こんにちは。看護師の柴田です。
今回から「皮膚バリア機能の修復と健康に保つ方法」をテーマに、数回に分けてお伝えさせていただきます。まずは最も基本となる「スキンケアとは何か」という概念についてご説明いたします。
○スキンケアの概念
「スキンケア」と聞くと皆さんは何を思い浮かべられますか?
例えば、化粧水や乳液を使うことだったり、正しく洗顔をすることだったり、肌年齢に合ったものを使うなど様々なことが頭に思い浮かぶと思います。
近年における人の医療ではスキンケアは、皮膚疾患に対する治療効果が十分に認められる一つの方法として確立されるようになってきています。スキンケアを用いた皮膚治療に関する報告もたくさん出ています。
こうした流れを受け、獣医療においてもスキンケアの重要性が理解されるようになってきました。今では「正しいスキンケア」は、動物の皮膚病の治療と予防に不可欠なものとして、お薬による治療と合わせて行われるようになってきています。
では、正しいスキンケアとはどんなものなのか、少し詳しく書かせていただきます。
スキンケアの最大のポイントは、「皮膚の恒常性=継続的にノーマルな状態の維持」を目的とする事にあると言われています。
それぞれの皮膚疾患において、皮膚の恒常性を崩している原因が何かをよく観察し、原因毎の対応が大切となります。恒常性を崩す代表的要因には、内的要因(アトピー、脂漏、乾燥、ホルモン疾患など)と外的要因(アレルゲン、細菌、真菌、高温多湿、静電気など)があり、多くの症例ではこれらの要因が複合的に組み合わさって発症しています。そのため、スキンケアを正しく行うためには、以下の点を意識したケアが大切になります。
・皮膚の清浄化
・皮膚の水分保持機能の維持
・皮膚の水分保持機能の向上
この3点を達成するために中心となってくるものは主に「洗浄」と「保湿」です。
洗浄はスキンケアの基礎となってくるもので、皮膚に付いている不要な物だけを落とし皮膚の代謝や生理機能を維持させることであり、シャンプーやクレンジングなどの方法があります。保湿には、皮膚バリア機能の維持や向上に有効な成分が配合されている保湿剤を使います。
〇スキンケアの種類
ここまで皮膚の恒常性を保つための方法として洗浄や保湿のお話をさせていただきましたが、この二つ以外にも方法があります。それは大きく2つに分けられ「外からのスキンケア」と「内からのスキンケア」と呼ばれています。
外からのスキンケア
・洗浄
・保湿
・皮膚への刺激の保護
・賦活(マッサージやブラッシングなど)
内からのスキンケア
・食事(栄養素の管理)
・生活改善
・環境管理
・ストレスケア
「これらが本当にスキンケアとして成立するのか?」と疑問に思われるかもしれませんが、私たち人間も肌のコンディションが悪い時は食生活を見直したり、ストレスが溜まっていれば体を休めたりなど様々な方法でコンディションを整えようとすると思います。この考え方を動物のスキンケアに取り込み、洗浄や保湿などの外からのアプローチに加えて食事や生活改善などの内からのアプローチも重要になってきます。
〇今回のまとめ
皮膚は、様々な刺激の中、恒常性を維持するために日々頑張ってくれています。ただ、一度恒常性が崩れしまうと、なかなか自分で立て直す事ができずに、トラブル(皮膚疾患)が発生してしまいます。
当院のスキンケアでは、獣医師と看護師が協力して、トラブルが発生している要因を見極め、清浄化と本来の機能回復と向上を目指しています。皮膚が再び自分で健康を保てるようにサポートしてあげる事が大切と考えています。
次回は「外からのスキンケア」について詳しくご説明させていただきます。
看護師:柴田