看護師セミナー18 泌尿器

2019年1月28日

こんにちは。看護師の坂本です。
今回は泌尿器疾患についてまとめております。
泌尿器疾患は、膀胱、尿を想像される方も多いと思いますが、腎臓や尿管なども泌尿器疾患に含まれます。
高齢になってくると、膀胱炎や腎臓の疾患も増えてきます。
まだ疾患のないうちに初期症状を見逃さないためにも皆さんの役に立てればと思います。

以下内容
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泌尿器は腎臓で血液をろ過し、身体に必要なものを再吸収し、残った老廃物や不要物を尿として排泄したり、体内水分量や電解質、造血量などの調節機能、Ca,Pの代謝調節、ビタミン?の活性化機能など多くの機能がある。
泌尿器系疾患においてはいずれも進行すれば最終的に尿毒症となり、いろいろな臓器の機能が障害され様々な全員症状が発現する。
このため多くの場合は、一刻も早く全身的な治療を開始する必要がある場合がほとんど。
泌尿器疾患が疑われる場合には、排尿回数や量、尿の性状異常を確認するとともに、食欲や体重、貧血、チアノーゼなどにも注意し問診や看護を行う。
また循環器疾患などを併発している場合があるのでよく観察し注意する。
必要に応じて輸液を行うが、輸液中は常に動物を観察し厳重な管理を行う。輸液速度、排尿量、呼吸状態、浮腫などには特に注意が必要。
食事管理も必要な治療で、適切な処方食を与え、疾患にもよるが嗜好性の高いものを選ぶなどの工夫を行う。自由に新鮮な水が飲めるような配慮も必要。
原因によっては、完全な回復が期待できない場合や治療が長期間に及ぶ事があるので、疾患や治療に対する認識、理解力に合わせ、現在の状態や今後の見通しを説明し、治療継続や再発防止に協力してもらえるように支援する。しっかりと理解してもらってから治療できるように説明を怠らない。
泌尿器の構造

腎臓
腎臓は血液をろ過し老廃物を生体外へ排泄するとともに、pH、浸透圧などの調節を行う。
脊柱を挟んで左右一対あり、腹腔腰部に位置している。腎臓の位置や形は動物種によって多少異なるが、犬猫の腎臓は、右腎が左腎よりもやや頭側に位置し、そら豆型をしている。
腎臓には著しく大きな予備能力があるため、臨床症状が現れ血液の変化がみられるころにはすでに80%近くが障害を受けていると考えられる。
腎門から、尿管と尿管動脈、腎動脈と腎静脈、リンパ管、神経が通っていて、膀胱や血管など様々な臓器につながっている。
腎動脈は、腎臓の大きさに比較して非常に太く、体内で最も太い血管の一つである腹大動脈から分岐している。
腎臓の血管の流れは
腹大動脈→腎動脈→葉間動脈→弓状動脈→小葉間動脈→輸入細動脈→糸球体形成→輸出細動脈→毛細血管→小葉間静脈→弓状静脈→葉間静脈→腎静脈→後大静脈
となっている。血管では血液を送るのはもちろん、ここの毛細血管の内皮細胞ではエリスロポエチンという造血ホルモンが産生されている。
腎臓の内側は、腎門に続く空洞の腎洞と、尿の生成を行う腎実質の2つに分かれる。
腎洞 :尿管がロート状に広がる腎盤(腎盂)という嚢状の構造物がある。腎盤は、腎実質で生成された尿を受け取り尿管へと導く。
腎実質:内層の髄質と、外層の皮質から形成される。両層にまたがってネフロンと血管およびネフロンが生成した尿を腎稜まで導く導管がある。基本的にはネフロンの集合体。
髄質の腎盤側を腎稜といい、腎盤に合わせて凸状をしている。腎実質で生成された尿の出口が開口している。

ネフロン
腎実質の中にある腎臓の構造的機能単位で、1個の腎小体と、1本の尿細管で形成されている。ネフロンの1個1個がそれぞれ尿生成を行っている。
1つの腎臓内に犬で40万個、猫で20~30万個あるといわれている。
腎小体は糸球体とそれを包むボーマン嚢からなる。血管が出入りしており、糸球体で尿を生成ろ過し尿細管へ送る。
尿細管では尿の濃縮具合の情報が感知できるようになっており、その情報から血流量を変化させ糸球体ろ過量を調整する。(糸球体傍細胞)

尿管
腎盤から始まり、腎門から腎臓の外側へ出て膀胱へと入る管状の器官。腎実質の生成した尿を腎盤で受け取り膀胱へと導く。

膀胱
腎臓で生成した尿を一時的に貯留しておくための伸縮性に富んだ袋状の器官。
尿の貯留がない時には収縮し膀胱の壁は厚く、骨盤腔内にある。尿が貯留し膀胱が拡張するにしたがい、壁も薄くなり腹腔内に突出するようになる。
尿は血液がろ過されたものなので、通常は膀胱内は無菌状態となる。

