看護師セミナー3 概論①

2017年10月7日

こんにちは。看護師の坂本です。
不安定な天気が続いていますが皆様いかがお過ごしですか?
今回は概論として、動物看護師というまだまだ認知度の低い職業がどのようなものなのか、どんな知識を持っているべきなのか。また、全24回の講座で疾病として分類されていない腫瘍の定義や高齢犬の介護などについてを学んでまいりました。

概論は分野が広く多いので3回に分けてお伝えさせていただきます。
概論①として今回は動物看護師について、動物の体の基本的な構成、神経・骨格・筋肉についてまとめました。

以下内容
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概論

概論では動物看護師の職業について、動物の体のしくみや簡単な解剖学について、担がん動物の看護,がんについて、高齢犬の看護についてなど疾病としてわけられていない分野についてを学ぶ。

動物看護師とは…大体の方に獣医師のお手伝いさんと思われているが、動物看護師は動物医療の最前線で活躍する専門職である。動物の全てのライフステージ(健康な時から終末期まで)に関わり、動物達が健やかな一生を全うするように援助する事が出来る重要な職業。

身体の構成,解剖学
全ての動物の体はいくつもの細胞が集まって出来ている。
この細胞達は死ぬ時期を決められて生まれ、ルールに従い少しずつ新しく生まれ変わっている。癌細胞はその中のルールに従わず死なずに増殖していく特徴を持つ。
動物の健康状態と、この細胞達1つ1つが正常な働きをすることで保たれる。病気が現れた時は、急に細胞達が異常になったわけではなく、異常と正常の中間の状態もあったはずである。その中間の状態を適切な観察によって早期に発見して、早期治療に結びつけることも動物看護師が出来る仕事の一つである。
そのためには細胞の機能、動物の骨格や筋肉、神経について専門の知識を持っている必要がある。また保定や体勢を考える時に、動物の身体がどのように動く事が出来るのか、楽なのか考える時には同様に構造を考えると良い。

神経系の構造,機能

神経系は、感覚器官から届いた刺激を感じそれに対した指令を筋に出す役割を持つ中枢神経と、感覚器官からの刺激や中枢からの命令を伝える役割を持つ末梢神経にわけられる。中枢神経は脳と脊髄の事で、末梢神経は脳,脊髄から出ている神経の事。

・中枢神経 脳
脳は3層の髄膜に覆われており、大脳、小脳、脳幹にわけられる。脳脊髄液は、脊髄の中心管を通って脊髄内にも循環しているため、脊髄穿刺による髄液検査によって脳の情報を得る事が出来る。脳は動物個体によって大きさが異なるが、臓器の中でも非常に重要な臓器である。

・中枢神経 脊髄
神経線維の束で、脊柱管の中にある。脳と同様に3層構造に覆われている。
腰椎の上部までは脊髄があるが、腰椎の下部(約4分の3の位置)から尾までは馬尾と言われる細い神経の束となり髄腔内に浮かんでいる。
脳に情報を伝え、脳から出された指令を他から入ってきた情報と統合し、他に指令を出す。脳脊髄検査とは、腰のあたりから脳脊髄液を採取することで、脳の情報を知ることの出来る検査である。

・末梢神経 脳神経
脳から繋がっている神経で、12対ある。

・末梢神経 脊髄神経
脊髄の各文節から左右に1対ずつある。頭に近い神経は主に前肢に作用し、尾に近い神経は主に後肢に作用している。脊髄が損傷を受けると、その部分から下の脊髄には脳からの指令が届かなくなるため、対応している部分に麻痺が生じる。

・末梢神経 体性神経系
筋肉の調節にかかわる運動神経と、知覚情報に伝える感覚神経にわかれる。
通常は感覚神経によって感じた情報を末梢から中枢の脊髄から脳へ順に伝え、脳からの指令がまた逆方向に伝えられる事により身体が動く仕組みになっている。
だがそれでは間に合わないとからだが判断した時、脳に伝える前に反射神経の中の神経で判断し身体を動かす反射と呼ばれる行動で身体を守る。熱いものに触れて手を一瞬で遠ざける行動が代表的だが、正しい姿勢を保とうとする姿勢反射等もこの反射の一つである。

・末梢神経 自律神経系
自律神経は不随意(無意識で、本人の意思に関係なく行われる事)で、交感神経と副交感神経に分けられる。この2つは基本的な生命活動であり、中枢は脳幹にある。互いに拮抗する働きをしていて、それぞれの神経が同一の神経に繋がっているので両方とも亢進するという事はない。
・交感神経は、心拍数や呼吸数を増やすなど循環器系の働きを促進させ、身体を興奮状態にさせるなど、身体をアクティブにさせる働きがあり
・副交感神経はリラックスしている時に働き、血圧の低下や消化機能の活性化など交感神経と拮抗して、身体を穏やかにさせる働きがある。

骨格,筋の構造と機能
いくつもの骨が組み合わさって出来ている骨格は、しっかりとした身体の骨組みをつくるのと同時に、内臓などの軟らかい組織を守る働きもしている。骨は身体の中で歯のエナメル質の次に硬く、その硬さを作っているのがリン酸カルシウムである。骨の表面は繊維組織で出来た骨膜で覆われており、この骨膜は骨の直径を厚くし骨を守る、骨折時の治癒を行う働きをしている。
骨の数は犬で約320個、猫で約230個ある。身体の大きさに違いがあっても、骨の太さや長さに違いがあるだけで、数は変わらない。

・骨の役割は、身体を支える・器官を保護する・運動を支える・造血する・カルシウムの蓄え である。この全てが身体を動かす上で重要な役割である。骨も他の器官,細胞とと同じで、一度作られたものが一生使われる事はなく日々生まれ変わっている。形成、破壊、吸収を繰り返していて、若齢動物では特に代謝が速い。
このように、骨にも細胞が存在するため生まれ変わったり、骨折しても治癒する。骨の代謝には骨の主成分であるカルシウムの存在が必要不可欠である。

・この骨同士を繋げているのが関節である。骨の端同士の間の事を関節腔と言い、関節包で包まれている。関節包の中には滑膜に覆われた滑液と呼ばれる粘張性の強い液体があり、これで関節の動きを滑らかにしている。
関節炎の際にはここに滲出液がたまり、関節が腫れている。
関節の中には靭帯があり、それで可動する方向が決められている。

・身体を動かすための中心的な組織が筋肉で、心臓や内臓を動かしているのも筋肉。
筋肉には随意(自分の意思で動かす事が出来る)筋と不随意(自分の意志では動かす事の出来ない)筋がある。 随意筋は骨格を動かす骨格筋のみで、不随意筋は内臓や血管の壁をつくりそれらを動かす平滑筋と心臓を動かす心筋が含まれる。

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いかがでしたでしょうか。
骨格や神経系については基本的な知識なのですが、用語が複雑で読み辛かったと思います。
また後日の講座で整形外科の講座がありますので、そこでもう少し詳しく学べるのではないかなと思っております。

次回は概論②で腫瘍についてをまとめてお伝えさせていただきます。

看護師 坂本恵

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