看護師セミナー13 消化器Ⅰ

2018年8月12日

 

こんにちは。看護師の坂本です。
今回は消化器について学んでまいりました。
消化器症状の嘔吐や下痢は消化器疾患ではなくてもおこるので、嘔吐下痢についてというよりは消化器の疾患についてを学びまとめました。最後に簡単な栄養学も同時に学びましたのでまとめてあります。

今回も二部構成でしたので、詳しい疾患のことについてはⅡで学びまとめる予定です。

以下内容
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消化器Ⅰ
消化器は口腔から肛門までの構造の事を言う。この全ての経路を消化管と呼び、一本の管として繋がっている。

消化器の構造
口→食道→胃→小腸(十二指腸→空腸→回腸)→大腸(盲腸→結腸→直腸)→肛門へと続いている。このうち、口から十二指腸までの胃カメラで診れる範囲を上部消化管といい、空腸から直腸までを下部消化管という。大腸カメラでは直腸から回腸までを診る事ができる。このため、空腸は上下どちらからも見辛い場所と言われている。
消化管内腔の大部分は、内側から内腔、粘膜、粘膜下織、筋層、漿膜の5層の構造からなる。この5層の構造はエコーで見る事が出来る。正常な場合、綺麗に直線の層でうつり、層のどこかに異常があると層が乱れたり見えなくなったりする。 ただし、食道、結腸、直腸は漿膜のかわりに外膜が覆っている。漿膜が無いと腫瘍の転移が起きやすく、また強度が保てないために縫合しても離開がおきやすく手術の難易度が高い場所。
腸管は自律神経の支配を受けるが、腸神経自体が消化管を支配する完全な反射回路を持っているため、脳や脊髄からの指令がなくても独立して基本的な機能を果たせる。 正常であれば食べてから30~2時間で胃からの物が無くなるように出来ている。 エコー中でも食物を食べていると10秒に1回は動き、食べていなくても30秒に1回は動き続ける。

消化管それぞれの構造

?食道
食道に消化機能はなく、口腔内で小さくなった食物を胃に運ぶ管。
犬では周囲の構造に関連して生理的に狭くなっている生理的狭窄部位が3つある。この3つの部位は食塊や異物等がつまりやすくなっている。
胸部前口:頸の付け根で胸腔に移行するため屈曲している
心基底部:第5~6胸椎付近で心臓の横に当たる
食道裂孔部:第10胸椎付近横隔膜を通過する
食道に異物がつまり手術になると、前記の通り開胸術になり呼吸や心臓など循環器の管理をしながら行うのと、縫合しても離開の可能性が高いので注意が必要。

?胃
食物を貯留し、胃酸中の消化酵素ペプシンによりたんぱく質の分解を行う。
胃の入口(食道との境界)を噴門といい胃底部に繋がる。胃の出口(十二指腸との境界)を幽門という。噴門から腹側にむかって、幽門につ続く胃の中央を胃体部という。 胃は大きく弧を描いており、長曲を大弯、反対側の短曲を小弯という。
胃粘膜は3部に分かれている。
?噴門腺部:粘液を分泌する。
胃腺部 :胃底、胃体にあり、胃小窩と呼ばれるくぼみから粘液や胃酸を分泌する。胃液に含まれる塩酸は強酸性のために食物に付着している細菌を殺菌し腐敗を防いでいる。胃液には胃壁保護のためのレンニンが含まれている。
幽門腺部:粘液を分泌する。G細胞からガストリンというホルモンが分泌され、胃酸の分泌促進、胃壁細胞増殖作用、インスリン分泌促進作用がある。胃から十二指腸へ物が流れていくと十二指腸が刺激され、十二指腸粘膜で合成されるホルモンにより分泌が抑制される
?、③の粘液により、胃酸で自分の胃が溶けないようになっている。
胃は漿膜が強く、手術で切開しても縫合でつきやすい。

?小腸
栄養素の消化吸収と大部分の水分の吸収を主な機能としている。
十二指腸、空腸、回腸からなるが基本的な構造に違いはない。内くうに輪状ヒダ、腸絨毛があり、小腸壁の内部には平滑筋と神経の層がある。胃から十二指腸に沿い膵臓が存在している。犬猫では空回腸の区別がつき辛い。

