看護師セミナー9 血液・免疫学Ⅱ

2018年3月1日

こんにちは。看護師の坂本です。
今回は血液・免疫学のⅡということで、免疫学を中心に学んできました。
免疫学も細胞の名前や仕組みが少し難しいので前半読み辛いかもしれませんが、後半に疾患についてをまとめます。
免疫疾患といっても想像付きにくいですが、ワクチンや食物のアレルギー、自分の細胞が自分に攻撃されてしまう疾患などが免疫疾患に含まれています。あまり多い疾患ではありませんが仕組みを知っておくと看護しやすいのではないかなと思います。

以下内容
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血液・免疫学Ⅱ
免疫とは一度かかった感染症が治ると再び同じ病気にはかかりにくいという概念。
なので、ワクチンを接種しても絶対防御ができるわけではなく、症状が出にくい、または軽くすむことができる状態にすることが出来る。免疫機能は生体防御機能に含まれる。

生体防御機能
病原体が体内に侵入・増殖しないために防御する能力のことをいう。
外界との境界面で病原体の侵入を防ぐバリア機能と、体内に侵入した異物を排除する免疫機能から構成される
バリア機能
皮膚や被毛、粘膜、腸管、気道など外界と触れる面で病原体の侵入を防ぐ。
免疫機能
骨髄由来の免疫機能を担当する細胞(免疫担当細胞)により異物を排除する。
免疫担当細胞には、単球、リンパ球、好中球、肥満細胞などがある
免疫機能には不特定多数のものの防御を行う非特異的生体防御と特異的に決まったものを防御する特異的生体防御があり、
好中球や好酸球、単球などは非特異的生体防御に関与している。急性期
リンパ球の中のT,B,NK細胞は特異的生体防御に関与している。慢性期

特異的生体防御機構のしくみ
異物(抗原)が初回侵入すると血管外から出た単球(マクロファージ)が抗原を捕らえ貪食。
マクロファージが分解した抗原の破片、情報をヘルパーT細胞に伝える
ヘルパーT細胞がキラーT細胞とB細胞に抗原の情報を伝え、2つの細胞を活性化
キラーT細胞はウイルスに感染した細胞などを破壊する。(細胞性免疫)
B細胞が分化してできた細胞(形質細胞)が抗体を産生する。(体液性免疫)
抗体はそれぞれ特定の抗原と結合し抗原を無効化、排除。(抗原抗体反応)
またB細胞は免疫記憶能力があるので、抗原の種類を記憶し、再度同じ抗原が侵入すると1回目より早く増殖分化をす
る。

非特異的生体防御機構
この抗体を作成している間に、その抗原が何であっても単独で抗原を貪食、排除するのが好中球、NK細胞である。
細菌は自己繁殖できるが、ウイルスは自己繁殖できないので細胞の中に入り、細胞が作り出すたんぱく質の流れに入るか、DNAなどの遺伝子の中に入り自己複製をしていく。
エイズ、白血病のウイルスはヘルパーT細胞の中に入ってしまうので、破壊できず完治ができない。

免疫疾患

バリア機能の破たんによる疾患
膿皮症や褥瘡、消化器疾患などが含まれる。皮膚、消化管粘膜、呼吸器などの上皮細胞が外傷やウイルス感染などで障害されると外界を遮るバリア機能が破たんする。また抗菌薬などの投与で消化管の正常細菌の減少や変化によって、病原体の増殖を防ぐ細菌学的バリアの破たんすることがある。
主症状は炎症徴候。皮膚感染ではかゆみ、脱毛など。消化管感染では嘔吐下痢など。呼吸器感染では発咳、呼吸様式の変化など。でこれらの部位を通じて感染が全身に広がる可能性があり、低体温、乏尿、意識障害などの敗血症性ショックを起こしてしまう事もある。各種画像診断、組織検査、薬剤の感受性試験などで全身状態を把握する。
治療は患部の洗浄(消毒はしない)、ドレッシング剤による保護、抗菌剤の投与など

