看護師セミナー2 皮膚Ⅰ

2017年9月28日

こんにちは。看護師の坂本です。
前回の口腔学Ⅰいかがでしたでしょうか。
私達動物看護師が学校で学ぶ基本的な口腔内の構造についてがメインの講座でした。

今回は皮膚学Ⅰです。
こちらも2日間に分けての講座になるため、1回目の今回は基本的な構造、全体的な皮膚疾患の特徴の講習になりました。

以下が講座内容になります。
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文部科学省委託事業 動物看護士および動物系職業人向け 学び直し実証講座

皮膚Ⅰ

皮膚の構造としくみ

皮膚は爪や被毛などと共に外皮系に含まれ、動物の最も面積の大きな器官。体重の約20%を占める。
周囲の環境(気温や痛みなど)の情報を脳に伝える役割をしていると共に、外界から身体を守る働きを担っている。
皮膚の厚さは身体の部分によって異なり、前頸部から尾根部にかけての背線部(地面から遠い上の方)の皮膚が厚く、外耳や鼠頸部、肛門周囲などの皮膚は布のように薄い。
皮膚が厚い所の方が痛みに強く、注射や皮下点滴などを背中の方にするのはこのためとなる。

皮膚は表皮,真皮,皮下組織の3層に分けられ、表皮はまたそこから細胞の成長と共に4層に分けられている。表皮の最下層で新しい細胞が生まれ、最上層(角質層)で角質となり皮膚から剥がれ落ちる事を、ターンオーバーと言いこの期間は動物により異なる。犬や猫で20~25日(約3週間)である。犬猫の角質層の厚さは人の2~3分の1しかなく、皮膚疾患が多い原因はこれである。この角質層にはセラミドと呼ばれる細胞同士をくっつける保湿成分があり、これらが不足または壊れると皮膚が乾燥しカサカサになったり皮膚炎の原因になったりする。
最も負荷のかかるといわれる肉球も皮膚の構造をしているが、肉球にのみ淡明層と呼ばれる層があり特殊な構造をしている。
犬の爪は人の3倍の速さで伸びると言われ(全く歩かなかった場合1週間に1.9mm伸びる)、加齢とともに遅くなる傾向があるとは言われているが、定期的に管理する必要がある。
また猫は爪とぎをしても層状に剥がれていくので、先端が丸くなる事がなく、高齢猫は爪とぎでも層がはがれない場合があるので犬と同様に定期的に管理する必要がある。
人ではビタミンDの合成のため日光(紫外線)に当たるが、犬の場合は合成に必要な細胞が少なく、また被毛があり直接皮膚に日光が当たるわけではないので人ほど活発ではない。だが全く出来ないわけではないので適度な日光浴は必要である。

皮膚疾患の観察事項

皮膚疾患は消化器症状などとは違い、見た目に炎症がわかる疾患が多いがその中でもどのような病態なのかを詳しく判断するためにはしっかりとした問診や観察が必要である。ポイントと注意事項は、

品種
→疾患によってなりやすい犬種などもある(シーズー,柴犬のアトピー性皮膚炎やゴールデンの膿皮症など)

性別,避妊去勢の有無
→停留睾丸による脱毛や未去勢犬のアロぺシアX(原因不明の脱毛症。未去勢3kg以下のマズルの短めのポメラニアンに起こりやすいと言われる)などの可能性。

発症年齢
→食物や環境のアレルギーなどのアトピー性皮膚炎の初発症年齢は基本的に3歳以下が多く,高齢になるにつれホルモン性の脱毛や腫瘍性疾患の可能性が増す

食事(おやつ含)種類や環境変化
→変化による新しいアレルゲン関与の可能性

予防歴
→北海道では少ないがノミのアレルギー,お薬のアレルギーなど

治療歴,経過,治療歴,
→初症状なのか,いままでの治療で完治しているのかなど

同居動物
→同居動物や飼い主さんも一緒に痒みが出ていたりしないか,相性の問題があり心因性の脱毛の可能性がないか

症状種類(痒み有無,赤み有無など),痒みレベル
→痒みがなく赤みだけが広がったり,発疹など様々なパターンがある

固定時間帯の有無
→夜寝る前のみ痒いなど時間帯が限定されていることもある

元気や食欲,飲水量など
→加齢につれ,甲状腺や副腎の機能が低下または亢進してしまいホルモン性の脱毛を起こす事がある。

皮膚色
→赤い炎症のものや、炎症後皮膚のメラニン色素が集まり炎症を起こした部分の皮膚が黒くなっていることある

心配な事、他
→人や同居動物に感染するのかなど心配事は人によって様々であり、その心配事を少しでも取ってあげる事が動物看護師の重要な仕事の一つ。

このように一つの問診でも色々な可能性の割り出しが出来るので、動物看護師として疾患の可能性を考えながら問診し、飼い主さんの不安や動物達のストレスを減らしてあげる努力をしていくこと。

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いかがでしたでしょうか。

今回は前回の口腔学Ⅰと同様に、基本構造や皮膚の基本的な特徴の講習でした
次回の皮膚学では個別に疾患の特徴などが学べる予定です。看護師向けの学び直し講座になるので、治療法など具体的な事ではないかもしれませんが、また今後もまとめお伝えしていきます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

看護師 坂本恵

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