尿道
膀胱に貯留した尿を体外へ導く。

尿生成の仕組み

ろ過
糸球体の血管壁には孔や隙間があり、また輸入細動脈が輸出細動脈よりも太いため、糸球体内の血管の中の圧力が高くなっている。これにより血管の壁を通り物質が外にろ過されるようになっている。血球細胞などは隙間より大きいため血管の外に出ることはできないが、水やグルコース、アミノ酸、電解質などは隙間より小さい分子のため糸球体からボーマン嚢へろ過される。この液体を原尿という。

再吸収
原尿はそのまま尿として排泄されず、身体に必要な物質を再度血管内に取り込む再吸収という過程を経て尿となる。腎臓でつくられる原尿の99%が再吸収される。
1日の尿量は犬で20~45ml/㎏、猫で20~40ml/㎏
①?アミノ酸、グルコース
近位尿細管でほぼ100%再吸収される。取り込みにはナトリウムイオンが必須。共輸送されるため、ナトリウムがないと再吸収されず尿として排泄されてしまう。
②?電解質
近位尿細管で70%ほど再吸収されるがそれに続く部位でも吸収が進み、最終的には99%が再吸収される。
③?水
近位尿細管で70%ほどが再吸収され、その後集合管に至るまでに99%が再吸収される。集合管では脳から分泌されるバソプレシンというホルモンの働きで、再吸収する水の量を調節している。

細胞外液量の調節
細胞外液が減少すると、糸球体傍細胞からレニンが分泌され、アンギオテンシンを作る。その結果、レニン‐アンギオテンシン系が副腎皮質に働き、アルドステロンの分泌を促進させる。アルドステロンは尿細管、集合体でナトリウムと水の再吸収を促進して細胞外液量を増やし、低下した血圧を戻す。

尿の排泄
ネフロンで生成された尿は、尿管に集められてから膀胱に運ばれ、排尿されるのを待つ。排尿される時は膀胱から出て尿道を通り外に出ていくが、尿道は尿道括約筋の働きで管が閉じた状態になっている。膀胱に尿が溜まり、脳の排尿中枢が尿意を感じ排泄する時になると弛緩する。それに続き、膀胱排尿筋が膀胱を収縮させることで尿が外へ押し出される。
排尿を始める最初の指令は脳の橋から出されるが、その後の筋肉の動きは反射により腰髄や仙髄で行われる。
尿量の正常値は1~2ml/kg/hr。

代表的な疾患

急性腎不全
病因には3つある。
腎前性
腎臓の血流量が減少することにより、腎臓が正常に機能しなくなる。
ショックや心不全、DIC、異形輸血、過度の血管収縮、長時間麻酔などが原因になる。
腎性
腎臓原発性疾患により、糸球体ろ過率が急激に減少または腎臓そのものの病気。
抗菌薬、NSAIDs、造影剤、重金属、昆虫類などの毒素や糸球体腎炎、腎盂腎炎、水腎症などが原因になる。
腎後性
尿の排泄が尿管、膀胱、尿道のいずれかの異常で障害される。結石や腫瘍による尿路閉塞、膀胱破裂などが原因になる。
急性腎不全は直ちに治療を開始しないと、生命の危険を伴うため、早期診断、早期治療が重要になる。
症状は尿量が0.25ml/kg/hr以下の乏尿または無尿で、元気食欲消失、嘔吐下痢など。
回復するまでに数週間から数カ月かかるが症例によっては完全に回復せずに慢性腎不全に移行する場合もある。
治療は、輸液、利尿剤の投与、嘔吐下痢に対する対症療法。
脱水の補正や腎血流量の増加による利尿の促進として輸液を行うが、乏尿あるいは無尿の動物では輸液過剰による過水和が生じる危険性があるため、動物の状態、尿量を注意深くモニターする必要がある。輸液により十分な尿産生が認められない場合は利尿剤を投与するが、その後きちんと尿量が増えるか確認する。
治療目標は、致死的な電解質などの異常を改善し、尿産生を回復させ、高窒素血症を改善すること。このため治療に反応せずに乏尿や無尿が継続する場合、血液透析等の実施も検討される。

