犬の慢性下痢・嘔吐、「良くなった」をどう判断する?

CIBDAI・CCECAIという評価方法について

犬の慢性下痢の記事では、どのような順番で検査や治療を進めていくのかをご紹介しました。

慢性的なお腹の不調では、検査をして終わりではありません。

食事療法やお薬による治療を始めたあと、

「この子は良くなっているのか?」
「治療はどのくらい効果があったのか?」
「このまま今の治療を続けてよいのか?」

を確認していくことも、とても大切です。

そこで今回は、慢性腸症の治療経過を評価するときに使われる、CIBDAIとCCECAIについてご紹介します。

CIBDAI・CCECAIとは

少し難しい名前ですが、簡単にいうと、

「今のお腹の病気が、どのくらい生活に影響しているのか」を数字で表す方法です。

例えば、

・元気はある?
・食欲は?
・吐いていない?
・便の状態は?
・便の回数は?
・体重は減っていない?

といった項目を点数化します。

2026年のACVIM(米国獣医内科学会)のコンセンサスでは、慢性腸症の犬の臨床的な重症度を評価する方法として、CIBDAIまたはCCECAIを用いることが推奨されています。

CIBDAIとは?

CIBDAIは、

Canine Inflammatory Bowel Disease Activity Index

の略で、日本語では「犬炎症性腸疾患活動性指数」と呼ばれます。

主に、

0点1点2点3点
活動性元気やや元気がないかなり元気がないぐったりしている
食欲正常少し低いかなり低いほとんど食べない
嘔吐なし週1回くらい週2−3回週3回以上
便の硬さ正常やや軟便軟便水様便
便の回数正常1日2−3回
または粘血便
1日4−5回1日5回以上
体重減少なし5%未満5−10%10%超

を評価し、それぞれの点数を合計します。

つまり、単に「下痢があるか、ないか」だけを見るのではなく、

お腹の症状が、その子の全身状態にどのくらい影響しているのか

をまとめて評価するための指標です。

CCECAIとは?

CCECAIは、

Canine Chronic Enteropathy Clinical Activity Index

の略で、日本語では「犬慢性腸症臨床活動性指数」と呼ばれます。

CIBDAIの評価項目に以下の項目が加わり、慢性腸症の状態をより広く評価するための指標です。

0点1点2点3点
アルブミン(ALB)2.0以上1.5−1.991.2−1.491.2未満
腹水/むくみなし軽度中程度重度
かゆみなし時々ある定期的にあるよくある
夜も気になる

それぞれを点数化し、合計点から臨床的な重症度を評価します。

CCECAIの重症度の目安

0~3点:無症状~超軽度
4~5点:軽度
6~8点:中程度
9~11点:重度
12点以上:超重度

ただし、CCECAIの点数だけで病気の種類や治療方針が決まるわけではありません。

診察や検査結果、体重、体格、筋肉量、生活の様子などと合わせて、その子の状態を総合的に判断します。

大切なのは「何点だったか」だけではありません

CIBDAIやCCECAIを使う大きな目的の一つは、

治療を始める前と比べて、その子がどのくらい良くなったのかを確認することです。

例えば、

治療前
CCECAI:10点

治療後
CCECAI:3点

となった場合、

「3点だから軽症になった」というだけではありません。

治療前の10点から、3点まで大きく改善した

ということが分かります。

2026年のACVIMコンセンサスでは、治療前後のCIBDAI・CCECAIの変化を用いて、治療への反応を評価する方法が示されています。

治療前からのスコアの低下は以下の目安で評価されます

・75%を超える → 寛解
・25~75% → 部分反応
・25%未満 → 無反応

 

「便が良くなった」だけでは判断しません

慢性腸症では、便の状態だけを見るのではなく、

便 + 食欲 + 体重 + 元気 + 体格・筋肉量 + 生活の質

などを合わせて経過を見ることが大切です。

例えば、

「便は良くなったけれど、体重が減っている」

という場合には、単純に「治療がうまくいっている」とは言えないかもしれません。

反対に、

「便の回数が減った」
「食欲が戻った」
「体重を維持できている」
「元気に過ごせるようになった」

という変化が重なれば、治療によって良い方向に向かっていると判断する材料になります。

ACVIMのコンセンサスでも、治療中はCIBDAI・CCECAIだけでなく、体重、体格、筋肉量、便の状態、薬の副作用、生活の質などを継続的に評価することが推奨されています。

 

慢性腸症は「経過を見る」ことが大切です

慢性腸症は、一度の診察だけですべてが分かる病気ではありません。

症状を確認する

必要な検査をする

治療を始める

治療への反応を見る

必要に応じて治療を調整する

このように、時間をかけて状態を評価していくことが大切です。

特に全身状態が安定している犬では、ACVIMのコンセンサスでも食事療法を診断的な治療として行い、その後の臨床反応を評価することが推奨されています。

 

私たちは「点数」だけで、その子を判断しません

CIBDAIやCCECAIは、治療経過を客観的に評価するための便利な方法です。

でも、数字だけでは分からないこともたくさんあります。

「食事はちゃんと食べられている?」
「おやつはどうしている?」
「お薬は無理なく飲ませられている?」
「家では元気に過ごしている?」
「飼い主さんが困っていることはない?」

こうした日々の情報も、治療を考えるうえで大切です。

そのため当院では、獣医師だけでなく看護師も一緒に日々の変化を確認し、診察室での情報とご家庭での様子をつなげながら、治療経過を見ていくことを大切にしています。

「下痢が治った」だけではなく、
その子が元気に過ごせているかを一緒に見ていく

CIBDAIやCCECAIは、病気を数字だけで判断するためのものではありません。

治療を始める前と比べて、その子がどう変化したのか。

その変化を、飼い主さんと私たちが共有するための「ものさし」の一つです。

慢性的な下痢や嘔吐、食欲低下、体重減少などが続いている場合には、どうぞご相談ください。

「今どのくらいの状態なのか」だけでなく、
「これからどのくらい良くなっているのか」まで、一緒に見ていきます。

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