看護師セミナー11 整形外科Ⅱ

2018年4月11日

こんにちは。看護師の坂本です。
今回は前回に引き続き整形外科のⅡになります。前回は用語基礎知識でしたが、今回は疾患や治療法、リハビリテーションについてを学んでまいりました。
整形外科疾患は遺伝性疾患も多いですが、体重管理などで予防や進行を遅らせたりするものもあります。
まずはどんな疾患があるのか、リハビリの知識などをつけていくための講座になっています。

以下内容
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整形外科Ⅱ

整形外科疾患は運動系の疾患か、神経系の疾患かを鑑別して治療をおこなう必要がある。しかし、鑑別診断がつかないで治療を行わなければいけない場合も多く、運動器系、神経系両方の面から診察診断を行わなければならない。
診察時、痛みを抱えている動物は特に不安や恐怖を感じていることが多いので負担が生じないよう注意しながら保定、介助をおこなうこと。また、いつも来院している大人しい動物でも、通常と異なる痛みや恐怖がある場合、普段では考えられないような凶暴な行動に出ることもあるので十分な注意が必要。そのような行動が出てしまう前に飼い主さんには痛みが強い場合、性格の急変がある場合があるので驚かないように助言をしておくと、何かあったときの心のダメージを先にケアしてあげることが出来る。問診の段階で初めての症状なのか、いつからなのかを聞きその症状が慢性のものなのか、急性のものなのか判断しておく。急激な痛みや興奮により努力性呼吸がみられる場合もあり、そのまま激痛による意識消失や呼吸不全が起こる可能性もあるので、これ以上興奮させないように細心の注意を払いながら観察、保定、検査を行う。特に急性の症状のある重症患者は要注意である。
整形外科疾患での診断に必要検査には、歩様検査、触診、関節液検査、レントゲン検査、CT検査、MRI検査などがある。その子によって必要検査が異なるので、事前に確認し準備を行う。一般的に行われるレントゲン検査でも、骨折や頸椎亜脱臼が疑われる子は痛みによるショック状態に陥ってしまう事がないかよく観察し、保定の向きなど注意する。
整形外科疾患の代表的な疾患

骨折
骨折にも様々な要因があり、その要因によって呼び方が異なる。
強い外力を受ける(落下事故、交通事故など):外傷性骨折
骨強度の低下による(骨肉腫、腫瘍の骨転移、骨粗鬆症など):病的骨折
過度な運動による(アジリティ、レースなど):疲労骨折
医療行為による(下顎歯周病治療、抜歯など):医原性骨折  と呼ぶ
近年では小型動物(トイプードル、ポメラニアンなど)の骨折が多い。骨が細いことやそれに伴い筋肉の細さもあり、ふいに飛び降りた瞬間に骨折してしまうことがある。
力をこめて、動物自身が準備態勢に入ってからの飛び降りはある程度の高さでも大丈夫なことが多いが、ふいに力をこめず飛び降りた場合は、膝ほどの低さでも骨折してしまうことがあるので注意が必要。
治療法としては、手術でプレートやピンで内固定するか、ギブスなどで外固定を行う。

膝蓋骨脱臼
膝蓋骨が内方または外方に脱臼してしまう状態。小型犬に多くみられ、小型犬では内方脱臼が多く、中型犬以上では外方が多い。先天性、遺伝性の場合が多いが、後天性や転んだことによる外傷性でなる場合もある。
症状によりⅠ~Ⅳのグレード分けが出来る。
グレードⅠ:膝蓋骨を押すと脱臼するが、放すと元の位置に戻る。
グレードⅡ:膝蓋骨を押すと脱臼し、放しても元の位置に戻らない。
?グレードⅢ:基本脱臼しており、押すと戻るが放すとまた脱臼する。
グレードⅣ:基本脱臼しており、押しても戻らない。
症状はグレードにより異なるが、患肢の挙上、疼痛、腫脹などがみられる。 治ることはなく、グレードが進むにつれその状態に慣れてしまい痛みがなくなってみえることがある。
体重が増えることで負担も増え、悪化する要因の一つとなる。
治療は先天性の場合早期(2カ月齢以内)にリハビリテーションで良くなる場合があるが、遺伝性疾患のため繁殖は避ける。後天性の場合は、外科手術だがグレードや骨の形状により様々な術式がある。

