獣医整形外科セミナー(東京大学 整形外科・神経外科編)所感

2018年3月15日

今回は膝関節に関する診断、治療のアップデートを二日間に渡って学んできました。この中で、特に関心のあったテーマの一つである膝のお皿が外れてしまう病気(膝蓋骨内方脱臼:パテラ)に関する2018年度の最新知見もたくさん学べました。この中で改めてとても大切であると認識したことがありました。それは、膝蓋骨内方脱臼に関する手術適応のガイドラインが、国内はおろか国際的にも未だに出来つつもないという事実です。ガイドラインがないということは、同じ脱臼の状態でも、手術が適応となる場合もあれば内科療法が適応となる場合もあるという事であり、さらに突っ込んで言ってしまえば、手術の必要がないコでも手術をさせられてしまっていたり、手術が必要なコでも内科療法をさせられてしまっている現実があるといことになります。これは、動物や飼い主さんの負担を考えると大変由々しき状況と思います。ガイドラインの早急な作成が必要な状況なのですが、特に整形外科の場合、様々なしがらみにより多くの獣医師が同意するガイドラインが出来にくいのだと個人的には思っています。当院では、当院で適応しているガイドラインに加え、動物と飼い主さんのためになる新しい知見は積極的に取り入れ、当院のガイドラインのブラッシュアップを常に努めるようにしています。残念ながら膝蓋骨内方脱臼の手術において完璧な手術方法はありません。最新の知見(VCOT2017年)でもっても術後の再脱臼を含めた重大合併症の発生率は10?20%程度と考えることができます。ご愛犬の膝蓋骨内方脱臼の手術の適否で迷っている場合、複数の選択肢の中から納得のいく選択をすることが大切であると改めて思う勉強会でした。

獣医師:伊藤

 

 

 

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