看護師セミナー23 嘔吐・排便異常

2020年11月18日

こんにちは。看護師の坂本です。
今回は嘔吐や排便異常ついてまとめております。
嘔吐や吐出、排便の異常は、どの疾患にも多く起こりえる症状です。その症状の違いを正確に理解し、問診や治療、看護を行えるように、今回まとめてみました。
これらの症状がある際に多い疾患については、消化器疾患の項目でまとめております。

以下内容
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臨床動物看護学 嘔吐・排便異常

嘔吐
胃腸疾患でもっとも多い症状で、胃内の内容物を口から外に排出すること。生理的な反射で生体防御のひとつ。誤食時に異物や中毒性物質などを吸収される前に出す。胃腸炎。肝臓や腎臓疾患、その他臓器不全。代謝性疾患。神経疾患。車酔い。過食。食物アレルギー。過敏症。腸閉塞。胃拡張捻転症候群。胃腸運動機能の障害。炎症性疾患。腫瘍。抗がん剤の副作用など様々な原因で起こる。原因によっては、治療を行なっても1週間以上続くことがある。
吐物は液状化かある程度消化されていて、胃液が混ざっている。吐き出す前に前兆がある。
嘔吐時は誤燕性肺炎に気をつけて管理し、脱水症状にも注意する。

吐出
嘔吐と似ているが異なる症状。事前に明瞭な前兆がなく、突然噴出するように吐く。筋疾患、食道の通過障害、食道の拡張、食道機能の障害などが原因でおこる。犬では食道全域が横紋筋で構成され、猫は食道遠位(胃の近く)1/3が平滑筋で構成されているため、筋肉の疾患でも起こる。
吐物は食道で止まっているため消化されていない状態で出てくる。棒状になって出てくる事がほとんど。嘔吐と同じく誤燕性肺炎に注意する。嘔吐と吐出の区別がつかない飼い主さんも多いので、どのように吐いているのか聞く事が大切。

排便異常

下痢
排便中に水分が多く含まれている状態。腸疾患でもっとも多くみられる症状。食物過敏性、ウイルス感染、寄生虫感染、腸炎、膵炎、ストレス、腸管腫瘍など様々な原因でおこる。さらに下痢は小腸性と大腸性に分けられる。慢性腸炎、食事反応性、炎症性腸疾患、たんぱく喪失性腸炎、などが原因の場合は小腸性のことが多く、出血がある場合は暗赤色~黒色の血液が混ざる。大腸炎、ストレス性などが原因の場合は大腸性の場合がほとんどで、出血があるばあいは鮮赤色の血液が混ざる。腫瘍が原因の場合は、小腸性、大腸性どちらになる場合もある。小腸性の特徴は、量多く、回数少なく、泥状~水様性、体重の減少が多くみられる。大腸性の特徴は、量少なく、回数多く、泥~粘液混ざり、体重はあまり減少しない。小腸性、大腸性の鑑別は問診でもある程度行えるので、受付問診時に詳しく聴取する。

便秘
腸管内で便が硬く乾燥した状態。排便困難も伴う。水分不足、運動不足やトイレ状況など生活習慣が原因になっている場合や、前立腺肥大、巨大結腸症、会陰ヘルニア、腸管腫瘍、肛門嚢疾患など他の基礎疾患が強い原因になっておこる場合もあるので注意が必要。疾患の診断と同時に、生活環境の聞きとりも行い、環境改善によって解決しないのかを見極める必要がある。

血便
便中に血液が混ざっている状態。出血部により、色が異なる。消化管粘膜の局所的な損傷、広範囲のびまん性の炎症による出血、リンパ腫やポリープなどの消化管腫瘍などが原因でおこる。色調は下痢の有無、小腸性、大腸性による。軽度の局所炎症でもおこるので、血便=腫瘍ではないが、血便は心配する飼い主さんが多いので慎重に問診をおこなう。

詳しい疾患内容は消化器Ⅰ・Ⅱ参照

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いかがでしたでしょうか。

これらの症状は、私たち動物看護師でも分類が難しい時がありましたが、今回学びなおし理解することが出来ました。
似たような症状に見えて、隠れている疾患が異なるものが多いので、症状の変化や問診での確認の仕方など、看護するうえで気を付けていきたいと思います。

今回の記事をもって、3年程前に時間をいただき参加しておりました、学び直し講座のセミナー内容は以上となります。
ご迷惑をおかけしたこともあったと思います。ありがとうございました。
今回のこのような機会をいただき、学び直しをしたことでより詳しく疾患や症状のことを理解し、看護を行うことができるようになりました。長文で専門用語も多く、読みにくい記事ではありますが、皆様の力や知識に少しでも役立てればと思い、まとめた資料を一部公開させていただいておりました。初期診断や、疾患、治療理解のきっかけになれれば幸いです。
日々、治療内容は変化して行き、また、複数の疾患により症状が隠れてしまう場合も多いので、今回のことが全てではありませんが、読んでみて気になった事などございましたら、いつでも病院にお問い合わせください。

長い間ありがとうございました。

看護師 坂本恵

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