猫の腎臓病治療薬ラプロス錠発売

2017年6月3日

猫は高齢になるにつれて腎機能が低下し、慢性腎臓病を発症する子が多くいます。10歳以上では約30~40%が罹患、5歳以上の猫の死因第1位と報告されています。原因には、感染症、腫瘍などがありますが、多くの場合、明確な原疾患は不明となっています。腎構造の変化としては、間質の線維化であり、それに伴って血流の減少、低酸素および炎症と悪循環を形成し、不可逆的に進行していきます。一度壊れてしまった腎臓を元に戻すことはできません。そのため、腎臓病治療の要は、正常な部分を守ること、進行を少しでもゆっくりしてあげることにあり、具体的な治療としては、処方食や血圧を下げる薬等を投与したります。
今回、新たに発売されたラプロス錠は、経口プロスタサイクリン(PGI2)誘導体製剤であり、①血管内皮細胞保護作用②血管拡張作用③炎症性サイトカイン産生抑制作用④抗血小板作用を有しています。これらの作用により、腎における毛細血管の減少や炎症、微小血栓形成を抑制し、虚血および線維化を抑制していきます。クレアチニンの数値におけるIRIS分類ステージ2~3(1.6~5.0)が対象とはなっていますが、ステージ4でも食欲の改善をはかることができたという報告もあります。
猫ちゃんにとって、心強いお薬が発売されましたよね。使用の際は、またご説明させていただきたいと思います。

獣医師 半澤

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