免疫機能の低下
ウイルス感染、白血病などの骨髄疾患、クッシング、糖尿病や免疫抑制剤、抗がん剤の投与などは、免疫担当細胞の減少・機能低下をもたらし、病原体の侵入・増殖を抑えるための免疫機能を低下させる。
主症状は上記と同じ。各種血液検査、ウイルス検査、骨髄検査を行う
治療は原因が特定出来た場合、原因疾患に適した治療、対症療法など

アレルギー性疾患
Ⅰ型:ワクチン後のアナフィラキシーショック、アトピー性皮膚炎
Ⅱ型:免疫介在性溶血性貧血、天疱瘡
Ⅲ型:全身性エリテマトーデス(血管炎)
Ⅳ型: 食物アレルギー                       がある。
免疫機能が過剰に働くことにより、身体にとって有害な反応を引き起こすことをアレルギー反応といい、このアレルギー反応を引き起こす抗原のことをアレルゲンと呼ぶ。
即時型アレルギー反応
Ⅰ~Ⅲ型のアレルギー。数分から数時間以内に発症する。IgEを代表とした免疫グロブリンが大きく関与している。最悪の場合、命にかかわる。
遅延型アレルギー反応
Ⅳ型のアレルギー。数日後に発症する場合が多い。主にT細胞が関与している。
症状は発赤、痒み、発咳、呼吸困難、鼻汁、チアノーゼ、嘔吐、下痢、流涙、眼瞼腫脹、血管浮腫、意識障害など様々。
血液検査、除去食試験、組織生検など症状や原因に合わせる
治療はステロイドや免疫抑制剤の投与をし、その後アレルゲンの暴露量を減らすこと

自己免疫性疾患 
全身性エリテマトーデス、免疫介在性溶血性貧血、免疫介在性血小板減少症、免疫介在性関節炎などが含まれる。多くの場合原因を特定するのは困難。雄よりも雌の発症が多い。
症状は疾患によって異なるが、すべてで発熱をおこす。全身性または特定の臓器、細胞に炎症を引き起こす。抗核抗体検査、血液検査、クームス試験などを行い診断する。
治療は免疫抑制剤の投与、対症療法。

免疫疾患には命にかかわるもの、治らないものもある。
抗原も抗体もたんぱく質でできており、うまく食事を取れていないとさらに病状が悪化してしまうこともある。入院中など罹患動物が食事を取れているのか、ストレスなどの免疫が低下する要因が強くないのかなどは動物看護師がしっかりと管理するべきである。
入院動物は、手術後やストレスによって体調変化をおこしやすいので、食欲などの一般状態だけではなく温度や湿度、部屋の清掃、消毒、タオルやシーツの交換など環境状態にも常に気を配っておく必要がある。免疫疾患を罹患している場合は、高カロリー、高たんぱくの食事を推奨し、食欲のない場合は好みのものでよいのでとにかく食べさせることが必要。食事を取れる場合、口周りや肛門まわりなど皮膚粘膜移行部を清潔に保ち続ける必要がある。副作用出現の可能性も念頭に入れ、体調変化にいち早く気づけるよう看護を行う。下痢や嘔吐など体力の低下につながる要因は排除できるよう獣医師と相談する。見逃しがちな飲水量も管理し、血液の循環に必要な量が取れているのか、点滴などの必要はないのか考慮する。
またステロイド、免疫抑制剤、抗がん剤の投与や手術後の感染などにより免疫機能が低下してしまうことを理解し、家でどのような体調変化を注意してもらうか伝えられるようにしておく。
予後や症状、今後の展開に不安な飼い主さんもたくさんいる。精神的な援助ができるように必要知識を学び、動物の変化と同じように、何かを聞きたいなどの飼い主さんの変化にも気づき一緒に病気に向き合う動物看護師を目指す。

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いかがでしたでしょうか。

免疫疾患はセミナーでも学んだ通り、治らないまたは長期治療や治りづらい疾患も多いです。
仕組みを理解することで、症状を軽くしてあげることが出来たり、今の状態の理解をしてその子にとって一番良いことを選んであげる手助けになれればと思います。
どんな疾患にかかっても不安な事は多いと思います。
そんな時に私達動物看護師がしっかりと知識を持ち、皆様の気持ち、動物たちに寄り添えられるようになりたいと思います。

看護師 坂本恵

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