前十字靭帯断裂
膝の内側にある靭帯の断裂。靭帯疾患の中で最も多い。ジャンプ後など膝への過負荷による外傷性で断裂することがほとんどで、より過負荷になる中高齢の肥満犬に多い。
症状は、患肢の挙上だが膝蓋骨脱臼と違い、挙上し続けずに床につくこともある。患肢への体重負重はできていないが四肢で立つ。(起立姿勢のバランスは悪い) 疼痛、膝関節の不安定なども症状にある。
診断時、靭帯はレントゲンにうつらないので、大腿骨と脛骨の位置で判断する。
靭帯は繊維状になっているため、すべてが断裂している場合もあれば、半分のみの場合もあるので、慎重な判断が必要。
治療は、肥満解消、外科手術だが小型犬では保存療法という方法もある。 5㎏以下の小型犬は体重負荷が軽いので、靭帯が断裂したままでも慣れるに従い普通に痛みなく歩けてしまう子も多い。しかし加齢に伴い慢性関節炎を併発する可能性や、半月板損傷する可能性が高いので、保存療法を選ぶ場合将来の関節炎のリスクは説明しておく。
体重負荷の多い子は、反対側の靭帯も1年以内に断裂する可能性が高い。特に術後、患肢をかばって歩くのでその際に対肢を断裂することがあるため注意が必要。回避するためにも、体重管理、減量、運動制限などを徹底的におこなう。 膝蓋骨脱臼と同様に術式は様々ある。

股関節形成不全
遺伝性の疾患で、成長期の大型犬に多い。股関節の発育が不十分で、成長するにつれて骨頭や寛骨臼の変形、骨の厚みが増し白くなるなどがレントゲンでみられる。
症状は疼痛、歩様の変化(腰を振って、頭を下げて歩くなど)など。また後肢の負重を減らす歩行をするため、後肢の筋肉が廃用萎縮し後肢まわりのみ細くみえたり、起立するまでに時間がかってしまったりする。
治療は初期は安静、疼痛管理、体重制限など。疼痛が強い場合手術も検討される。

レッグ・ペルテス(大腿骨頭壊死症)
遺伝性の疾患で、1歳未満の小型犬(トイ・プードル、ヨークシャー・テリア)に発症することが多い。成長期に大腿骨頭への栄養血管が遮断されることで、大腿骨頭が壊死をおこす疾患。ほとんどが片側性で、生後6か月前後で後肢跛行や疼痛の症状が出る。レントゲンで大腿骨頭の変形や、骨の吸収像がみられる
治療は外科手術。

変形性関節炎
関節の軟骨疾患で慢性に進行し、元に戻らない関節軟骨の変形を生じさせる。 シェットランド・シープ・ドックに多い。
肥満など関節に異常な負荷がかかったり、加齢性に軟骨変化がおきた際に発症する。
レントゲンで軟骨の消失、周縁の骨増殖がみえる。
症状は関節炎、跛行、可動域の減少が徐々に進行する。
治療は対症療法として鎮痛薬の投与など。進行の遅延、防止を目的として、運動制限や肥満防止、減量などの体重管理。完治はできない。

リハビリテーション
整形外科疾患において、術前後のリハビリテーションが非常に重要になる場合がある。
リハビリテーションの目的は低下していくQOLの向上、維持、または低下の速度の遅延を目的としている。家族と病院スタッフ全員がチームになって関わらなければ上手くいかない。始める際には目標を決め、1回の短期的な目標(何を何回、毎日やるなど)と一定期間後の到達目標(ここまで出来るように、維持するなど)を立てる。一定期間後の目標は途中で変えても良いので、飼い主のモチベーションを下げない事が一番重要。関係者全員が同じ目標に向かって、無理なく行えるように配慮する。整形外科疾患だけではなく、椎間板ヘルニアなどの神経学的疾患や関節炎などの高齢疾患、また肥満予防、体重減量のためにリハビリテーションが利用されることもある。犬や猫はリハビリをしているという感覚がなく、人がかまってくれ、楽しく遊びながら出来る事が一番である。これは人も同じで、人が楽しんでその子と関われないと成功しない。なるべく人も動物も無理なく、無理させないプログラムの提案が必要。動かない肢を無理に動く様にする、というよりは動けると錯覚させ筋肉神経を刺激する事がリハビリのポイント。これにより、実際に動かすようになる子もいる。動物看護師として最も重要な仕事は、飼い主さんが問題や疑問を言いやすい環境作りである。

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いかがでしたでしょうか

整形外科疾患にはもっとたくさんの疾患がありますが、よく見てあげることで早期に気付けるものもあります。
また最後にまとめてありますリハビリテーションはその子に合わせて色々な方法を考えてあげる事が出来ます。
たくさん関わって、より良い看護ができるようにしていきたいです

看護師 坂本恵

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