿剤の投与、嘔吐下痢に対する対症療法。
脱水の補正や腎血流量の増加による利尿の促進として輸液を行うが、乏尿あるいは無尿の動物では輸液過剰による過水和が生じる危険性があるため、動物の状態、尿量を注意深くモニターする必要がある。輸液により十分な尿産生が認められない場合は利尿剤を投与するが、その後きちんと尿量が増えるか確認する。
治療目標は、致死的な電解質などの異常を改善し、尿産生を回復させ、高窒素血症を改善すること。このため治療に反応せずに乏尿や無尿が継続する場合、血液透析等の実施も検討される。

慢性腎不全
数カ月から数年にわたって腎実質障害が進行し、最終的に末期腎不全、尿毒症へと進行していく不可逆的な疾患。両腎の総ネフロン数の約75%以上が機能しなくなった状態で、初期には臨床症状を示さず、進行にしたがって様々な症状が顕在化する。大きく4つのステージに分類される。
通常は老齢の猫で多く見られるが、犬またはどの年齢でも発症する事がある。
症状はステージの進行に伴い、多飲多尿、体重減少、脱水、エリスロポエチンの産生低下による腎性貧血での可視粘膜蒼白などがみられる。ステージ4末期に尿毒症に陥ると口内炎、消化管潰瘍、意識障害、けいれん、悪液質、異常呼吸などが認められる。
ステージ進行に伴い全身状態が悪化し、腎性続発性上皮小体機能亢進症などの疾患が併発することがある。この疾患により、非常に骨折しやすくなったり跛行や疼痛の症状が見られる。特に上顎骨、下顎骨は影響を受けやすく、咀嚼異常や開口困難になることもある。
治療は、完治しない疾患であることから進行を遅らせ、適切な対症療法を実施することで尿毒症の症状を軽減させる。潰瘍治療薬、制吐薬、炭素吸着薬、血管拡張薬、利尿薬、経口リン結合剤、ビタミンD製剤、エリスロポエチン、輸液など症状に合わせ選択する。
食事療法も重要な治療。多飲多尿があることから、つねに新鮮な水が飲めるようにし、水を摂らない動物にはウエットフードやふやかしたり、水に何か足すなど工夫をする。
飲水量と尿量は必ず確認する。
腎臓に負担がかかる時間を少なくするために、自由採食を止めて時間を決めた定期的な採食にする方が良い。
療法食が利用できるなら食事はそれに切り替えるのが最も良い。
適切な治療をすることで、動物のQOLを改善し生存期間を延長させる事が可能となる。
しかし、治療は一生続ける必要があるうえに徐々に進行していく疾患であるため、様々な負担が生じる事を説明し方針を相談する必要がある。

細菌性膀胱炎
細菌感染を起因した膀胱の炎症で、多くは上行性感染。
原因菌の80%が消化管内の常在菌であるグラム陰性菌(大腸菌)で雄より雌で多くみられる傾向にある。
膀胱には細菌感染に対する自然防御機構があるが、これが破壊されることにより感染が成立する。尿道結石や腫瘍などによる物理的な障害、脊椎疾患、ヘルニアなどによる神経の損傷による障害、尿道カテーテルの挿入、留置、膀胱結石、薬物の膀胱排尿、尿量の減少、糖尿の排泄、尿毒症、免疫抑制剤の使用、副腎皮質機能亢進症など様々な要因で起こす。
症状は頻尿、有痛性排尿困難、血尿、トイレ以外での排尿など。
治療は感染を起こしやすくしている基礎疾患等を除去し、原因となる細菌を除去する。
抗菌薬は培養感受性試験に基づいて選択し典型的には3~6週間投与を継続する。結果が出ていない場合はペニシリン、ニューキノロン系抗菌薬を選択する。

猫下部尿路疾患(FULTD)
細菌性膀胱炎と同様症状+部分的または完全な尿道閉塞といった症状が2つ以上認められる疾患。原因としては尿石、尿路感染等がある。
冬に多く、尿量の減少、排尿回数の低下、ストレスなどが誘因になるなど原因が特定できないものを、特発性下部尿路疾患と呼ぶ。
症状は上記。尿路閉塞が雄猫でよく見られる。
尿閉が36~48時間になると抑うつ、尿毒症といった急性腎不全の症状がみられ、最終的には死に至る。
治療は尿閉の有無で異なる。
ない場合、抗菌薬の投与、ストルバイト尿石には療法食を用い尿石の溶解、ストレスの改善など。多頭飼育の場合、トイレ数の増加、清潔に保つ、常に新鮮な水が飲めるようにする、注目し続けストレスかけないなどの配慮も必要。
ある場合、カテーテルを使用し閉塞を解除する。症例によっては解除後もしばらくカテーテルを留置する必要がある。高BUN、Kの場合は輸液投与が必須。
食事療法は継続する必要があり、家族への十分な説明が必要。

尿石症
尿石が存在する場所により、腎結石や、尿管結石、膀胱結石、尿路結石と呼ばれる
原因は尿pHや塩類濃度、食事ミネラルバランス、感染など
成分は、ストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)、シュウ酸カルシウム、尿酸塩、シスチン等がある。
犬では尿路感染に起因する事が多く、やはり雌の割合が高い。
症状は細菌性膀胱炎と同様だが、より排尿痛が強い。
治療は結石が小さい場合は種類によっては内科療法や処方食での治療が可能。
大きい場合は外科的摘出手術

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いかがでしたでしょうか。

泌尿器疾患には完治する疾患ももちろんありますが、完治せずに継続治療が必要な疾患も多いです。
また早期発見が難しい場合が多いので、初期症状を見逃さないように、なるべく早期に治療が始められるようにしてあげることが重要になってきます。
働きと初期症状を理解してきちんとした検査や治療が行えるようにこれからも多く学習していきたいと思います。

看護師 坂本恵