大腸
水分の再吸収と糞便形成が主な機能であるが、小腸で大半の水分は吸収されている。
盲腸、結腸、直腸からなる。犬猫は盲腸があまり発達していなく、結腸は犬猫では人とほぼ変わらないが動物種により形態の差が大きい。
結腸は上行結腸、横行結腸、下行結腸に分けられる。

?肛門
犬には肛門周囲腺と呼ばれる腺があるが、猫にはない。
肛門には2種類の筋肉があり、平滑筋で出来ている内肛門括約筋は便が到達する緩み、横紋筋で出来ている外肛門括約筋は随意的に緊張させることが出来、それで便失禁を防ぐ。この外肛門括約筋は、腫瘤などにより手術で半分切除しても便失禁を防ぐことが出来るが、それ以上の摘出で便失禁をおこしてしまう。

 

消化器系の機能
消化管は栄養摂取と代謝を制御している。
食物を口から吸収し、肛門から便として排出するまでに消化管は、内分泌、外分泌、吸収などを行う。関係各所の臓器ときわめて密な連携を取り合っている。なので、関わるどの臓器に障害が発生しても、食物摂取ができなかったり、栄養吸収不全になったりして削痩してしまったりすることがある。摂取した食物が消化管内を移送している途中では、様々な変化がおき高分子な化合物から低分子な化合物へと分解される。これを消化という。
消化酵素は多くが膵液や小腸粘膜細胞分泌液に含まれており、小腸で分泌される。
人は唾液中にも消化酵素が含まれるが、犬や猫はほとんど含まれていない。 だが食物を見ることで、過去の経験による条件反射や口に食物が入る物理的刺激により唾液が分泌され、潤滑剤としての役割を果たす。
空腹は低血糖や脳の興奮により摂食中枢が刺激されおこる。

 

消化される栄養素
?5大栄養素:炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル
これに水を足すと6大栄養素になる。
体のエネルギーとなるもの;炭水化物、たんぱく質、脂質
体の構成成分となるもの :たんぱく質、脂質、ミネラル
体の機能を調整するもの :たんぱく質、ビタミン、ミネラル

炭水化物
糖質:消化酵素で分解されエネルギーとなるもの.ブドウ糖(グルコース)は単糖類で吸収が一番早い。
食物繊維:消化酵素では分解できない。水溶性と不溶性がある。便の固さなどに作用。

たんぱく質
植物性、動物性がありアミノ酸が多数結合したもののことをたんぱく質と呼ぶ。
腸液などの働きによりアミノ酸にまで分解され、小腸粘膜から吸収されて血液で肝臓に運ばれる。
アミノ酸には体内で作成できないため食物により吸収しなければならない必須アミノ酸と体内で作成できる非必須アミノ酸がある。犬と猫ではこの必須アミノ酸の数が異なる

脂質
1gあたりのカロリーが9kcalと他の5大栄養素の中で1番高い。
胆汁酸により乳化され、膵臓で分泌される。小腸絨毛からリンパ管へ吸収される。

ビタミン
脂に溶け吸収される脂溶性ビタミン(A,D,E,K)と水に溶け吸収される水溶性ビタミン(B郡,C)がある。脂溶性ビタミンは脂質と同じ吸収経路を辿り、水溶性ビタミンはB12のみ回腸で吸収され、他は空腸で吸収される。ビタミンA欠乏症がスパニエル系で多いといわれている。貧血時にはビタミン6,12、葉酸を注射や点滴にいれると良い。

ミネラル
酸素、炭素、水素、窒素の4元素以外の元素で、
主要ミネラル、必要量の少ない微量ミネラル、あげてはいけない有害ミネラルがある。
大部分のミネラルは小腸で吸収され、銅は胃、マグネシウムは大腸でも吸収される。

 

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いかがでしたでしょうか。

消化器の事と同時に栄養学も学ぶと、より理解しやすかったです。
消化器や食事について理解できていると、看護の際にも色んな事を考えてあげられるなと思いました。

次回は疾患について消化器Ⅱを学んでまいります。

看護師 坂本恵

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