慢性腎不全
数カ月から数年にわたって腎実質障害が進行し、最終的に末期腎不全、尿毒症へと進行していく不可逆的な疾患。両腎の総ネフロン数の約75%以上が機能しなくなった状態で、初期には臨床症状を示さず、進行にしたがって様々な症状が顕在化する。大きく4つのステージに分類される。
通常は老齢の猫で多く見られるが、犬またはどの年齢でも発症する事がある。
症状はステージの進行に伴い、多飲多尿、体重減少、脱水、エリスロポエチンの産生低下による腎性貧血での可視粘膜蒼白などがみられる。ステージ4末期に尿毒症に陥ると口内炎、消化管潰瘍、意識障害、けいれん、悪液質、異常呼吸などが認められる。
ステージ進行に伴い全身状態が悪化し、腎性続発性上皮小体機能亢進症などの疾患が併発することがある。この疾患により、非常に骨折しやすくなったり跛行や疼痛の症状が見られる。特に上顎骨、下顎骨は影響を受けやすく、咀嚼異常や開口困難になることもある。
治療は、完治しない疾患であることから進行を遅らせ、適切な対症療法を実施することで尿毒症の症状を軽減させる。潰瘍治療薬、制吐薬、炭素吸着薬、血管拡張薬、利尿薬、経口リン結合剤、ビタミンD製剤、エリスロポエチン、輸液など症状に合わせ選択する。
食事療法も重要な治療。多飲多尿があることから、つねに新鮮な水が飲めるようにし、水を摂らない動物にはウエットフードやふやかしたり、水に何か足すなど工夫をする。
飲水量と尿量は必ず確認する。
腎臓に負担がかかる時間を少なくするために、自由採食を止めて時間を決めた定期的な採食にする方が良い。
療法食が利用できるなら食事はそれに切り替えるのが最も良い。
適切な治療をすることで、動物のQOLを改善し生存期間を延長させる事が可能となる。
しかし、治療は一生続ける必要があるうえに徐々に進行していく疾患であるため、様々な負担が生じる事を説明し方針を相談する必要がある。

細菌性膀胱炎
細菌感染を起因した膀胱の炎症で、多くは上行性感染。
原因菌の80%が消化管内の常在菌であるグラム陰性菌(大腸菌)で雄より雌で多くみられる傾向にある。
膀胱には細菌感染に対する自然防御機構があるが、これが破壊されることにより感染が成立する。尿道結石や腫瘍などによる物理的な障害、脊椎疾患、ヘルニアなどによる神経の損傷による障害、尿道カテーテルの挿入、留置、膀胱結石、薬物の膀胱排尿、尿量の減少、糖尿の排泄、尿毒症、免疫抑制剤の使用、副腎皮質機能亢進症など様々な要因で起こす。
症状は頻尿、有痛性排尿困難、血尿、トイレ以外での排尿など。
治療は感染を起こしやすくしている基礎疾患等を除去し、原因となる細菌を除去する。
抗菌薬は培養感受性試験に基づいて選択し典型的には3~6週間投与を継続する。結果が出ていない場合はペニシリン、ニューキノロン系抗菌薬を選択する。

猫下部尿路疾患(FULTD)
細菌性膀胱炎と同様症状+部分的または完全な尿道閉塞といった症状が2つ以上認められる疾患。原因としては尿石、尿路感染等がある。
冬に多く、尿量の減少、排尿回数の低下、ストレスなどが誘因になるなど原因が特定できないものを、特発性下部尿路疾患と呼ぶ。
症状は上記。尿路閉塞が雄猫でよく見られる。
尿閉が36~48時間になると抑うつ、尿毒症といった急性腎不全の症状がみられ、最終的には死に至る。
治療は尿閉の有無で異なる。
ない場合、抗菌薬の投与、ストルバイト尿石には療法食を用い尿石の溶解、ストレスの改善など。多頭飼育の場合、トイレ数の増加、清潔に保つ、常に新鮮な水が飲めるようにする、注目し続けストレスかけないなどの配慮も必要。
ある場合、カテーテルを使用し閉塞を解除する。症例によっては解除後もしばらくカテーテルを留置する必要がある。高BUN、Kの場合は輸液投与が必須。
食事療法は継続する必要があり、家族への十分な説明が必要。

尿石症
尿石が存在する場所により、腎結石や、尿管結石、膀胱結石、尿路結石と呼ばれる
原因は尿pHや塩類濃度、食事ミネラルバランス、感染など
成分は、ストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)、シュウ酸カルシウム、尿酸塩、シスチン等がある。
犬では尿路感染に起因する事が多く、やはり雌の割合が高い。
症状は細菌性膀胱炎と同様だが、より排尿痛が強い。
治療は結石が小さい場合は種類によっては内科療法や処方食での治療が可能。
大きい場合は外科的摘出手術

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いかがでしたでしょうか。

泌尿器疾患には完治する疾患ももちろんありますが、完治せずに継続治療が必要な疾患も多いです。
また早期発見が難しい場合が多いので、初期症状を見逃さないように、なるべく早期に治療が始められるようにしてあげることが重要になってきます。
働きと初期症状を理解してきちんとした検査や治療が行えるようにこれからも多く学習していきたいと思います。

看護師 坂本恵

 

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