「体にしこりがあるけれど様子を見ても大丈夫?」
「細胞診を勧められたけれど、どんな検査なの?」
このような疑問をお持ちのオーナーの方々は少なくないと思います。
細胞診とは
できものから少量の細胞を採取し、顕微鏡で観察する検査です。
体にできものを見つけた場合、動物病院で必ず行う最初のステップで、今度の治療方針を決定するための重要なカギとなる検査です。
細胞診ではどのように細胞を採るの?
細い針を使って細胞を採取します。
使用する針は、採血やワクチン接種で使うものと同じ細い針のため、ほとんどの場合で痛みを感じない検査です。
外来の診察の中で行うことができ、比較的短時間で終わる検査です。
痛みに敏感なコや、腹腔内の細胞診の場合は、局所麻酔や鎮静剤の併用も可能です。
顕微鏡では何を見ているのでしょうか?

採取した細胞をスライドガラスに吹き付け、標本にし、染色(種類によりますが簡易的なものは5分程度で終わります)を行った後、顕微鏡で詳しく観察します。
細胞診における重要な鑑別事項
- 炎症なのか腫瘍なのか
- 炎症性であれば急性期か慢性期か
- 腫瘍性であれば良性なのか悪性なのか
確定診断は基本的には組織診断という手法(外科的にできものをとって調べる方法)になります。
しかしながら、組織診断のような侵襲的検査をいきなりするわけにはいきません。
細胞診では、上記鑑別項目を完全に鑑別する事は出来ないのですが、「今後どのような治療や検査が必要か」を判断するための重要な情報を得ることができるため、とても有用な臨床検査と考えられています。
「細胞が採れませんでした」にも意味があります
検査結果で「十分な細胞が採取できませんでした」とお伝えすることがあります。
一見すると検査がうまくいかなかったように思われるかもしれませんが、実はこれ自体が診断のヒントになることがあります。
例えば、ストローで飲み物を吸う場面を想像してみてください。
タピオカ入りの飲み物は吸いやすいですが、木綿豆腐やパスタのように形がしっかりしたものは、ストローではなかなか吸えません。
できものも同じです。
細胞同士の結びつきが弱い腫瘍では細胞が採れやすく、反対に細胞同士が強く結びついた腫瘍(肉腫など)では、針を刺しても十分な細胞が採れないことがあります。
つまり、「採れなかった」という結果の場合、経過を見ながら再度細胞診を実施したり、肉腫などの悪性所見の可能性として、検査を次のステップに進めるべきという判断ができます。
特に肉腫の場合、その局所浸潤性や再発性の高さにより、早期発見早期診断がとても重要となってきますので、『細胞が取れなかった』という結果はとても重要な結果となると言えます。
細胞診だけで診断は決まるの?
細胞診は、できもの全体ではなく、その一部の細胞を観察する検査です。
そのため、基本的には暫定的な診断しかできません。
それでも細胞診には意義があります。
細胞診によって、より詳しい診断が必要と判断された場合、できものを切除して病理組織検査を行うことを推奨できます。
いきなり負担の多い切除(手術)を行うことは動物への負担も大きくなります。
だからこそ、まずは負担の少ない細胞診を行い、
「経過を見てもよいのか」
「追加検査や手術を急いだ方がよいのか」
を判断することはとても大切ですね。
最後に
体にできものを見つけると、「もう少し様子を見よう」と迷われることもあると思います。
もちろん、経過観察で問題ないできものもありますが、中には早めの治療が望ましい病気が隠れていることもあります。
細胞診は、その見極めを行う事ができる第一歩となる検査です。
多くの家族の、その後の治療方針に大きなメリットを提供できる力が細胞診にはあります。
気になるしこりやできものを見つけた際には、お気軽にご相談ください。
一人でも多く、そして家族の皆さんに貢献できるよう細胞診を通してお役に立てたらうれしいです。

獣医師:今井
