
レブリチンとは
ウニの腸管やスギノリという藻類の一種から発見された成分をもとに誕生した治療薬で、2023年に世界初の動物用放射線増感剤として承認されました。
これまで様々な放射線増感剤か検討されていたものの、いずれも副作用が問題となり広く実用化には至っていませんでした。レブリチンは天然物由来の薬剤であり、副作用が少なく安全性の高い薬剤としてとても注目されています。
レブリチンの可能性は、放射線増感剤としての使用に留まらず、抗がん剤や半導体レーザーを用いた温熱療法と併用することで、様々な相乗効果を期待することができるようにもなってきています。
新しい薬剤であるため報告数はまだ限られていますが、今後の発展が期待される有望な治療法と考えられています。
現在、私たち伴侶動物がん補助治療研究会(詳しくはコチラ)に所属し、全国の症例報告や臨床経験をもとに知見を集めながら、日々情報をアップデートしています。
当院でも実際にレブリチンを取り入れた治療を実施しており、それぞれの疾患や治療方針に合わせた治療選択肢のひとつとしてご提案しています。
レブリチンの作用
腫瘍内部の酸素化
固形腫瘍の場合、腫瘍の成長に伴い内部は低酸素状態となります。低酸素の環境は腫瘍の悪性度を高め、放射線や抗がん剤などの治療効果を弱めることが知られています。
レブリチンを投与すると一時的に腫瘍内への血流量が増加し、血液中に含まれる酸素が腫瘍内に届けられるため、放射線治療の効果を高めたり、抗がん剤が腫瘍内部まで行き渡りやすくなるなどの効果が期待できます。
血管新生阻害作用と正常化作用
レブリチンには血管新生阻害作用があり、腫瘍の成長を支える腫瘍内血管の数を減少させることで腫瘍の進行を抑える働きがあります。
また、腫瘍内血管は正常な血管と比べて脆弱であるため、血管内の成分が漏れ出やすい特徴があり、抗がん剤が腫瘍内へ十分に届かないことがあります。レブリチンは「血管新生阻害作用」の他に、残った血管を整え、より正常な構造に近づける「血管正常化作用」も有しており、抗がん剤が腫瘍深部まで届きやすくなる可能性が示されています。

~株式会社MT3ホームページより引用~
レブリチンの適応
● 放射線治療と併用
犬の口腔内メラノーマ、猫の鼻腔内腫瘍(リンパ腫、腺癌など)、猫の口腔内扁平上皮癌など。
放射線治療単独で腫瘍縮小効果が見られなかった症例で、レブリチンと併用することで縮小した報告があります。
● 抗がん剤と併用
リンパ腫や血管肉腫をはじめとする様々な腫瘍において、抗がん剤や分子標的薬(トセラニブ、イマチニブなど)と併用した治療の報告があります。
● レブリチン単独投与
レブリチン単独でも、わずかながら腫瘍抑制効果が認められています。
抗がん剤や放射線治療の代替となる治療法ではありませんが、体への負担を最小限に抑えながら行うことができる治療法のひとつです。
● 温熱療法と併用
腫瘍細胞は正常細胞に比べて熱に弱いという性質を利用して、半導体レーザーを20~30分程度体の外から照射する治療法です。レブリチンを投与後にレーザーを照射することで、腫瘍組織のレーザーの感受性が高まり、より高い治療効果が期待できます。

温熱療法を行っている様子(体表が熱くならないように保冷剤を通してレーザーを照射)
投与方法と副作用
レブリチンは静脈から約1分かけてゆっくり投与します。血管から薬剤が漏れ出ると軽度の血管炎や皮下の腫れが見られることがあるため、留置針を設置して慎重に投与を行います。
一般的な抗がん剤で認められるような、嘔吐や下痢、脱毛、骨髄抑制(白血球数の低下など)は基本的に認められません。
また、レブリチンは腫瘍内では一定期間留まりやすい一方、正常組織では速やかに代謝・排泄されるため、腎機能や全身状態に不安がある子でも比較的使用しやすい薬剤であると考えられています。
投与回数や間隔に明確な制限はなく、抗がん剤や放射線治療に合わせたり、週1~2回から投与を開始したりと、体調やご負担を考慮しながら決めていきます。
レブリチンは、「放射線増感剤」という動物においては新しい分野の薬剤であり、これまでの治療法と組み合わせることで、有用性が期待できる治療法として注目されています。
当院では、以下のような場合にはレブリチンの使用をご提案しています。
- 鼻腔や口腔など手術が難しい部位に発生した悪性腫瘍に対し、放射線治療や麻酔を伴う処置が困難な場合
- 本来は手術が適応となる腫瘍であっても、年齢や体力面の理由から麻酔や手術が難しく、できることがないと言われてしまった症例
- 抗がん剤治療(猫の扁平上皮癌、リンパ腫など)と併用して治療効果の向上を目指す場合
- 脾臓の血管肉腫などにおいて、脾臓摘出後の補助治療として検討する場合
など、様々な疾患や病状において適応となります。
腫瘍の治療においてはひとつの正解だけがあるわけではありません。動物とご家族にとって無理のない、より良い治療法を一緒に考えていけたらと思います。ご興味のある方は、お気軽にご相談ください。
